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2年生1学期
5月20日(金)曇り 伊月茉奈との日常その3
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中間テスト2日目の金曜日。問題のコミュ英語Ⅱは抜けているところもあったけど、赤点になるような感じではないと思われる。
とりあえずここ2日間のことは置いといて来週のテストに切り替えていこう。
そんな日のテスト終わり。今日も松永が連絡を寄越してきたので、一緒に下校することになった。
「あっ、りょーちゃん。今日は茉奈ちゃんも一緒に帰るから」
「えっ」
そう言われたとて僕は断れないので靴を履いてから下駄箱前で伊月さんが来るのを待つ。
「……僕、邪魔じゃない?」
「邪魔なわけないじゃん。りょーちゃんも文芸部の先輩なわけだし」
「いや、それはそうなんだけど、こういうのって二人きりで帰りたいものなんじゃないの?」
「まぁ、そう思う時もあるけど、今日は違うから大丈夫」
それは松永の意見なのではないかと思ってしまったけど、伊月さんも邪魔だと言うタイプではないので、これは僕が勝手に肩身が狭いと思っているだけかもしれない。
「お疲れ様です。待たせてすみません、産賀さん」
それから数分経った頃。伊月さんがやって来ると真っ先に僕の方へ挨拶するので、僕は「大丈夫」と言っておく。
「茉奈ちゃん、俺には~?」
「はいはい。待たせてごめんなさい」
「扱いが違うなー まぁ、帰り始めますかぁ」
そのまま駐輪場に行き、僕らは自転車を手で押しながら帰り始める。それ自体はいつもの光景だけど、今日の僕は松永と伊月さんが並ぶ後ろに付いて行く形になった。
傍から見ればやっぱり僕が邪魔しているように見える気がするけど、話の内容は僕も巻き込んだものになっていく。
「そういうわけだから、こう見えてもテストはそれなりにできてるわけ」
「本当に?」
「りょーちゃんなら証明してくれるよ。ねぇ、りょーちゃん?」
「あ、ああ、うん。今までもそんなにひどい点数は取ったことはないよ」
「そうなんですか……だったら成績表とかテスト結果とか見せてくれてもいいのに」
「いや、なんでそんなに見たがるの。うちの親よりも気にしてくるじゃん」
「特別見たいわけじゃないけど、隠されると気になっちゃうから……産賀さんもそういうことありますよね?」
「う、うん。別に見せても大丈夫なんじゃないかな」
「あー!? また茉奈ちゃん寄りになってる! 今日は俺の疑惑を晴らして貰う側なのに~」
松永は後ろの僕を少し見ながらそう言うけど、もちろんそんな話は聞いていない。その様子を見た伊月さんは呆れた表情になった。
「すみません、産賀さん。わたしと浩太くんのことにいつも巻き込んで」
「全然。僕も聞いてて面白いから」
「えっ? りょーちゃん的にはどういうところが面白いの?」
「どうって言われると……わりと二人ともオープンな感じだから彼氏彼女ってこういう感じなんだなぁってところとか」
僕は何の気なしにそう言うと、伊月さんの顔が一瞬にして赤くなった。
「ほ、本当にすみません! わたし、いつも気付かずに産賀さんに色々言ってしまって……」
「いや、別に悪いと思ってるわけじゃないから。いい関係だと思うよ」
「おっ、りょーちゃんのお墨付きを貰ったらなら安心だね」
「もう、浩太くんったら……でも、いい関係に見えているなら良かったです」
そう言いながら尚も照れる伊月さんとそれを見て笑う松永。それを見てもいい関係だと思うけど……三度目の僕が邪魔ではないかと気持ちが湧いてきた。
そうこうしているうちに伊月さんだけ別方向になる場所へ到着した。
「りょーちゃん。俺はこのまま茉奈ちゃんを送って行くから」
「わかった。また今度」
「産賀さん、今日はありがとうございました。わたしのわがままで一緒に帰って貰って……」
「そんなお礼を言われるほど……えっ!? 伊月さんが言ってたの!?」
「はい。浩太くんがテスト期間中は産賀さんといつも帰っていたと聞いたので、わたしが邪魔してると思ったんです。でも、浩太くんが三人一緒に帰ればいいと言ったので……」
「邪魔だなんてそんな。僕は一人でも全然構わないぞ」
僕は松永に向けてそう言う。それを松永は流しながら喋りだす。
「まぁまぁ。おかげでいつもと違うカンジで楽しく帰れたし、りょーちゃんにイチャイチャを認めて貰えたから良しとしよう」
「い、いちゃいちゃって!? そ、そんなことないですよね?」
「うーん……いい関係だと思うよ」
僕は珍しくからかい気味にそう言うと、伊月さんは恥ずかしそうにしていた。
てっきり松永から提案したのかと思っていたから驚いたし、伊月さんが僕とは別の意味で邪魔していると思っていたことも予想外のことだった。
二人の関係性から見て、僕は伊月さんの方が優先順位が高いと思っていたけれど、伊月さんや松永の中だとそういった考えはないのかもしれない。
そうであるならば今後は三人で帰るようなことがあれば、自分が邪魔だなんて思わない方が良いのだろう。
