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1年生3学期
2月22日(火)曇り時々雪 岸本路子の成長その10
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2がゾロ目の火曜日。文芸部のミーティングでは冊子に載せる作品の提出期限が来週の火曜日までと改めて伝えられる。本来はテスト前で部活動が停止されるけど、この提出に限ってはテスト明けの卒業式へ間に合わせる必要があるからギリギリまで許して貰えるらしい。
それでも金曜日に提出できるようであればなるべくそこに合わせるようにと言われたので、あと3日以内に完成させようと思う。
「産賀くん。こんな時に悪いけど、ちょっとだけ時間貰ってもいい?」
岸本さんにそう言われて僕は一旦手を止める。
「うん。もしかしてテスト勉強の話? 作品の提出が終わったら僕はいつでも大丈夫だから……」
「そ、それもまた別件で相談したいのだけれど、その前に考えたいことがあって」
テスト前のタイミングだからてっきりその話だと思っていた僕だったけど、早とちりだった。それ以外で岸本さんからこのタイミングで相談されるようなことは……何かあった気がする。結構前から聞いたある事が近づいていたような……
「かりんちゃんの誕生日についてなのだけど……」
「ああ! 2月28日!」
「そうなの。でも、その日はちょうどテスト前の月曜日だし、この土日に何かするわけにもいかないからどうようかと思って」
「じゃあ、テスト終わりにお祝いしてもいいんじゃないかな。だいぶ先にはなっちゃうけど」
「うん。わたしもそうしようと思ってて。だから、産賀くんの都合がいい日も教えて貰えないかしら?」
「……ん? 僕も一緒に誕生日をお祝いする感じ……?」
岸本さんは当然のように言ってきたので、僕はそう聞いてしまった。一方の岸本さんはきょとんとした表情で僕を見てくる。
「えっ? 産賀くんも一緒にお祝いするものだと思っていたのだけれど……?」
「いや、お祝いはするつもりだったけど、一緒にやるとは思ってなかったんだ。花園さん的には岸本さんと二人で何かやる方がいいと思うし」
「でも、わたしと産賀くんの誕生日は三人一緒にお祝いしたから……」
「あれはまぁ、僕の誕生日がたまたま近かっただけで、岸本さんの誕生日を祝い損ねたからそうしようってなった感じだったし。だから、今回は別に二人だけでも……」
予め言い訳させて貰うと、僕は本当に花園さんからしたら岸本さんと二人で過ごした方が良いと思っていたからこういう勧め方をしていた。そこに祝うのが面倒だとか、三人一緒は駄目だとかそんなことは一切思っていない。
「産賀くん……どうしてそんなこと言うの……?」
でも、僕の発言は良くない言い方に取られてしまった。
「わたしもかりんちゃんも産賀くんがいて困ることなんてないのに」
「ご、ごめん。そんなつもりで言ったわけじゃないんだ」
「……ううん。わたしも急に言い出したのが良くなかったわ。産賀くんだって……女子二人といるのが窮屈に思うことだってあるのは知っているのにね」
「いや、僕は窮屈だなんて……」
「……わたし、ずっと産賀くんに頼り過ぎているから、今回くらいは自分で考えた方がいいのかもしれないわ。ごめんなさい、いつも時間を取らせて」
僕が釈明する前に岸本さんは一人で納得してしまった。
その後、岸本さんに話しかけようにも良くない空気を感じてしまって、そのまま作業に戻るしかなかった。
今までも言葉選びを間違ったことは何回かあるけど、その中でも今回は駄目な部類だった。こんなことで岸本さんの心証が悪くなってしまうなんて……後悔しかない。
それでも金曜日に提出できるようであればなるべくそこに合わせるようにと言われたので、あと3日以内に完成させようと思う。
「産賀くん。こんな時に悪いけど、ちょっとだけ時間貰ってもいい?」
岸本さんにそう言われて僕は一旦手を止める。
「うん。もしかしてテスト勉強の話? 作品の提出が終わったら僕はいつでも大丈夫だから……」
「そ、それもまた別件で相談したいのだけれど、その前に考えたいことがあって」
テスト前のタイミングだからてっきりその話だと思っていた僕だったけど、早とちりだった。それ以外で岸本さんからこのタイミングで相談されるようなことは……何かあった気がする。結構前から聞いたある事が近づいていたような……
「かりんちゃんの誕生日についてなのだけど……」
「ああ! 2月28日!」
「そうなの。でも、その日はちょうどテスト前の月曜日だし、この土日に何かするわけにもいかないからどうようかと思って」
「じゃあ、テスト終わりにお祝いしてもいいんじゃないかな。だいぶ先にはなっちゃうけど」
「うん。わたしもそうしようと思ってて。だから、産賀くんの都合がいい日も教えて貰えないかしら?」
「……ん? 僕も一緒に誕生日をお祝いする感じ……?」
岸本さんは当然のように言ってきたので、僕はそう聞いてしまった。一方の岸本さんはきょとんとした表情で僕を見てくる。
「えっ? 産賀くんも一緒にお祝いするものだと思っていたのだけれど……?」
「いや、お祝いはするつもりだったけど、一緒にやるとは思ってなかったんだ。花園さん的には岸本さんと二人で何かやる方がいいと思うし」
「でも、わたしと産賀くんの誕生日は三人一緒にお祝いしたから……」
「あれはまぁ、僕の誕生日がたまたま近かっただけで、岸本さんの誕生日を祝い損ねたからそうしようってなった感じだったし。だから、今回は別に二人だけでも……」
予め言い訳させて貰うと、僕は本当に花園さんからしたら岸本さんと二人で過ごした方が良いと思っていたからこういう勧め方をしていた。そこに祝うのが面倒だとか、三人一緒は駄目だとかそんなことは一切思っていない。
「産賀くん……どうしてそんなこと言うの……?」
でも、僕の発言は良くない言い方に取られてしまった。
「わたしもかりんちゃんも産賀くんがいて困ることなんてないのに」
「ご、ごめん。そんなつもりで言ったわけじゃないんだ」
「……ううん。わたしも急に言い出したのが良くなかったわ。産賀くんだって……女子二人といるのが窮屈に思うことだってあるのは知っているのにね」
「いや、僕は窮屈だなんて……」
「……わたし、ずっと産賀くんに頼り過ぎているから、今回くらいは自分で考えた方がいいのかもしれないわ。ごめんなさい、いつも時間を取らせて」
僕が釈明する前に岸本さんは一人で納得してしまった。
その後、岸本さんに話しかけようにも良くない空気を感じてしまって、そのまま作業に戻るしかなかった。
今までも言葉選びを間違ったことは何回かあるけど、その中でも今回は駄目な部類だった。こんなことで岸本さんの心証が悪くなってしまうなんて……後悔しかない。
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