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2年生1学期
5月23日(月)晴れ 拡散する大山亜里沙その7
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中間テスト後半戦の月曜日。昨晩から初夏らしい暑さになって、この日のテスト中は窓からの風がないとやや過ごしづらい室温だった。
そんな中、テストが終わって今日も松永からの連絡が来ていないかとスマホを確認している時だった。
「うぶクンさ、松永の彼女って文芸部に入ったんだよね?」
大山さんは唐突にそう聞いてくる。
「うん。それがどうかしたの?」
「いや、実は先週うぶクンと松永一緒に帰っているところを見てたんだケド、もしかしてその時にいた女の子がそうなのかなって」
「うん。その子が彼女さんだよ」
「それで……今日も一緒に帰ったりする?」
大山さんはこちらを窺いながら言う。つまるところ大山さんは伊月さんに会ってみたいと言っていると僕は察した。松永と僕の知り合いであれば大山さんを会わせても不自然ではなさそうだ。
そう思った僕は再びスマホに目を向ける。
「ちょっと確認するよ。松永はいいと思うけど、彼女さんはわからないから」
「あっ、ちょっと待って。直接会うのは良くないかもしれないからうぶクンが合流するタイミングでちらって覗かせて貰ってもいい?」
「えっ? 別に会っても大丈夫だと思うけど?」
「うーん……まぁ、うぶクンが言うならそういうタイプなんだろうケド、一応ね」
大山さんは詳しいことは言ってくれないので僕はさっぱりだったけど、それでいいなら無理に会わせる必要もない。
今日も伊月さんが来ることもわかったことから先に下駄箱前に集まっているよう松永に連絡して、少し時間を置いてから大山さんと一緒に教室を出る。
「ゴメンね。なんか面倒くさいことさせちゃって」
「ううん。でも、どうして直接会おうとしないの? 今からでも言えば会ってくれるとは思うけど」
「アタシと松永って知り合いではあるケド、めちゃめちゃ近しい関係ではないし、彼女さんからしたら全然知らない人じゃない? そんな女子がいきなり会いたいって言うのは……色々ややこしいかなって」
「あー……」
「でもでも、気になる気持ちは抑えられないからこっそり野次馬しようって思ったワケ。それはそれで堂々してないから悪い気もするケド……こういうのってどっちが正解なんだろうね?」
「気になる気持ちを抑える方向性は?」
「えー!? うぶクンだって知り合いに恋人できたって言われたら一度は確認したくなるでしょ!? というか、松永の時はしなかったの!?」
「前にも言ったかもしれないけど、だいぶ経ってから事後報告で知ったから……」
「じゃあ、事後報告で知らされた時、どんなカンジの子とか聞かなかったの?」
「どうだったっけ……夏休みに会わせて貰ったのは覚えてる」
「じゃあ、うぶクンは将来的に仲人になる可能性が……?」
「それとこれとは話が違うような……あっ、あそこにいるよ」
気が付くと下駄箱に到着したので、大山さんとの話を一旦止めて、待ってくれている松永と伊月さんの方を僕は指す。
「ほー……あの子が伊月ちゃん。可愛い子じゃん。すぐに誰って例えられないケド、芸能人っぽい可愛さがある」
「僕もそう思った」
「でも、てっきり松永は美人系が好きなんだと思ってた。まぁ、外見だけでどうこうは言えないケド」
「伊月さん自身は凄く真面目な子だよ」
「真面目なうぶクンが真面目って言うくらいには?」
「僕がどうかはわからないけど、松永を叱れるタイプ」
「ほうほう。よくわかりました」
「……あんまり噂は広めないであげてね。松永は気にしなさそうだけど、伊月さんはわからないから」
「それはもちろん。というか、元々誰かに話そうと思ってないし。アタシがうぶクンという特権を使って顔を見られただけだから」
「僕を介して見るなら別に会っても良さそうだけどなぁ」
「まぁ、今度うぶクンが文芸部の後輩として紹介してよ。それならややこしいことにはならないだろうし」
そう言った大山さんは僕に軽く手を振ってその場から離脱した。
結局、5分ほど2人を待たせることになって松永からは「珍しいこともあるもんだ」と言われてしまった。
僕としても今日の行動が正解なのかわからないけど、大山さんなりに配慮する気持ちがあったから、それならいいかと思って話に乗ってしまったところはある。
