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2年生1学期
4月19日(火)曇り時々晴れ 伊月茉奈との日常
しおりを挟む 少しどんよりした天気が続く火曜日。先週から引き続き文芸部は見学を受け付けているけど、月曜の来訪者はいなかった。それに金曜に来てくれたはずの三人も入部したという知らせは聞いていない。
そろそろ焦りが見え始める(主に僕と岸本さん)中、部室の扉がノックされる。
「失礼します。文芸部の見学に来たんですけど……」
そして、入って来た女の子を見て僕は驚いた。
「どうぞどうぞ~ あっ、3年生のソフィアでーす!」
「1年の伊月茉奈です。よろしくお願いします。あっ……!」
「えっ? 産賀くんが……どうしたの?」
ソフィア先輩は僕と伊月さんを交互に見ながら言う。僕が何と説明しようか迷っていると、先に伊月さんが喋りだす。
「同じ中学の先輩だったんです」
「えー!? そうなんだ~!」
「はい。あの……今日来てるのはわたしだけでしょうか? 一人だけ説明を受けるのが駄目なようでしたら……」
「ううん。全然大丈夫だよ! あと5分くらい待って来なかったら説明始めるから」
「ありがとうございます」
伊月さんは丁寧にお辞儀した後、軽く僕の方にも会釈しながら席についた。突然のことで焦っている僕よりもよっぽどしっかりしている。
それから追加の見学者が来ることはなく、岸本さんから文芸部の説明が始まった。
「……説明は以上になります。ここからは質問を受け付けます」
「えっと……本は読まないわけじゃないんですけど、それほどたくさん読むわけじゃなくて、自分で作品を作ったこともないんですが、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫です。今入部している部員も創作したことがない人が多いですし、文芸部に入ったからといって読書は強制されるわけではありません」
「そうなんですね。ありがとうございます。それと……」
説明が終わると、伊月さんは丁寧に質問をしていく。てっきり松永から見学者が来ていない話を聞いて、知り合いのよしみで様子を見に来てくれたのかと思っていたけど、本当に入部するつもりなのだろうか。
「……産賀さん、ちょっと話してもいいですか?」
そんなことを考えていると、説明を聞き終わった伊月さんが話しかけてきた。まだ部員ではないので廊下に出ると、伊月さんは小さく息を吐く。
「はぁー 緊張したぁ」
「えっ? 緊張してたんだ?」
「さすがに一人だと思ってなかったので。でも、他の先輩方も優しくて良かったです」
「もしかして……文芸部に入部してくれるの?」
「はい。そのつもりで見学に来たんですけど……?」
伊月さんは少し困惑気味にそう言う。よく考えれば見学に来た人に対して聞く質問ではない。
「い、いや、松永と一緒に見た運動会の時のイメージで、伊月さんは何となく運動部系だと思っていたから……」
「そうだったんですね。わたし、運動は嫌いじゃないですけど、部活でやるほど得意ってわけじゃないので」
「あー だから、テニス部も……」
「それはちょっと違う理由なんです。確かに一緒の高校なのは嬉しいですけど、部活まで一緒はどうかなぁと思ってて。浩太くん的には入って欲しそうでしたけど」
「なるほどね。でも、その方がいいと思うよ」
僕は心の中で松永に悪いと思いながらそう言う。
「産賀さんにそう言って貰えると助かります。浩太くんにも釘を刺しやすくなるので」
「ははは。あっ、そういえば先週1年生の女子二人が見学に来てくれて、入部してくれそうな感じだったから、もし伊月さんが入部しても一人にはならないと思うよ」
「そうなんですか。今日一人だったのでちょっと不安でしたけど、誰かいてくれるなら嬉しいです」
「うん。僕の時は今の部長と二人だけだったから、伊月さんたちが入部してくれるなら本当にありがたいな……って、強制してるわけじゃないからね? 他の部活に興味があるなら全然変えても大丈夫だから」
「ありがとうございます。そうですね……一緒に見学しようって友達に誘われてるところもあるんですけど、今のところは文芸部にするつもりです。あっ、すみません。長く喋っちゃって。今日はこれで失礼します」
伊月さんはまた軽く会釈をしてそのまま帰って行った。
そんなこんなで伊月さんが文芸部に入部してくれる可能性が出てきた。僕としては意外だったけど、伊月さんがいい子なのはよくわかっているし、来てくれる分には嬉しいことだ。
