上 下
409 / 942
2年生1学期

5月17日(火)曇り 後輩との日常・桐山宗太郎の場合その2

しおりを挟む
 過ごしやすい気温の火曜日。早めに範囲まで終わった教科は復習の時間にしてくれるなど、テスト前らしい授業内容もあった。

 そして、テストの週に入っているということで、文芸部は来週の金曜日まで休みになっていた。
 一応、部室を自習室として使っていいと新入部員に言っておいたけど、今のところ使いたい人はいないようだ。

 そんな日の放課後。今日は一人で帰宅しようと下駄箱まで来ると、聞き覚えのある声が近くから聞こえてきた。

「結局、宗太郎はどうするの? この後のファミレス」

「俺は遠慮しとく。人いるとこだと集中できないだろうし」

「そーかぁ。ところでさ、昨日見た動画なんだけど――」

 そちらへ眼をやると、桐山くんと恐らくそのお友達がたむろしていた。その中で桐山くんは集まりを断っていたようだけど、そのまま会話が続けられていた。
 すると、桐山くんも僕のことに気付いたようで、お友達に断りを入れてからこちらへ近付いてくる。

「お疲れ様っす、産賀先輩」

「お疲れ様。なんかごめんね、わざわざ声かけさせに来たみたいで」

「いえいえ。ちょうど抜けるタイミング窺ってたところだったんで良かったっすよ」

「他の子はこれから勉強会する感じ?」

「あっ、聞こえてたんっすね。そうみたいっす。でも、食べ物の匂いとかするとたぶん集中できないと思ったんで」

「それはあるかもね。桐山くんはいつもは自宅で勉強してるの?」

「そうっすけど……逆にどこで勉強するんですか? 産賀先輩も帰ってるってことは部室使ってないみたいですし」

「自宅以外だと図書館は時々使うよ。学校の図書室も友達と行く時があるかな」

「あー、定番っすよね。俺は近場に図書館ないからあんまりテスト勉強には行きませんけど……」

「それなら図書室を使ってみてもいいと思う。うちの図書室はテスト期間中もそんなに人多くないし」

 静かで集中できるのになぜ利用者が少ないか疑問だったけど、先ほどの桐山くんのお友達のように別で集まっていることが理由かもしれない。そのおかげで穴場として利用できるのはありがたいけど。

「なるほど、参考になります。ただ、俺の友達は逆に図書室はダメって言うかもしれないっすね……」

「だったら、文芸部の人を誘ってみてもいいんじゃ……あっ、ごめん。さすがに女子は誘いづらいよね」

「……それっす!」

「えっ?」

「文芸部内で勉強会すれば姫宮さんと合法的に同じ時間を過ごせるじゃないっすかぁ!」

「ご、合法的……」

「あっ、もしかして部室を使ってもいいってそういうことだったんすか!? それなら早く言ってくださいよ~」

「いや、そういうわけじゃ……」

「そうと決まれば明日辺りに計画してみますわ! 産賀先輩も来てくれますよね?」

「あ……ああ、うん。テスト勉強に使うならもちろん」

「よーし。まずはどう誘うのがいいか……あっ、産賀先輩に前振りして貰ってもいいですか?」

 その後、少しだけ桐山くんの作戦会議に付き合わされてから帰宅することになった。

 なんと言うか、友達と話している時の桐山くんは真面目そうな印象を受けたのだけど、今のところ姫宮さんが絡んでしまうと、少し暴走気味になってしまっている。
 決して悪い子ではないから僕も嫌な気持ちにはならないけど、今後は言葉選びに気を付けた方がいいかもしれない。

 ちなみに部室での勉強会は姫宮さん含む他の新入部員3人が行かないと言ったので開かれないことになったとさ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

通り道のお仕置き

おしり丸
青春
お尻真っ赤

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

坊主女子:友情短編集

S.H.L
青春
短編集です

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

処理中です...