産賀良助の普変なる日常

2年生1学期

4月25日（月）晴れ時々曇り 野島実香との日常

　GW直前の月曜日。先週、野島さんが僕の情報を清水先輩へ流していることが判明した。2年生で同じクラスになってから一言二言会話は交わしたけれど、そのことは全く知らないし、あらぬ情報を流されている可能性もある。

　そこで僕はこの日の休み時間に隙を見て野島さんを問い詰めることにした。

「おお、産賀くんから話しかけてくれるとは珍しい。いったい何の……なぜか冷ややかな目線を感じる。まさか春休みのカラオケの兼をまだ根に持って！？」

「それはもう大丈夫。それより清水先輩から聞いたんだけど、茶道部で僕のこと話してるの？」

「あっ、聞いたんだ。ということは、直近でも清水先輩と会っていると」

「そうだけど……それで何を話しているのか聞きたくて」

「何と言われても産賀くんが目に付いた時になんとなく話してるだけだからなぁ」

「その結果が女の子に振り回されてる……」

「うん。亜里沙ちゃんとかはよく見るし、最近は花園さんにも振り回されてるって聞いてる」

「ど、どこから聞いてるの？」

「それはまぁ覚えてないけど……ここだけの話、女子間では色々回ってるのよ」

　悪い顔でニヤつきながら野島さんはそう言う。その瞬間、僕はなぜか背筋が寒くなる。

「でも、清水先輩には悪いこと伝えてるわけじゃないから安心して」

「こういう話の時、みんなそう言うなぁ……」

「うん？　産賀くん的には悪いことに思い当たる節があるの？」

「な、ない……つもりです」

「ふふっ。私はないと思ってる。ちなみに清水先輩に伝えて欲しくないことがあれば今のうちに言ってくれたら黙っとくよ？」

「……特にないです」

　僕は一瞬考えてからそう言った。いつの間にか野島さんの方に優位を取られて気がするけど、悪い情報が伝わっていないならひとまず安心できる。

「じゃあ、今度からは茶道部にいる時の清水先輩の様子を提供しようか？」

「えっ」

「おっ、ちょっと食い付いた？」

「い、いや、別にそんなことは……」

「そうだよねぇ。清水先輩から直接聞いてるだろうし」

「……部活のことはあんまり聞いてない」

「ほう。聞きたい？　気になる？」

「気に……ならないよ。うん」

「ふーん……産賀くんさ。ちょっと反応変わったね」

「な、何の反応？」

「内緒っ！」

　野島さんは楽しそうに笑だけなのでもう一度意味を聞こうとしたけど、そこでチャイムが鳴ってしまった。

　結局、あまり詳しい話は聞けなかったけど、悪い話が清水先輩に伝わっていないなら良しとするしかない。
　それにしても、女子間で色々回っているというのは……日頃の行いには気を付けようと思った。