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2年生1学期
4月14日(木)雨 拡散する大山亜里沙
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久しぶりの雨が降った木曜日。桃色がくすんできた桜もこの雨が過ぎたら完全に散ってしまうかもしれない。それで春らしい要素が無くなると、今度はすぐに夏の暑さや梅雨の湿っぽさがやって来そうだ。
そんな今日は通常授業が滞りなく流れていくけど、2時間目の休み時間に入った時、大山さんは神妙な面持ちで僕に話しかける。
「うぶクン、アタシ大変なことに気付いたんだケド」
「えっ? なにかあったの?」
「……この席、前過ぎて寝たら絶対バレれる」
「ええっ……」
僕はわかりやすく困惑してしまった。確僕と同じく前から3番目の席で、僕よりも教卓側に近いから、確かに授業中の先生の目には入りやすい。
「ヤバくない?」
「寝なければいいのでは?」
「どうしても眠くなる時あるじゃん?」
「でも、2年から現社はないから絶対寝る授業は無くなったんじゃ……」
「それがさぁ。アタシ、さっきの世界史もダメっぽいんだよね。先生の声が眠いとかじゃなくて、なんていうか……授業の進め方が合わないカンジ?」
「あの先生、凄まじい勢いで板書して消していくけども」
「そんなワケだからさっきのノート写させて貰っていい?」
「寝てなかったんじゃないの!?」
「いや、寝てはいかなかったケド、意識は朦朧としてたから」
それは半分寝ていたではと思いつつも、僕は1年生から続く癖でそのままノートを渡そうとする。
しかし、直前で僕は思い出した。次に貸すようなことがあれば、今度こそ大山さんがきちんと授業を受けられるようにしようと思っていたことを。今の席が寝られない状態なら自分で板書を取るように促せられるかもしれない。
「大山さん、今回だけは貸すけど、次回以降は自分で板書するって約束できる?」
「えっ。なんで急に委員長っぽいこと言い出したの」
「別にそういうわけじゃないよ。ほら、2年生になったらさすがに授業を聞かずにどうにかできることばかりじゃないだろうし」
「いやいや、そういう説得の仕方、めっちゃ委員長っぽいって!」
「僕が話したいのは委員長っぽいかどうかじゃないんだけど……」
「うー……わかりました。今後はきちんとするので今回だけは写させてください」
大山さんはわざとらしく頭を下げて言う。でも、それが嘘だとは言えないので、僕はノートを渡した。
それを手早くスマホで撮影し終えると、大山さんはすぐにノートを返却して……後ろを向いた。
「岸本さんさ。ちょっと相談があるんだケド……来週からの世界史の授業について」
「えっ……なにかあったの?」
「実は……」
「こらこら! それは反則でしょ!?」
「まだ何も言ってないのにー」
そんなこんなで結局、大山さんが次回以降の世界史をきちんと受けるかはうやむやになってしまった。
僕はこのクラスの委員長じゃないし、自分でもどうして口うるさく言っているのかわからなくなってきたけど、やっぱり授業はきちんと受けた方がいいと思う。
変わらないやり取りと言えば聞こえはいいけど、僕としてはこの状況を変えられるように今年度はがんばってみようと勝手に思うのだった。
そんな今日は通常授業が滞りなく流れていくけど、2時間目の休み時間に入った時、大山さんは神妙な面持ちで僕に話しかける。
「うぶクン、アタシ大変なことに気付いたんだケド」
「えっ? なにかあったの?」
「……この席、前過ぎて寝たら絶対バレれる」
「ええっ……」
僕はわかりやすく困惑してしまった。確僕と同じく前から3番目の席で、僕よりも教卓側に近いから、確かに授業中の先生の目には入りやすい。
「ヤバくない?」
「寝なければいいのでは?」
「どうしても眠くなる時あるじゃん?」
「でも、2年から現社はないから絶対寝る授業は無くなったんじゃ……」
「それがさぁ。アタシ、さっきの世界史もダメっぽいんだよね。先生の声が眠いとかじゃなくて、なんていうか……授業の進め方が合わないカンジ?」
「あの先生、凄まじい勢いで板書して消していくけども」
「そんなワケだからさっきのノート写させて貰っていい?」
「寝てなかったんじゃないの!?」
「いや、寝てはいかなかったケド、意識は朦朧としてたから」
それは半分寝ていたではと思いつつも、僕は1年生から続く癖でそのままノートを渡そうとする。
しかし、直前で僕は思い出した。次に貸すようなことがあれば、今度こそ大山さんがきちんと授業を受けられるようにしようと思っていたことを。今の席が寝られない状態なら自分で板書を取るように促せられるかもしれない。
「大山さん、今回だけは貸すけど、次回以降は自分で板書するって約束できる?」
「えっ。なんで急に委員長っぽいこと言い出したの」
「別にそういうわけじゃないよ。ほら、2年生になったらさすがに授業を聞かずにどうにかできることばかりじゃないだろうし」
「いやいや、そういう説得の仕方、めっちゃ委員長っぽいって!」
「僕が話したいのは委員長っぽいかどうかじゃないんだけど……」
「うー……わかりました。今後はきちんとするので今回だけは写させてください」
大山さんはわざとらしく頭を下げて言う。でも、それが嘘だとは言えないので、僕はノートを渡した。
それを手早くスマホで撮影し終えると、大山さんはすぐにノートを返却して……後ろを向いた。
「岸本さんさ。ちょっと相談があるんだケド……来週からの世界史の授業について」
「えっ……なにかあったの?」
「実は……」
「こらこら! それは反則でしょ!?」
「まだ何も言ってないのにー」
そんなこんなで結局、大山さんが次回以降の世界史をきちんと受けるかはうやむやになってしまった。
僕はこのクラスの委員長じゃないし、自分でもどうして口うるさく言っているのかわからなくなってきたけど、やっぱり授業はきちんと受けた方がいいと思う。
変わらないやり取りと言えば聞こえはいいけど、僕としてはこの状況を変えられるように今年度はがんばってみようと勝手に思うのだった。
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