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1年生3学期

3月9日(水)曇りのち晴れ 大山亜里沙の再誕その11

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 学期末テスト最終日の水曜日。無事に全教科を終えたので、後は終業式までそつなくこなしていくだけだ。その前には卒業式があるけど、僕にはそれほど関係なく……いや、何か重要なことを忘れている気がする。

「うぶクン、テスト勝負に勝ったら何やるか決まっ……てない?」

 聞いた時の表情で察せられてしまったのか、大山さんはそう言う。先週、言われた時点では覚えていたけど、土日を挟んで僕的に色々あったからすっかり忘れていた。

「もー 考えといてって言ったのに」

「ご、ごめん。でも、そんな大したことは頼まないと思うから身構えなくても大丈夫だよ」

「そうかもしれないけどさー ちなみにアタシは新作ミスドをおごって貰うつもり」

「あー CMでやってるやつ。それなら別に……」

「僕もそれでもいいって?」

 僕の言動は完全に読まれてしまうらしい。僕は気まずそうに頷く。

「もしかして、あんまり乗り気じゃなかった?」

「いやいや。勝負自体は負けないようにと思ってたんだけど、そっちは完全に忘れてて……」

「まぁ、うぶクンがいいならそれでもいいケド。今日決めなくてもいいからテストが全部返ってくるまで一応考えておいてね」

「は、はい」

 大山さんは少し不服そうに言うので、僕は申し訳なく思う。
 でも、女子に何かおごって貰う経験は明莉以外だとないから、結構困ってしまうのだ。これで選んだものによって引かれてしまう可能性も……

「あっ!?」

「ど、どしたのうぶクン」

「い、いや……」

 僕はそれで本当に忘れていたもっと重要なことを思い出した。当分先だと思っていて意識していなかったけど、来週の3月14日はもうホワイトデーが来てしまう。
 そして、今の時点だと、全く何も考えられていない。

 だからといって、この流れで大山さんにどんなお返しが欲しいかと聞くのは僕には難しいし、本人に聞くのはたぶん間違っている。

「部屋の電気消し忘れたの思い出したとか?」

「う、うん。そんな感じのこと」

「そういうの何でもない時に思い出すよねー」

 結局、自分の候補を絞る前に、ホワイトデーのお返し候補を考えなければいけなくなってしまった。
 バレンタインは結構前から準備したというのにホワイトデーは数日前に気付くのは何だか逆な気もするけど、今日気付けて良かったと思っておこう。
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