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2年生1学期
4月9日(土)晴れ 松永浩太の嘆き
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帰ってきた週末休みの土曜日。今週は比較的楽な内容だったはずだけど、久しぶりに学校へ行ったことあってか、体は結構疲れていた。だから、この日は家でゆっくりするつもりだった。
「寂しいなぁ……」
しかし、そんな我が家に午前中から松永がやって来て僕は少しばかりおもてなしすることになる。いや、来ること自体はいいんだけど、今日は何だか面倒くさそうなテンションだった。
「なんだよ。まだクラス違った話してるのか」
「それもあるよ! 結局、りょーちゃんはうちのクラス来なかったじゃん!」
「そっちが来たから別にいいだろう」
「これじゃあ、なんか俺が一方的に愛を送ってる感じになっちゃう」
「はいはい。それで本題は何の話なんだ?」
「いや、茉奈ちゃんが月曜日から宿泊研修に行って、今日明日はその準備があるからまた別日にって言われて」
何かと思えば惚気話だったので、僕は呆れてため息をつく。
「なにその反応!? りょーちゃんが思ってるよりも深刻な事態なんだけど!?」
「そうなのか? 受験勉強中も会えないことの方が多かったんだし、仕方ないと思うけど」
「だって、春休み中は結構一緒の時間があったから、急に会えなくなると寂しく感じるんだよ」
「おお、恋愛ソングの歌詞みたいなこと言った」
「せっかく同じ学校に通ったのに今週も校内で会うことなかったし……」
「1年生と2年生じゃそうだろう」
「……りょーちゃん。ちょっとは肯定してよ」
珍しくしょげている松永はそう言う。その状況がちょっと面白くて様子見してしまったけど、さすがにこのまま放置するのは良くなさそうだ。
「まぁ、新学期の初めは忙しいものだし、そこが落ち着いたらまた一緒にいられる時間も増えるよ。実際……文芸部には見学者来なかったし」
「そうなんだ。テニス部は男女共に何人か来たけど」
「うっ……そ、それはまぁ、そういうこともある。でも、さすがに誰も来ないなんてことはないだろうから、今の時期が忙しいことにしておいて」
「……ははっ! 色々大変だ、お互いに」
松永の大変さと文芸部のピンチは同じじゃない気がするけど、松永は何とか元気を取り戻した。こういう時の切り替えの早さは僕も見習いたいところだ。
でも、そう考えると、今回凄く凹んでいたのは本当に珍しい。
「松永って……実は伊月さんに対して甘えん坊な感じ?」
「えっ。なんで?」
「いや、そこまで離れて寂しいってなるのは何か理由があるのかと。それとも彼氏彼女ならそうなるものなの?」
「どうかなぁ……この話をするにはりょーちゃんが同じ立場になってからじゃないと」
「なれるかわからないから今教えてくれてもいいよ」
「またそんなこと言って! 後輩が入ってきたらこれまでになかったことも起こるかもしれないでしょ」
「入ってきたら……ね」
「……まさか、見学者来なかったの結構気にしてるやつ? いやいや、後輩って部活に限った話じゃないから!」
その後、なぜか松永の方が部活のことでやや凹んでいる僕を励ます形になった。自分の立場を見ると情けないけど、正直こっちの構図の方がしっくりくる。
それはそれとして、クラスが分かれても松永とは相変わらずやっていけそうなのは嬉しいと、口には出さないけど、思うのだった。
「寂しいなぁ……」
しかし、そんな我が家に午前中から松永がやって来て僕は少しばかりおもてなしすることになる。いや、来ること自体はいいんだけど、今日は何だか面倒くさそうなテンションだった。
「なんだよ。まだクラス違った話してるのか」
「それもあるよ! 結局、りょーちゃんはうちのクラス来なかったじゃん!」
「そっちが来たから別にいいだろう」
「これじゃあ、なんか俺が一方的に愛を送ってる感じになっちゃう」
「はいはい。それで本題は何の話なんだ?」
「いや、茉奈ちゃんが月曜日から宿泊研修に行って、今日明日はその準備があるからまた別日にって言われて」
何かと思えば惚気話だったので、僕は呆れてため息をつく。
「なにその反応!? りょーちゃんが思ってるよりも深刻な事態なんだけど!?」
「そうなのか? 受験勉強中も会えないことの方が多かったんだし、仕方ないと思うけど」
「だって、春休み中は結構一緒の時間があったから、急に会えなくなると寂しく感じるんだよ」
「おお、恋愛ソングの歌詞みたいなこと言った」
「せっかく同じ学校に通ったのに今週も校内で会うことなかったし……」
「1年生と2年生じゃそうだろう」
「……りょーちゃん。ちょっとは肯定してよ」
珍しくしょげている松永はそう言う。その状況がちょっと面白くて様子見してしまったけど、さすがにこのまま放置するのは良くなさそうだ。
「まぁ、新学期の初めは忙しいものだし、そこが落ち着いたらまた一緒にいられる時間も増えるよ。実際……文芸部には見学者来なかったし」
「そうなんだ。テニス部は男女共に何人か来たけど」
「うっ……そ、それはまぁ、そういうこともある。でも、さすがに誰も来ないなんてことはないだろうから、今の時期が忙しいことにしておいて」
「……ははっ! 色々大変だ、お互いに」
松永の大変さと文芸部のピンチは同じじゃない気がするけど、松永は何とか元気を取り戻した。こういう時の切り替えの早さは僕も見習いたいところだ。
でも、そう考えると、今回凄く凹んでいたのは本当に珍しい。
「松永って……実は伊月さんに対して甘えん坊な感じ?」
「えっ。なんで?」
「いや、そこまで離れて寂しいってなるのは何か理由があるのかと。それとも彼氏彼女ならそうなるものなの?」
「どうかなぁ……この話をするにはりょーちゃんが同じ立場になってからじゃないと」
「なれるかわからないから今教えてくれてもいいよ」
「またそんなこと言って! 後輩が入ってきたらこれまでになかったことも起こるかもしれないでしょ」
「入ってきたら……ね」
「……まさか、見学者来なかったの結構気にしてるやつ? いやいや、後輩って部活に限った話じゃないから!」
その後、なぜか松永の方が部活のことでやや凹んでいる僕を励ます形になった。自分の立場を見ると情けないけど、正直こっちの構図の方がしっくりくる。
それはそれとして、クラスが分かれても松永とは相変わらずやっていけそうなのは嬉しいと、口には出さないけど、思うのだった。
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