今度松永か伊月さんに聞いて普通に顔合わせできるようにすることも少し考えておこうと思った。
そんな中、テストが終わって今日も松永からの連絡が来ていないかとスマホを確認している時だった。
「うぶクンさ、松永の彼女って文芸部に入ったんだよね?」
大山さんは唐突にそう聞いてくる。
「うん。それがどうかしたの?」
「いや、実は先週うぶクンと松永一緒に帰っているところを見てたんだケド、もしかしてその時にいた女の子がそうなのかなって」
「うん。その子が彼女さんだよ」
「それで……今日も一緒に帰ったりする?」
大山さんはこちらを窺いながら言う。つまるところ大山さんは伊月さんに会ってみたいと言っていると僕は察した。松永と僕の知り合いであれば大山さんを会わせても不自然ではなさそうだ。
そう思った僕は再びスマホに目を向ける。
「ちょっと確認するよ。松永はいいと思うけど、彼女さんはわからないから」
「あっ、ちょっと待って。直接会うのは良くないかもしれないからうぶクンが合流するタイミングでちらって覗かせて貰ってもいい?」
「えっ? 別に会っても大丈夫だと思うけど?」
「うーん……まぁ、うぶクンが言うならそういうタイプなんだろうケド、一応ね」
大山さんは詳しいことは言ってくれないので僕はさっぱりだったけど、それでいいなら無理に会わせる必要もない。
今日も伊月さんが来ることもわかったことから先に下駄箱前に集まっているよう松永に連絡して、少し時間を置いてから大山さんと一緒に教室を出る。
「ゴメンね。なんか面倒くさいことさせちゃって」
「ううん。でも、どうして直接会おうとしないの? 今からでも言えば会ってくれるとは思うけど」
「アタシと松永って知り合いではあるケド、めちゃめちゃ近しい関係ではないし、彼女さんからしたら全然知らない人じゃない? そんな女子がいきなり会いたいって言うのは……色々ややこしいかなって」
「あー……」
「でもでも、気になる気持ちは抑えられないからこっそり野次馬しようって思ったワケ。それはそれで堂々してないから悪い気もするケド……こういうのってどっちが正解なんだろうね?」
「気になる気持ちを抑える方向性は?」
「えー!? うぶクンだって知り合いに恋人できたって言われたら一度は確認したくなるでしょ!? というか、松永の時はしなかったの!?」
「前にも言ったかもしれないけど、だいぶ経ってから事後報告で知ったから……」
「じゃあ、事後報告で知らされた時、どんなカンジの子とか聞かなかったの?」
「どうだったっけ……夏休みに会わせて貰ったのは覚えてる」
「じゃあ、うぶクンは将来的に仲人になる可能性が……?」
「それとこれとは話が違うような……あっ、あそこにいるよ」
気が付くと下駄箱に到着したので、大山さんとの話を一旦止めて、待ってくれている松永と伊月さんの方を僕は指す。
「ほー……あの子が伊月ちゃん。可愛い子じゃん。すぐに誰って例えられないケド、芸能人っぽい可愛さがある」
「僕もそう思った」
「でも、てっきり松永は美人系が好きなんだと思ってた。まぁ、外見だけでどうこうは言えないケド」
「伊月さん自身は凄く真面目な子だよ」
「真面目なうぶクンが真面目って言うくらいには?」
「僕がどうかはわからないけど、松永を叱れるタイプ」
「ほうほう。よくわかりました」
「……あんまり噂は広めないであげてね。松永は気にしなさそうだけど、伊月さんはわからないから」
「それはもちろん。というか、元々誰かに話そうと思ってないし。アタシがうぶクンという特権を使って顔を見られただけだから」
「僕を介して見るなら別に会っても良さそうだけどなぁ」
「まぁ、今度うぶクンが文芸部の後輩として紹介してよ。それならややこしいことにはならないだろうし」
そう言った大山さんは僕に軽く手を振ってその場から離脱した。
結局、5分ほど2人を待たせることになって松永からは「珍しいこともあるもんだ」と言われてしまった。
僕としても今日の行動が正解なのかわからないけど、大山さんなりに配慮する気持ちがあったから、それならいいかと思って話に乗ってしまったところはある。
今度松永か伊月さんに聞いて普通に顔合わせできるようにすることも少し考えておこうと思った。
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