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1年生3学期
2月18日(金)雪のち曇り 岸本路子の成長その9
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昨日から降る雪が残る金曜日。だんだんと寒さがマシになってきたと思っていたらまた寒くなるのは風邪を引きやすいタイミングである。僕もこの時期から春先にかけて体調を崩すことがあるので、気を付けなければならない。
そんな今日は久しぶりの文芸部だ。僕と岸本さんは先週の火曜日に部室に来たけど、先輩方は修学旅行に行っていたから約2週間ぶりに来ることになる。
「気が付いたらもう2月も後半に入っていますので、そろそろ作品が仕上がる目途を立てて頂ければと思いまーす。まー、部長は全然見えてないので、焦らなくても大丈夫ですがー」
「それじゃ駄目じゃないか。学期末テストも控えているから大変かもしれないが、みんなは部長みたいにならないようにしっかり進めてくれ。期限は今月末から来月の頭にかけてだ」
森本先輩と水原先輩がそんなやり取りをしながらミーティングは終了した。ここ数日は休みが続いたので文章は進められた方だけど、水原先輩の言う通りテストも迫っているから早めに仕上げるくらいがいいのかもしれない。
ただ、作業に入る前にやるべきことが残っていた。昨日、話に出た新入生の部活勧誘の話……も大切だけど、先にこれを終わらせないと僕がいつまでも気にしてしまう。
「き、岸本さん、お疲れ様」
僕はあからさまに緊張しながら話しかける。何を緊張する必要があるのかと言われると困るけど、岸本さんと直接会ったのは、2月14日以来になるから僕はその日の感覚をまだ引きずっているのかもしれない。
「お疲れ様。産賀くんは小説書くの進んでる? 時間があればまた学期末テスト前に勉強したいのだけど……」
「も、もちろん、時間が合わせらそうだった喜んで。でも、その前にちょっと……バレンタインのことなんだけど」
「えっ……ああ、うん。……ちゃんと食べられる物ができて良かったわ」
僕が下手な振りをしたせいか、岸本さんまで緊張しているように見える。おかしなものだ。今日の朝からここに来るまでどう言うべきか考えていたはずなのに、この直前で全部忘れてしまった。
「いや、食べられるとかじゃなくて……美味しかったよ。岸本さんが気にしてたようなことは全然なくて、美味しいガトーショコラだった」
「……本当に?」
「うん。だから今後も作る時があったら自信持って大丈夫だと思う」
「今後って……来年のバレンタイン?」
「そういうことじゃなくて……な、なんて言ったらいいだろう」
「……ふふっ」
「えっ!?」
困っている僕を見た岸本さんが笑ったので、僕は驚く。
「ごめんなさい。わたしが作る前や渡した時に色々言ったから産賀くんが気を遣ってくれているのはわかったのだけれど……今回は何だか挙動不審だったから」
「それは……はい」
「実を言うと……わたし、渡す時に色々言ったのは急に恥ずかしくなって喋らなきゃって思ったからなの。味に関しては本当に間違いないと思っていたから」
「そ、そうだったんだ」
「でも……ちゃんと渡せたと思ったらそれだけで満足できたの。それに産賀くんはその日のうちに食べた感想を送ってくれていたし」
そう言いながら微笑む岸本さんを見ると、松永が言う通りバレンタインは渡すことで目的の大半は終わっていて、僕がいつも通り心配性を発揮していただけだった。
「ごめん、こんな話に時間取らせて」
「ううん、全然。産賀くんなら何となく今日もその話振ってきそうな気がしてたから」
「……僕の動きや思考ってそんなにわかりやすい?」
「そんなことはないとは思うのだけど……わたしが少しだけわかるようになってきたのかもしれないわ」
そう言われるくらいには岸本さんとの付き合いも長くはなっているけど、それに対して僕はまだままだ岸本さんの考えていることを上手く察することはできないようだ。
でも、とりあえずこれで今年のバレンタインに関わることは終わ……っていない。貰ってしまったからにはお返しを用意する必要がある。その時、僕はちゃんと岸本さんのことを察した物を用意できるのだろうか……?
