上 下
367 / 942
2年生1学期

4月5日(火)晴れ 恒例と衝撃のクラス分け

しおりを挟む
 2年生初日の始業式。この日は松永と一緒に登校することになった。今日やること自体は式と明日の入学式へ向けた掃除だけなので、休み気分がまだ抜けない初日にはありがたい内容だ。
 だからといって、今日が気楽かと言えばそうではなく、新しいクラス分けがどうなるのかというドキドキがあるので、何となく落ち着かない気分だった。

「まぁ、今までもそんな過ごしづらいクラスになったことないから大丈夫でしょ。あるとしたら……担任がどうなるかくらい?」

「松永は苦手な先生いるの?」

「いないけど……普段寝そうになる授業の先生だと気まずいかも」

「それは寝る方が悪いじゃん」

 そんな会話をしつつ学校に到着すると、下駄箱前に設置された掲示物に多くの生徒が集まっていた。恐らくクラス分けが気になって少し早めに登校した人もいるからだろう。
 僕と松永も駐輪場に自転車を置いてからそこへ向かい、2年生のクラス分けに目を通していく。僕は掲載されるとしたら上の方に名前があるから比較的すぐに見つけられた。

「僕は3組だ。松永は名前見つかった?」

「りょーちゃん……俺、4組……」

「別のクラスか。それじゃあ……」

「それだけ!? もっと寂しいとか悲しいとかないの!?」

「いや、それでいったら小中も別に全部同じクラスだったわけじゃないし……」

「そうだとしてもサラッと流し過ぎでしょ! さっきまで不安な感じだったのに」

 それはその通りなのだけど、僕は自分の名前を見つけると同時にその次の名前が大倉伴憲であることがわかったからすぐにホッとできたのだ。そのせいで松永には塩対応っぽくなってしまったけど。

「わかったわかった。松永が同じクラスじゃなかったのは残念だよ」

「なんか言わせたみたいになってるんだけど……まぁ、いいか。ちなみにぽんちゃんも4組だった」

「へぇー 大倉くんは3組みたいだし、言い方はアレだけど分断された感じか」

「休み時間とか遊びに行くから! 絶対に!」

「そんな大袈裟な……」

 先ほどはクラス分けなんて気にしていない風だったけど、本当は松永もどうなるか気になっていたのかもしれない。とりあえず本田くんが一緒にいるなら僕としては安心できる。本田くんの苦労は別として。

 松永と別れてから4組の教室に入った僕は、自分の席を確認して腰を下ろす。今年は窓側の前から3番目と少し前寄りになったけど、大まかな位置で考えれば恒例の位置取りだった。
 それから、他に知り合いがいないだろうかと、僕が教室内を見回そうとした……その時だった。

「あっ、うぶクン!」

「産賀くん、おは……えっ?」

 耳馴染んだ呼ばれ方と少し遅れてよく聞いた声が僕のことを呼んだので振り向くと、大山さんと岸本さんがお互いに見つめ合っていた。

「あれ? この子もうぶクンの知り合い?」

「あっ、えっと……すみません」

「いやいや、アタシこそ邪魔したみたいでゴメンね。あっ、アタシは大山亜里沙で……おお! 後ろの席の岸本さん?」

「な、なんでわたしの名前を……!?」

「さっき名簿で見て前後誰か見といたんだー よろしくね!」

「よ、よろし……う、産賀くん……!」

 容量オーバーしたのか岸本さんは僕に助けを求めてきた。しかし、教室で岸本さんにそうされるのは初めてのことだったので、僕も無駄にあたふたしてしまう。

「ほー 二人は結構仲が良く見えるケド……」

「ぶ、文芸部なんだ、岸本さんも。ほら、文化祭の時に会ったことある……はずでしょ?」

「マジ!? ゴメン、岸本さん。アタシすっかり忘れて初対面みたいなことを……」

「い、いえ。わたしは……その、あんまり目立ってなかったと思うので……むしろわたしも初対面だと思ってました」

「そうなの? なら、良かったー それにしても岸本さんがもう一人の部員さんだったんだ。ていうことは、うぶクンとクラスまで一緒になるって凄い偶然!? そもそもうぶクンも2年連続で最初の席が隣だし、結構ヤバくない!?」

