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1年生3学期
3月11日(金)晴れ 岸本路子の成長その13
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校舎に3年生がいない金曜日。だけど、今日の文芸部ではその違いはあまり感じることができなかった。恐らくそれを実感する前には春休みに突入してしまう。
「皆さんのおかげで学園誌も好評だったようでーす。まぁ、今のところ感想を貰えたので先生や来賓の方なので、卒業式に届いているかはわかりませんがー」
森本先輩の報告の通り、昨日の卒業式の折に僕たちの作品も掲載された冊子が配られた。今年度の残りの部活については来年の計画を立てつつ、ここに掲載された作品の感想戦をやっていく。
「……さてー 何かと言ってきましたが、現部長である森本と副部長の水原については本日でひと区切りとさせて頂きまーす。1年間付いて来てくれてありがとうございましたー」
「私も拙いところはあったと思うが、皆の強力があって1年間務めさせて貰った。本当にありがとう」
森本先輩と水原先輩は挨拶を終えると、僕らは拍手を送った。
「まー そうは言いつつすぐに切り替えってわけじゃないから安心してー 次の部長と副部長には……産賀くんと岸本さんにお願いしようと思っていまーす。どちらが部長をやるかはとりあえずは立候補にしようと思うけど、どうするー?」
そう聞きながら森本先輩は僕と岸本さんの方に視線を向ける。そこで手を挙げたのは……岸本さんだ。
「あ、あの……わたしが部長に立候補しようと思っています」
立ち上がった岸本さんに対する先輩方の反応は少し驚きが含まれていた。どちらにせよ現1年生のどちらかがやるのは間違いないけど、僕自身が思っていたように僕の方が部長になると思っていたのだろう。
「み、皆さんがよろしければ……ですけれど」
「……もちろん、いいよー 岸本ちゃんの本が好きって気持ちや創作に対する熱意は部長に必要だと思うしー」
緊張気味の岸本さんに森本先輩は優しい言葉をかける。それに続けて水原先輩たちは拍手で同意した。
「それじゃあ、来年度の部長は岸本さん、副部長は産賀くんにお願いしまーす。産賀くんも何かひと言あればー」
「は、はい! 精一杯務めさせて頂きます!」
「はい、二人ともよろしくお願いしまーす」
岸本さんが手を挙げることは事前に知っていたから余裕のある態度だったけど、自分が何を言うべきかは考えてなかったから簡素な意気込みになってしまった。
そして、ミーティングを終えると、先輩方は岸本さんの元に来て部長になることについて話し始める。そこには正直に意外だった、驚いたという声もあったけど、森本先輩と同じように任せても大丈夫だというのが共通の認識だった。
一方、それを見ていた僕に水原先輩が話しかける。
「産賀。引き続きは後日やるが、ひとまず来年度の副部長は頼むぞ。岸本もやれるとは思うが……色々と抱え込みそうなタイプでもあるからな」
「もちろんです。僕も副部長で楽できるとは思っていないので」
「それにしても産賀は事前に知っていたんだな」
「わ、わかりました……?」
「前から見ていて全く驚いていなかったからな。私の時は候補的には私が部長になると思っていたが、事前に沙良から相談されて、今日みたいに立候補したんだ」
「僕の場合は二人だけなのでちょっと違いますけど、正直僕が部長をやるものかと思っていました」
「それはみんなもそうだろう。でも、本当に部長を任せるべきなのは私や産賀みたいになるだろうと思っている奴じゃなくて、やりたいと思っている人なんだろうな」
水原先輩はそう言いながら今話している岸本さんと森本先輩の方を見る。今まで二人が似ているとはあまり思ったことがなかったけど、今回の行動は同じ思いで動いていたように思う。
「まぁ、その結果部長になってみたら一番提出が遅いわ、資料の確認もギリギリだわで大変だったが」
「あはは……」
「その点だと岸本と産賀は大丈夫そうだ。あっ、今のはプレッシャーかけたわけじゃないからな?」
僕は「わかってます」と返事をすると、水原先輩はホッとして笑った。
