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2年生1学期
5月5日(木)晴れ ばあちゃんの慧眼
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GW7日目のこどもの日。この日は父方の祖母がうちへ立ち寄ってくれた。ばあちゃんはこのGW厨にお友達と旅行していた(GWの方が割引料金にらしい)ので、いつも通りお土産を持って来てくれるとのことだ。
「これみんな美味しいって言ってたやつね。それは個人的に良さそうと思ったやつで……ほら、正敏は早く持ち運んで」
実際に到着するや否や説明しながら父さんにお土産を渡していく。それが一段落すると、ようやく僕や明莉と話す時間になる。
「よいしょっと……良助と明莉も久しぶり。元気そうで何よりだよ」
「うん。ばあちゃん、いつもお土産ありがとうね」
「いいのいいの。半分くらいは自分で食べたり使ったりするつもりで買い過ぎちゃったやつだから。それじゃあ、恒例のお小遣いを……おや、明莉?」
「……えっ? どうしたのおばあちゃん?」
「いや、何でもないよ。こっちが良助、こっちは明莉」
ばあちゃんから渡された袋を僕はありがたく頂戴する。未だに貰ってしまうのはちょっと申し訳なさもあるけど、アルバイトができない僕にとってはとても助かる支給だ。
「ありがとう、おばあちゃん。ゆっくりしていってね」
一方の明莉はいつも通りばあちゃんと同じテンションで接する……かと思いきや、今日はなぜか大人しい。
「……良助。明莉になんかあったのかい?」
その違和感をばあちゃんも覚えたようで、僕を玄関で引き留めて聞いてくる。直近の出来事で思い当たる節はあるけど、ばあちゃんを心配させるわけにはいかないから僕は適当に誤魔化す。
「たぶん昨日夜更かしでもしたんだと思う。僕らは明日だけ学校だし」
「ああ、なるほど。そういえば普通に休むと、中途半端な連休みたいだね。どうせなら10連休にすれば良かったのに」
「まぁ、学校も授業を規定数受けさせなきゃいけないから」
「ばあちゃんが高校の頃なんて……今よりは休み少なかったか」
「高校の頃ってなると……」
「こら、良助。ばあちゃんだからいいけど、女性の年齢を探るようなことは言うもんじゃないよ」
「ご、ごめん……」
「ちなみに高校の頃のばあちゃんはそれはもう眉目秀麗で、文武両道……ではなかったけど、かなりブイブイいわせていたよ? 一番自慢できるのは……」
そこから暫くの間、ばあちゃんの高校時代の武勇伝を聞かされた。同じ血筋ではあるけれど、ばあちゃんの学生時代は僕と全く異なるタイプだったようで、それ自体は面白い話なんだけど、問題なのはこの話を聞いた記憶が少なくとも2回以上あることだった。
そんなばあちゃんの鉄板エピソードを居間で聞いているところに、再び明莉がやって来る。
「おばあちゃん、お茶どうぞ」
「ありがとう。明莉ちょっといいかい?」
「なに?」
「ふーむ……うん。明莉もどんどんべっぴんさんになってきたね」
「そ、そう? 京都のおばあちゃんもいつも言ってくれるけど……」
「なんだい。自信もっていいんだよ。これから化粧覚えたり何なりしたらもっとべっぴんになるんだから」
そう言われた明莉は照れながら頬をかく。その間もテンションがいつも通りになることはなかったけど、ばあちゃんと普通に話せているところは安心した。
「今度はお盆辺りに顔見せに来るよ。またお土産楽しみにしといて」
その後、ばあちゃんは晩ご飯を食べてから自宅へ帰って行った。珍しく僕や明莉と遊ばずにゆっくり話して過ごしたのは、明莉について何か察してくれたのかもしれない。
会話を全て聞いていたわけじゃないからわからないけど、ばあちゃんとの話したことで明莉が少しでもすっきりできていればいいなと勝手に思った。
「これみんな美味しいって言ってたやつね。それは個人的に良さそうと思ったやつで……ほら、正敏は早く持ち運んで」
実際に到着するや否や説明しながら父さんにお土産を渡していく。それが一段落すると、ようやく僕や明莉と話す時間になる。
「よいしょっと……良助と明莉も久しぶり。元気そうで何よりだよ」
「うん。ばあちゃん、いつもお土産ありがとうね」
「いいのいいの。半分くらいは自分で食べたり使ったりするつもりで買い過ぎちゃったやつだから。それじゃあ、恒例のお小遣いを……おや、明莉?」
「……えっ? どうしたのおばあちゃん?」
「いや、何でもないよ。こっちが良助、こっちは明莉」
ばあちゃんから渡された袋を僕はありがたく頂戴する。未だに貰ってしまうのはちょっと申し訳なさもあるけど、アルバイトができない僕にとってはとても助かる支給だ。
「ありがとう、おばあちゃん。ゆっくりしていってね」
一方の明莉はいつも通りばあちゃんと同じテンションで接する……かと思いきや、今日はなぜか大人しい。
「……良助。明莉になんかあったのかい?」
その違和感をばあちゃんも覚えたようで、僕を玄関で引き留めて聞いてくる。直近の出来事で思い当たる節はあるけど、ばあちゃんを心配させるわけにはいかないから僕は適当に誤魔化す。
「たぶん昨日夜更かしでもしたんだと思う。僕らは明日だけ学校だし」
「ああ、なるほど。そういえば普通に休むと、中途半端な連休みたいだね。どうせなら10連休にすれば良かったのに」
「まぁ、学校も授業を規定数受けさせなきゃいけないから」
「ばあちゃんが高校の頃なんて……今よりは休み少なかったか」
「高校の頃ってなると……」
「こら、良助。ばあちゃんだからいいけど、女性の年齢を探るようなことは言うもんじゃないよ」
「ご、ごめん……」
「ちなみに高校の頃のばあちゃんはそれはもう眉目秀麗で、文武両道……ではなかったけど、かなりブイブイいわせていたよ? 一番自慢できるのは……」
そこから暫くの間、ばあちゃんの高校時代の武勇伝を聞かされた。同じ血筋ではあるけれど、ばあちゃんの学生時代は僕と全く異なるタイプだったようで、それ自体は面白い話なんだけど、問題なのはこの話を聞いた記憶が少なくとも2回以上あることだった。
そんなばあちゃんの鉄板エピソードを居間で聞いているところに、再び明莉がやって来る。
「おばあちゃん、お茶どうぞ」
「ありがとう。明莉ちょっといいかい?」
「なに?」
「ふーむ……うん。明莉もどんどんべっぴんさんになってきたね」
「そ、そう? 京都のおばあちゃんもいつも言ってくれるけど……」
「なんだい。自信もっていいんだよ。これから化粧覚えたり何なりしたらもっとべっぴんになるんだから」
そう言われた明莉は照れながら頬をかく。その間もテンションがいつも通りになることはなかったけど、ばあちゃんと普通に話せているところは安心した。
「今度はお盆辺りに顔見せに来るよ。またお土産楽しみにしといて」
その後、ばあちゃんは晩ご飯を食べてから自宅へ帰って行った。珍しく僕や明莉と遊ばずにゆっくり話して過ごしたのは、明莉について何か察してくれたのかもしれない。
会話を全て聞いていたわけじゃないからわからないけど、ばあちゃんとの話したことで明莉が少しでもすっきりできていればいいなと勝手に思った。
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