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1年生3学期
2月13日(日)雨 明莉との日常その36
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三連休最終日かつバレンタイン前日。もしも明莉がチョコを手作りしたいと言い出さなければバレンタインなんてまるで意識していなかったけど、今年の僕は無駄にバレンタインとチョコ作りに関する知識を得てしまった。
それでも一応は岸本さんの悩みの解決に役立ったから全く無駄だったわけではない。明莉を手伝える時点で無駄かどうかなんて考えていないけど。
「りょうちゃんは誰かからチョコ貰う予定あるの?」
そんな明莉はチョコを入れるラッピングの準備をしながらそう聞いてきた。ラッピングについては僕が心配なんてすることなく手際よく準備しているから不思議なものである。
いや、その前に明莉はなんて質問をしているんだ。そんなの男子に聞いていい質問じゃない。
「……ないけど」
「ええっ!? ないの!? あれだけ仲の良い女子がいるって言ってたのに!?」
「あ、あれだけって言われるほど主張していた覚えはないぞ。それに貰う予定なんて立てられるもんじゃないと思うけど」
「事前にチョコ欲しーいって言っておけばいいじゃん」
「それでくれるなら苦労しないよ」
「りょうちゃん、苦労してたんだ……なんかごめんね、あかりのチョコ作りに付き合わせて……」
明莉はわざとらしくそう言う。完全に言葉狩りされているので、これから何を言っても僕がチョコを貰えないことを哀れむ空気にされてしまいそうだ。
「別に明莉の件は関係ないよ。それにチョコで言うなら先日貰えたようなものだから」
「2年生の先輩から貰ったやつ? あれはお土産だからノーカンでしょ」
「それはわかってるって。僕が言いたいのはチョコには困ってないってこと。これからは明莉もチョコを作れるようになったわけだし」
「いやぁ、あかりが次にチョコを溶かすのは2年後になると思うよ。普段は買って食べた方が美味しいし」
残念ながら今回のことで明莉が料理の楽しさに目覚めることはなかったようだ。まぁ、僕も作り方は頭に入ったけど、バレンタイン的なタイミングがなければわざわざ既製品を溶かして別のチョコを作ることはないと思う。
「でも、残念だなー」
「えっ? 何が?」
「だって、りょうちゃんがチョコに困ってないならあかりの手作りもわざわざ渡す必要はなくなっちゃうってことだから」
「う、嘘付きました! 困ってます! いや、いくらあっても困らないです!」
「そ、そこまで喰いつかれるとちょっと引いちゃうんだけど……」
そう言われた僕はすぐに明莉へ釈明を始める。つい明莉からチョコを貰える事実が嬉しくて前のめりになってしまった。
「というか、りょうちゃんは事前に一緒に作って味見してるわけだし、本当にいらない可能性もあるなぁと思ってたんだけど、そうでもないの?」
「明莉が作ったものってところに価値があるんじゃないか。いや、変な意味じゃないぞ?」
「わからなくはないけど……まぁ、いいか。それじゃあ、りょうちゃんにもハッピーバレンタインデーということで」
明莉はそう言いながらラッピングを終えたチョコをその場で手渡す。
「今くれるのか」
「明日にしても仕方ないしね。りょうちゃんが一番乗りということで」
「ありがとう、明莉」
「これでホワイトデーの伏線は張った!」
「それが真の狙いか……でも、素直に嬉しいよ。ひと足早く貰えるなんて思ってなかった」
「でしょでしょ? ついでに味見してくれてもいいよ?」
「……大切に食べようと思っていたのに」
今回のバレンタインはどこまで行っても明莉に振り回される。でも、明莉の手作り生チョコ自体は非常に美味しくできていたので、手伝ってきた僕としては安心できた。
ただ、この一週間ちょっとで味見やお土産を含めてチョコを食べ過ぎていて、口の中に甘さが残っている気がするから……チョコに困っていないのは別に強がりじゃないかもしれないと思った。
それでも一応は岸本さんの悩みの解決に役立ったから全く無駄だったわけではない。明莉を手伝える時点で無駄かどうかなんて考えていないけど。
「りょうちゃんは誰かからチョコ貰う予定あるの?」
そんな明莉はチョコを入れるラッピングの準備をしながらそう聞いてきた。ラッピングについては僕が心配なんてすることなく手際よく準備しているから不思議なものである。
いや、その前に明莉はなんて質問をしているんだ。そんなの男子に聞いていい質問じゃない。
「……ないけど」
「ええっ!? ないの!? あれだけ仲の良い女子がいるって言ってたのに!?」
「あ、あれだけって言われるほど主張していた覚えはないぞ。それに貰う予定なんて立てられるもんじゃないと思うけど」
「事前にチョコ欲しーいって言っておけばいいじゃん」
「それでくれるなら苦労しないよ」
「りょうちゃん、苦労してたんだ……なんかごめんね、あかりのチョコ作りに付き合わせて……」
明莉はわざとらしくそう言う。完全に言葉狩りされているので、これから何を言っても僕がチョコを貰えないことを哀れむ空気にされてしまいそうだ。
「別に明莉の件は関係ないよ。それにチョコで言うなら先日貰えたようなものだから」
「2年生の先輩から貰ったやつ? あれはお土産だからノーカンでしょ」
「それはわかってるって。僕が言いたいのはチョコには困ってないってこと。これからは明莉もチョコを作れるようになったわけだし」
「いやぁ、あかりが次にチョコを溶かすのは2年後になると思うよ。普段は買って食べた方が美味しいし」
残念ながら今回のことで明莉が料理の楽しさに目覚めることはなかったようだ。まぁ、僕も作り方は頭に入ったけど、バレンタイン的なタイミングがなければわざわざ既製品を溶かして別のチョコを作ることはないと思う。
「でも、残念だなー」
「えっ? 何が?」
「だって、りょうちゃんがチョコに困ってないならあかりの手作りもわざわざ渡す必要はなくなっちゃうってことだから」
「う、嘘付きました! 困ってます! いや、いくらあっても困らないです!」
「そ、そこまで喰いつかれるとちょっと引いちゃうんだけど……」
そう言われた僕はすぐに明莉へ釈明を始める。つい明莉からチョコを貰える事実が嬉しくて前のめりになってしまった。
「というか、りょうちゃんは事前に一緒に作って味見してるわけだし、本当にいらない可能性もあるなぁと思ってたんだけど、そうでもないの?」
「明莉が作ったものってところに価値があるんじゃないか。いや、変な意味じゃないぞ?」
「わからなくはないけど……まぁ、いいか。それじゃあ、りょうちゃんにもハッピーバレンタインデーということで」
明莉はそう言いながらラッピングを終えたチョコをその場で手渡す。
「今くれるのか」
「明日にしても仕方ないしね。りょうちゃんが一番乗りということで」
「ありがとう、明莉」
「これでホワイトデーの伏線は張った!」
「それが真の狙いか……でも、素直に嬉しいよ。ひと足早く貰えるなんて思ってなかった」
「でしょでしょ? ついでに味見してくれてもいいよ?」
「……大切に食べようと思っていたのに」
今回のバレンタインはどこまで行っても明莉に振り回される。でも、明莉の手作り生チョコ自体は非常に美味しくできていたので、手伝ってきた僕としては安心できた。
ただ、この一週間ちょっとで味見やお土産を含めてチョコを食べ過ぎていて、口の中に甘さが残っている気がするから……チョコに困っていないのは別に強がりじゃないかもしれないと思った。
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