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1年生春休み
3月30日(水)晴れのち曇り 明莉との日常その42/花園華凛との日常その11
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春休み5日目。この日は約束通り明莉をお馴染みとなりつつある和菓子屋の花月堂へ連れて行った。昨日は花園さんのイラストのおかげで大きく進展したので、店内にいればちょうどそのお礼もできるタイミングだった。
14時頃店に到着すると、春休みということもあってか恐らく同年代くらいお客さんも何人か入っていた。僕が客入りを気にしても仕方ないけど、花園さんの家かつ複数回来ているせいか、ちゃんとお客さんが来ていると何だか嬉しく思ってしまう。
「りょうちゃん、この期間限定の桜色パフェも食べたいから2つ頼んでもいい? 誕生日だからいいよね?」
それについてもこの前聞いていたので僕は快く頷く。花園さんへお礼できるとすればここでお金を使うことだと思うので、僕も珍しくやや高めのパフェを選んで、お財布へのダメージは気にしないこ
とにした。
それからイートインスペースで5分ほど待つと、注文した品を持った花園さんがやって来た。
「いらっしゃいませ。リョウスケにアカリさん。ご贔屓にして貰って嬉しい限りです」
「本当はもっとご贔屓したいんですけど、お兄ちゃんがなかなか連れて行ってくれないんですよー」
「ほう。それはよくありませんね」
「これでも来てる方だと思うけどなぁ……」
花園さんは明莉を結構気に入っていて、時々話に出していたけど、実際に会うのは2回目だったりする。恐らく明莉の懐き方が上手いのだろう。
「昨日の文芸部、花園さんのおかげでチラシとポスターが無事に完成したよ」
「はい。ミチちゃんから報告して貰いました」
「あれ? 花園先輩は文芸部じゃなかったような……?」
「新入生勧誘のチラシとポスターのイラストを描いて貰ったんだ」
「えー!? 花園先輩、イラスト描けるんですか!? すごいな~」
「いえいえ……もっと褒めて貰っても構いません」
「よっ、画家先生! 天才絵師っ!」
その褒め方でいいのかと思ったけど、花園さんは満足そうに頷いた。そして、そのまま仕事に戻る……と思いきや、明莉の隣の席へ座る。
「それで……昨日の文芸部はどんな感じだったのですか?」
「ど、どんな感じとは……?」
「ミチちゃんと二人きりだったのでは?」
「いや、先輩が手伝いに来てくれたけど」
「話が違います」
何が違うかわからないけど、また花園さんがその手の話を始めてしまった。それについてきちんと訂正したいところだけど……
「お兄ちゃん、何の話?」
まさか明莉のいる前で振られると思っていなかった。この状況で言い訳をしても押し負けてしまいそうな気がする。
すると、花園さんは明莉に耳打ちを始める。
「実はですね……ごにょごにょ」
「あっ!? 花園さん!!!」
「店内ではお静かに」
「す、すみません……じゃなくて!」
「何ですか。まだ何も吹き込んでいません」
「それについては花園さんの勘違いというか、たぶん誤解してると思うんだ」
「そうですか。それではそのようにミチちゃんにも伝えておきます」
「ちょっと待って。何の話かわかって言ってる……?」
「……リョウスケ。あくまで華凛が話しているのはリョウスケにも話せる情報だけなので、そこはリョウスケの方が勘違いしている可能性があります」
「そ、そう言われても……」
「もー 二人ともあれそればっかりで何の話なのかさっぱりなんだけど?」
明莉がつまらなさそうに言うと、花園さんは笑顔見せて立ち上がった。
「まぁ、華凛も少々面白がっている節があるのは反省します。これからはあまり探りを入れ過ぎないようにするので、どうかミチちゃんには誠実に対応してあげてください」
「う、うん……」
「それではごゆっくりどうぞ。アカリちゃんも追加注文があればまた呼んでください」
「えっ? りょうちゃん、いいの?」
「いや、2つまでって約束だし……」
最後まで好き放題していった花園さんはその後帰り際にも顔を見せてくれたけど、結局きちんと訂正できたか、わからないままになってしまった。