そんな今日は久しぶりの文芸部だ。僕と岸本さんは先週の火曜日に部室に来たけど、先輩方は修学旅行に行っていたから約2週間ぶりに来ることになる。
「気が付いたらもう2月も後半に入っていますので、そろそろ作品が仕上がる目途を立てて頂ければと思いまーす。まー、部長は全然見えてないので、焦らなくても大丈夫ですがー」
「それじゃ駄目じゃないか。学期末テストも控えているから大変かもしれないが、みんなは部長みたいにならないようにしっかり進めてくれ。期限は今月末から来月の頭にかけてだ」
森本先輩と水原先輩がそんなやり取りをしながらミーティングは終了した。ここ数日は休みが続いたので文章は進められた方だけど、水原先輩の言う通りテストも迫っているから早めに仕上げるくらいがいいのかもしれない。
ただ、作業に入る前にやるべきことが残っていた。昨日、話に出た新入生の部活勧誘の話……も大切だけど、先にこれを終わらせないと僕がいつまでも気にしてしまう。
「き、岸本さん、お疲れ様」
僕はあからさまに緊張しながら話しかける。何を緊張する必要があるのかと言われると困るけど、岸本さんと直接会ったのは、2月14日以来になるから僕はその日の感覚をまだ引きずっているのかもしれない。
「お疲れ様。産賀くんは小説書くの進んでる? 時間があればまた学期末テスト前に勉強したいのだけど……」
「も、もちろん、時間が合わせらそうだった喜んで。でも、その前にちょっと……バレンタインのことなんだけど」
「えっ……ああ、うん。……ちゃんと食べられる物ができて良かったわ」
僕が下手な振りをしたせいか、岸本さんまで緊張しているように見える。おかしなものだ。今日の朝からここに来るまでどう言うべきか考えていたはずなのに、この直前で全部忘れてしまった。
「いや、食べられるとかじゃなくて……美味しかったよ。岸本さんが気にしてたようなことは全然なくて、美味しいガトーショコラだった」
「……本当に?」
「うん。だから今後も作る時があったら自信持って大丈夫だと思う」
「今後って……来年のバレンタイン?」
「そういうことじゃなくて……な、なんて言ったらいいだろう」
「……ふふっ」
「えっ!?」
困っている僕を見た岸本さんが笑ったので、僕は驚く。
「ごめんなさい。わたしが作る前や渡した時に色々言ったから産賀くんが気を遣ってくれているのはわかったのだけれど……今回は何だか挙動不審だったから」
「それは……はい」
「実を言うと……わたし、渡す時に色々言ったのは急に恥ずかしくなって喋らなきゃって思ったからなの。味に関しては本当に間違いないと思っていたから」
「そ、そうだったんだ」
「でも……ちゃんと渡せたと思ったらそれだけで満足できたの。それに産賀くんはその日のうちに食べた感想を送ってくれていたし」
そう言いながら微笑む岸本さんを見ると、松永が言う通りバレンタインは渡すことで目的の大半は終わっていて、僕がいつも通り心配性を発揮していただけだった。
「ごめん、こんな話に時間取らせて」
「ううん、全然。産賀くんなら何となく今日もその話振ってきそうな気がしてたから」
「……僕の動きや思考ってそんなにわかりやすい?」
「そんなことはないとは思うのだけど……わたしが少しだけわかるようになってきたのかもしれないわ」
そう言われるくらいには岸本さんとの付き合いも長くはなっているけど、それに対して僕はまだままだ岸本さんの考えていることを上手く察することはできないようだ。
でも、とりあえずこれで今年のバレンタインに関わることは終わ……っていない。貰ってしまったからにはお返しを用意する必要がある。その時、僕はちゃんと岸本さんのことを察した物を用意できるのだろうか……?
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