 大山さんがイベント事でテンションが上がるタイプなので、この新しいクラスになった今日は、僕が知る限りで今年一番のテンションだった。
 一方、それを僕と共に浴びている岸本さんは戦闘不能になりそうな感じで、フラフラとしている。

「あっ、大倉くんも一緒のクラスじゃん! おひさー!」

「お、大山さん、どうも。えっと……産賀くん、この状況はいったい?」

「……僕もわからないよ」

 こうして、2年4組の学校生活は結構顔見知りが多い人に囲まれながらスタートすることになった。暫くは松永いなくても騒がしくて退屈しないことだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君
青春
俺に青春など必要ない。 新高校1年生の俺、由良久志はたまたま隣の席になった有田さんと、なんだかんだで同居することに!? 絶対に他には言えない俺の秘密を知ってしまった彼女は、勿論秘密にすることはなく… 本当の思いは自分の奥底に隠して繰り広げる青春ラブコメ! なろう、カクヨムでも連載中! カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330647702492601 なろう→https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n5319hy/

女神と共に、相談を!

沢谷 暖日
青春
九月の初め頃。 私──古賀伊奈は、所属している部活動である『相談部』を廃部にすると担任から言い渡された。 部員は私一人、恋愛事の相談ばっかりをする部活、だからだそうだ。 まぁ。四月頃からそのことについて結構、担任とかから触れられていて(ry 重い足取りで部室へ向かうと、部室の前に人影を見つけた私は、その正体に驚愕する。 そこにいたのは、学校中で女神と謳われている少女──天崎心音だった。 『相談部』に何の用かと思えば、彼女は恋愛相談をしに来ていたのだった。 部活の危機と聞いた彼女は、相談部に入部してくれて、様々な恋愛についてのお悩み相談を共にしていくこととなる──

終わりに見えた白い明日

kio
青春
寿命の終わりで自動的に人が「灰」と化す世界。 「名無しの権兵衛」を自称する少年は、不良たちに囲まれていた一人の少女と出会う。 ──これは、終末に抗い続ける者たちの物語。 やがて辿り着くのは、希望の未来。 【1】この小説は、2007年に正式公開した同名フリーノベルゲームを加筆修正したものです(内容に変更はありません)。 【2】本作は、徐々に明らかになっていく物語や、伏線回収を好む方にお勧めです。 【3】『ReIce -second-』にて加筆修正前のノベルゲーム版(WINDOWS機対応)を公開しています(作品紹介ページにて登場人物の立ち絵等も載せています)。 ※小説家になろう様でも掲載しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

下弦に冴える月

和之
青春
恋に友情は何処まで寛容なのか・・・。

片思いに未練があるのは、私だけになりそうです

珠宮さくら
青春
髙村心陽は、双子の片割れである姉の心音より、先に初恋をした。 その相手は、幼なじみの男の子で、姉の初恋の相手は彼のお兄さんだった。 姉の初恋は、姉自身が見事なまでにぶち壊したが、その初恋の相手の人生までも狂わせるとは思いもしなかった。 そんな心陽の初恋も、片思いが続くことになるのだが……。

少女が過去を取り戻すまで

tiroro
青春
小学生になり、何気ない日常を過ごしていた少女。 玲美はある日、運命に導かれるように、神社で一人佇む寂しげな少女・恵利佳と偶然出会った。 初めて会ったはずの恵利佳に、玲美は強く惹かれる不思議な感覚に襲われる。 恵利佳を取り巻くいじめ、孤独、悲惨な過去、そして未来に迫る悲劇を打ち破るため、玲美は何度も挫折しかけながら仲間達と共に立ち向かう。 『生まれ変わったら、また君と友達になりたい』 玲美が知らずに追い求めていた前世の想いは、やがて、二人の運命を大きく変えていく──── ※この小説は、なろうで完結済みの小説のリメイクです ※リメイクに伴って追加した話がいくつかあります  内容を一部変更しています ※物語に登場する学校名、周辺の地域名、店舗名、人名はフィクションです ※一部、事実を基にしたフィクションが入っています ※タグは、完結までの間に話数に応じて一部増えます ※イラストは「画像生成AI」を使っています

処理中です...