「美味しかったー りょうちゃん、また連れて来てね!」
とりあえず明莉の誕生日の件については満足させられたので、それは良しとしておこう。
14時頃店に到着すると、春休みということもあってか恐らく同年代くらいお客さんも何人か入っていた。僕が客入りを気にしても仕方ないけど、花園さんの家かつ複数回来ているせいか、ちゃんとお客さんが来ていると何だか嬉しく思ってしまう。
「りょうちゃん、この期間限定の桜色パフェも食べたいから2つ頼んでもいい? 誕生日だからいいよね?」
それについてもこの前聞いていたので僕は快く頷く。花園さんへお礼できるとすればここでお金を使うことだと思うので、僕も珍しくやや高めのパフェを選んで、お財布へのダメージは気にしないこ
とにした。
それからイートインスペースで5分ほど待つと、注文した品を持った花園さんがやって来た。
「いらっしゃいませ。リョウスケにアカリさん。ご贔屓にして貰って嬉しい限りです」
「本当はもっとご贔屓したいんですけど、お兄ちゃんがなかなか連れて行ってくれないんですよー」
「ほう。それはよくありませんね」
「これでも来てる方だと思うけどなぁ……」
花園さんは明莉を結構気に入っていて、時々話に出していたけど、実際に会うのは2回目だったりする。恐らく明莉の懐き方が上手いのだろう。
「昨日の文芸部、花園さんのおかげでチラシとポスターが無事に完成したよ」
「はい。ミチちゃんから報告して貰いました」
「あれ? 花園先輩は文芸部じゃなかったような……?」
「新入生勧誘のチラシとポスターのイラストを描いて貰ったんだ」
「えー!? 花園先輩、イラスト描けるんですか!? すごいな~」
「いえいえ……もっと褒めて貰っても構いません」
「よっ、画家先生! 天才絵師っ!」
その褒め方でいいのかと思ったけど、花園さんは満足そうに頷いた。そして、そのまま仕事に戻る……と思いきや、明莉の隣の席へ座る。
「それで……昨日の文芸部はどんな感じだったのですか?」
「ど、どんな感じとは……?」
「ミチちゃんと二人きりだったのでは?」
「いや、先輩が手伝いに来てくれたけど」
「話が違います」
何が違うかわからないけど、また花園さんがその手の話を始めてしまった。それについてきちんと訂正したいところだけど……
「お兄ちゃん、何の話?」
まさか明莉のいる前で振られると思っていなかった。この状況で言い訳をしても押し負けてしまいそうな気がする。
すると、花園さんは明莉に耳打ちを始める。
「実はですね……ごにょごにょ」
「あっ!? 花園さん!!!」
「店内ではお静かに」
「す、すみません……じゃなくて!」
「何ですか。まだ何も吹き込んでいません」
「それについては花園さんの勘違いというか、たぶん誤解してると思うんだ」
「そうですか。それではそのようにミチちゃんにも伝えておきます」
「ちょっと待って。何の話かわかって言ってる……?」
「……リョウスケ。あくまで華凛が話しているのはリョウスケにも話せる情報だけなので、そこはリョウスケの方が勘違いしている可能性があります」
「そ、そう言われても……」
「もー 二人ともあれそればっかりで何の話なのかさっぱりなんだけど?」
明莉がつまらなさそうに言うと、花園さんは笑顔見せて立ち上がった。
「まぁ、華凛も少々面白がっている節があるのは反省します。これからはあまり探りを入れ過ぎないようにするので、どうかミチちゃんには誠実に対応してあげてください」
「う、うん……」
「それではごゆっくりどうぞ。アカリちゃんも追加注文があればまた呼んでください」
「えっ? りょうちゃん、いいの?」
「いや、2つまでって約束だし……」
最後まで好き放題していった花園さんはその後帰り際にも顔を見せてくれたけど、結局きちんと訂正できたか、わからないままになってしまった。
「美味しかったー りょうちゃん、また連れて来てね!」
とりあえず明莉の誕生日の件については満足させられたので、それは良しとしておこう。
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