そういうわけで正式な引き続きではないけど、新年度の文芸部の部長と副部長が決定した。これから新入部員確保に向けて色々考えていくことになるけど……その話の前に僕と岸本さんにはもう一つ解決すべきことがある。
それが早く解決できるかは、明日の成り行き次第だ。
「皆さんのおかげで学園誌も好評だったようでーす。まぁ、今のところ感想を貰えたので先生や来賓の方なので、卒業式に届いているかはわかりませんがー」
森本先輩の報告の通り、昨日の卒業式の折に僕たちの作品も掲載された冊子が配られた。今年度の残りの部活については来年の計画を立てつつ、ここに掲載された作品の感想戦をやっていく。
「……さてー 何かと言ってきましたが、現部長である森本と副部長の水原については本日でひと区切りとさせて頂きまーす。1年間付いて来てくれてありがとうございましたー」
「私も拙いところはあったと思うが、皆の強力があって1年間務めさせて貰った。本当にありがとう」
森本先輩と水原先輩は挨拶を終えると、僕らは拍手を送った。
「まー そうは言いつつすぐに切り替えってわけじゃないから安心してー 次の部長と副部長には……産賀くんと岸本さんにお願いしようと思っていまーす。どちらが部長をやるかはとりあえずは立候補にしようと思うけど、どうするー?」
そう聞きながら森本先輩は僕と岸本さんの方に視線を向ける。そこで手を挙げたのは……岸本さんだ。
「あ、あの……わたしが部長に立候補しようと思っています」
立ち上がった岸本さんに対する先輩方の反応は少し驚きが含まれていた。どちらにせよ現1年生のどちらかがやるのは間違いないけど、僕自身が思っていたように僕の方が部長になると思っていたのだろう。
「み、皆さんがよろしければ……ですけれど」
「……もちろん、いいよー 岸本ちゃんの本が好きって気持ちや創作に対する熱意は部長に必要だと思うしー」
緊張気味の岸本さんに森本先輩は優しい言葉をかける。それに続けて水原先輩たちは拍手で同意した。
「それじゃあ、来年度の部長は岸本さん、副部長は産賀くんにお願いしまーす。産賀くんも何かひと言あればー」
「は、はい! 精一杯務めさせて頂きます!」
「はい、二人ともよろしくお願いしまーす」
岸本さんが手を挙げることは事前に知っていたから余裕のある態度だったけど、自分が何を言うべきかは考えてなかったから簡素な意気込みになってしまった。
そして、ミーティングを終えると、先輩方は岸本さんの元に来て部長になることについて話し始める。そこには正直に意外だった、驚いたという声もあったけど、森本先輩と同じように任せても大丈夫だというのが共通の認識だった。
一方、それを見ていた僕に水原先輩が話しかける。
「産賀。引き続きは後日やるが、ひとまず来年度の副部長は頼むぞ。岸本もやれるとは思うが……色々と抱え込みそうなタイプでもあるからな」
「もちろんです。僕も副部長で楽できるとは思っていないので」
「それにしても産賀は事前に知っていたんだな」
「わ、わかりました……?」
「前から見ていて全く驚いていなかったからな。私の時は候補的には私が部長になると思っていたが、事前に沙良から相談されて、今日みたいに立候補したんだ」
「僕の場合は二人だけなのでちょっと違いますけど、正直僕が部長をやるものかと思っていました」
「それはみんなもそうだろう。でも、本当に部長を任せるべきなのは私や産賀みたいになるだろうと思っている奴じゃなくて、やりたいと思っている人なんだろうな」
水原先輩はそう言いながら今話している岸本さんと森本先輩の方を見る。今まで二人が似ているとはあまり思ったことがなかったけど、今回の行動は同じ思いで動いていたように思う。
「まぁ、その結果部長になってみたら一番提出が遅いわ、資料の確認もギリギリだわで大変だったが」
「あはは……」
「その点だと岸本と産賀は大丈夫そうだ。あっ、今のはプレッシャーかけたわけじゃないからな?」
僕は「わかってます」と返事をすると、水原先輩はホッとして笑った。
そういうわけで正式な引き続きではないけど、新年度の文芸部の部長と副部長が決定した。これから新入部員確保に向けて色々考えていくことになるけど……その話の前に僕と岸本さんにはもう一つ解決すべきことがある。
それが早く解決できるかは、明日の成り行き次第だ。
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