ただ、1つだけ問題があるとしたら……松永に何か言われるかもしれない。
そろそろ焦りが見え始める(主に僕と岸本さん)中、部室の扉がノックされる。
「失礼します。文芸部の見学に来たんですけど……」
そして、入って来た女の子を見て僕は驚いた。
「どうぞどうぞ~ あっ、3年生のソフィアでーす!」
「1年の伊月茉奈です。よろしくお願いします。あっ……!」
「えっ? 産賀くんが……どうしたの?」
ソフィア先輩は僕と伊月さんを交互に見ながら言う。僕が何と説明しようか迷っていると、先に伊月さんが喋りだす。
「同じ中学の先輩だったんです」
「えー!? そうなんだ~!」
「はい。あの……今日来てるのはわたしだけでしょうか? 一人だけ説明を受けるのが駄目なようでしたら……」
「ううん。全然大丈夫だよ! あと5分くらい待って来なかったら説明始めるから」
「ありがとうございます」
伊月さんは丁寧にお辞儀した後、軽く僕の方にも会釈しながら席についた。突然のことで焦っている僕よりもよっぽどしっかりしている。
それから追加の見学者が来ることはなく、岸本さんから文芸部の説明が始まった。
「……説明は以上になります。ここからは質問を受け付けます」
「えっと……本は読まないわけじゃないんですけど、それほどたくさん読むわけじゃなくて、自分で作品を作ったこともないんですが、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫です。今入部している部員も創作したことがない人が多いですし、文芸部に入ったからといって読書は強制されるわけではありません」
「そうなんですね。ありがとうございます。それと……」
説明が終わると、伊月さんは丁寧に質問をしていく。てっきり松永から見学者が来ていない話を聞いて、知り合いのよしみで様子を見に来てくれたのかと思っていたけど、本当に入部するつもりなのだろうか。
「……産賀さん、ちょっと話してもいいですか?」
そんなことを考えていると、説明を聞き終わった伊月さんが話しかけてきた。まだ部員ではないので廊下に出ると、伊月さんは小さく息を吐く。
「はぁー 緊張したぁ」
「えっ? 緊張してたんだ?」
「さすがに一人だと思ってなかったので。でも、他の先輩方も優しくて良かったです」
「もしかして……文芸部に入部してくれるの?」
「はい。そのつもりで見学に来たんですけど……?」
伊月さんは少し困惑気味にそう言う。よく考えれば見学に来た人に対して聞く質問ではない。
「い、いや、松永と一緒に見た運動会の時のイメージで、伊月さんは何となく運動部系だと思っていたから……」
「そうだったんですね。わたし、運動は嫌いじゃないですけど、部活でやるほど得意ってわけじゃないので」
「あー だから、テニス部も……」
「それはちょっと違う理由なんです。確かに一緒の高校なのは嬉しいですけど、部活まで一緒はどうかなぁと思ってて。浩太くん的には入って欲しそうでしたけど」
「なるほどね。でも、その方がいいと思うよ」
僕は心の中で松永に悪いと思いながらそう言う。
「産賀さんにそう言って貰えると助かります。浩太くんにも釘を刺しやすくなるので」
「ははは。あっ、そういえば先週1年生の女子二人が見学に来てくれて、入部してくれそうな感じだったから、もし伊月さんが入部しても一人にはならないと思うよ」
「そうなんですか。今日一人だったのでちょっと不安でしたけど、誰かいてくれるなら嬉しいです」
「うん。僕の時は今の部長と二人だけだったから、伊月さんたちが入部してくれるなら本当にありがたいな……って、強制してるわけじゃないからね? 他の部活に興味があるなら全然変えても大丈夫だから」
「ありがとうございます。そうですね……一緒に見学しようって友達に誘われてるところもあるんですけど、今のところは文芸部にするつもりです。あっ、すみません。長く喋っちゃって。今日はこれで失礼します」
伊月さんはまた軽く会釈をしてそのまま帰って行った。
そんなこんなで伊月さんが文芸部に入部してくれる可能性が出てきた。僕としては意外だったけど、伊月さんがいい子なのはよくわかっているし、来てくれる分には嬉しいことだ。
ただ、1つだけ問題があるとしたら……松永に何か言われるかもしれない。
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