それはそれとして……一緒に帰る際はもう少しイチャイチャを抑えてくれる方が空気的に助かるかもしれない。
とりあえずここ2日間のことは置いといて来週のテストに切り替えていこう。
そんな日のテスト終わり。今日も松永が連絡を寄越してきたので、一緒に下校することになった。
「あっ、りょーちゃん。今日は茉奈ちゃんも一緒に帰るから」
「えっ」
そう言われたとて僕は断れないので靴を履いてから下駄箱前で伊月さんが来るのを待つ。
「……僕、邪魔じゃない?」
「邪魔なわけないじゃん。りょーちゃんも文芸部の先輩なわけだし」
「いや、それはそうなんだけど、こういうのって二人きりで帰りたいものなんじゃないの?」
「まぁ、そう思う時もあるけど、今日は違うから大丈夫」
それは松永の意見なのではないかと思ってしまったけど、伊月さんも邪魔だと言うタイプではないので、これは僕が勝手に肩身が狭いと思っているだけかもしれない。
「お疲れ様です。待たせてすみません、産賀さん」
それから数分経った頃。伊月さんがやって来ると真っ先に僕の方へ挨拶するので、僕は「大丈夫」と言っておく。
「茉奈ちゃん、俺には~?」
「はいはい。待たせてごめんなさい」
「扱いが違うなー まぁ、帰り始めますかぁ」
そのまま駐輪場に行き、僕らは自転車を手で押しながら帰り始める。それ自体はいつもの光景だけど、今日の僕は松永と伊月さんが並ぶ後ろに付いて行く形になった。
傍から見ればやっぱり僕が邪魔しているように見える気がするけど、話の内容は僕も巻き込んだものになっていく。
「そういうわけだから、こう見えてもテストはそれなりにできてるわけ」
「本当に?」
「りょーちゃんなら証明してくれるよ。ねぇ、りょーちゃん?」
「あ、ああ、うん。今までもそんなにひどい点数は取ったことはないよ」
「そうなんですか……だったら成績表とかテスト結果とか見せてくれてもいいのに」
「いや、なんでそんなに見たがるの。うちの親よりも気にしてくるじゃん」
「特別見たいわけじゃないけど、隠されると気になっちゃうから……産賀さんもそういうことありますよね?」
「う、うん。別に見せても大丈夫なんじゃないかな」
「あー!? また茉奈ちゃん寄りになってる! 今日は俺の疑惑を晴らして貰う側なのに~」
松永は後ろの僕を少し見ながらそう言うけど、もちろんそんな話は聞いていない。その様子を見た伊月さんは呆れた表情になった。
「すみません、産賀さん。わたしと浩太くんのことにいつも巻き込んで」
「全然。僕も聞いてて面白いから」
「えっ? りょーちゃん的にはどういうところが面白いの?」
「どうって言われると……わりと二人ともオープンな感じだから彼氏彼女ってこういう感じなんだなぁってところとか」
僕は何の気なしにそう言うと、伊月さんの顔が一瞬にして赤くなった。
「ほ、本当にすみません! わたし、いつも気付かずに産賀さんに色々言ってしまって……」
「いや、別に悪いと思ってるわけじゃないから。いい関係だと思うよ」
「おっ、りょーちゃんのお墨付きを貰ったらなら安心だね」
「もう、浩太くんったら……でも、いい関係に見えているなら良かったです」
そう言いながら尚も照れる伊月さんとそれを見て笑う松永。それを見てもいい関係だと思うけど……三度目の僕が邪魔ではないかと気持ちが湧いてきた。
そうこうしているうちに伊月さんだけ別方向になる場所へ到着した。
「りょーちゃん。俺はこのまま茉奈ちゃんを送って行くから」
「わかった。また今度」
「産賀さん、今日はありがとうございました。わたしのわがままで一緒に帰って貰って……」
「そんなお礼を言われるほど……えっ!? 伊月さんが言ってたの!?」
「はい。浩太くんがテスト期間中は産賀さんといつも帰っていたと聞いたので、わたしが邪魔してると思ったんです。でも、浩太くんが三人一緒に帰ればいいと言ったので……」
「邪魔だなんてそんな。僕は一人でも全然構わないぞ」
僕は松永に向けてそう言う。それを松永は流しながら喋りだす。
「まぁまぁ。おかげでいつもと違うカンジで楽しく帰れたし、りょーちゃんにイチャイチャを認めて貰えたから良しとしよう」
「い、いちゃいちゃって!? そ、そんなことないですよね?」
「うーん……いい関係だと思うよ」
僕は珍しくからかい気味にそう言うと、伊月さんは恥ずかしそうにしていた。
てっきり松永から提案したのかと思っていたから驚いたし、伊月さんが僕とは別の意味で邪魔していると思っていたことも予想外のことだった。
二人の関係性から見て、僕は伊月さんの方が優先順位が高いと思っていたけれど、伊月さんや松永の中だとそういった考えはないのかもしれない。
そうであるならば今後は三人で帰るようなことがあれば、自分が邪魔だなんて思わない方が良いのだろう。
それはそれとして……一緒に帰る際はもう少しイチャイチャを抑えてくれる方が空気的に助かるかもしれない。
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