315 / 942
1年生3学期
2月12日(土)晴れ 明莉との日常その35
しおりを挟む
三連休二日目かつバレンタインが明後日に迫った土曜日。この日の明莉が帰って来た15時頃に本番のチョコを作り始めることになる。仮に今日の出来が悪かったとしても明日を予備日にしておけば何とか間に合うからだ。
そして、この前のお試しの時は僕もそこそこ手伝ったけど、今回は明莉自身が作る必要があるから僕は見守る役になる。
「りょうちゃん……最初のチョコ刻むのって包丁じゃないとダメ?」
「ま、まぁ、溶かせればいいとは思うけど、一応挑戦してみたら?」
「あかりの血液が混ざった魔の生チョコが完成しちゃうかもしれないよ?」
「こわいこと言わないで。ゆっくり切ればいけるから」
明莉は決して手先が不器用なわけではないし、怖がりなわけでもないけど、料理に関して言えば恐怖心や面倒くささが勝ってしまうらしい。
それなのに今回手作りチョコに挑むのはやはり周りに合わせるためなのだろうか。
そんな明莉は何とか下準備を終えると、次は刻んだチョコに鍋で温めた生クリームと混ぜ合わせて完全に溶かす工程に移っていく。
今回の生チョコ作りで一番大変なのはこの部分……というかこの作業が全てと言える。既存品のチョコと生クリームを使えば味のベースは完成しているし、この後は冷蔵する時間になるので難しい作業はほとんどないと言っていい。
「生クリーム、温まったかな……あっつ!」
「いきなり鍋に触ったら駄目じゃないか!? ミトン付けて!」
「それで、これをさっきのチョコ……あれ? 鍋とボウルのどっちに入れるんだっけ?」
「ボウルだよ。別に暗記テストじゃないんだから一旦止まってレシピ確認すればいいから」
「いやぁ、そこはりょうちゃんに任せようかなぁと」
明莉はそう言いながら鍋の方にチョコを入れようとしていたので、僕は「ストップ!」と大きな声を出す。
「ごめんごめん。でも、最終的に溶かすんだからどっちに入れても一緒じゃない?」
「そうかもしれないけど、何事も最初はレシピ通りにやるのが一番いいの。それで上手くできなかったら元も子もないだろう?」
「さすがりょうちゃん、料理担当だけあるね」
普段なら明莉に褒められると無条件に嬉しいけど、今回ばかりは少し心配になった。
これはシスコンだからひいき目に見ているとかじゃなくて、普段の明莉はこんなにポンコツではない。
だけど、割と工程が少ないこの生チョコ作りでもひやひやしてしまうのは、明莉と料理が何か根本的な部分で噛み合わないせいだと思う。
その後はなるべく口を出すまいと思っていたけど、レシピから逸れそうになる度に僕は注意することになった。一応、作業には一切手を出していないので、音声ガイドに従って作っていったと考えれば明莉の手作りと言えるものだろう。
「あとは1時間ほど待つだけだよね! 終わったー!」
「お、おめでとう……って、まだ切り分けと最後のトッピングが残ってるぞ。砂糖やココアパウダーをまぶすか、それともオリジナルにするか」
「忘れてないって。オリジナル要素にするなら……ゴマとかかけてみる?」
「不味くはならないと思うけど、よりによって本番前にそれ試していくの……?」
「意外と美味しいかもしれないし。大丈夫、人数分は残すから!」
その言い方からして、明莉は今日作るまでトッピングのことは何も考えていなかったようだ。
それから切り分けやトッピングでも危ない場面はあったけど、明莉はバレンタインの手作りチョコを完成させた。
やり切った明莉は嬉しそうに完成品を冷蔵庫へ納める中、明莉以上に疲れている僕を見て母さんは「お疲れ」と声をかけてくれる。
たぶん、母さんが教えた方が明莉をもっと上手く誘導できたと思うけど、平日忙しい中でそれまで任せるのは忍びないので、これで良かったのだと思う。
そして、この前のお試しの時は僕もそこそこ手伝ったけど、今回は明莉自身が作る必要があるから僕は見守る役になる。
「りょうちゃん……最初のチョコ刻むのって包丁じゃないとダメ?」
「ま、まぁ、溶かせればいいとは思うけど、一応挑戦してみたら?」
「あかりの血液が混ざった魔の生チョコが完成しちゃうかもしれないよ?」
「こわいこと言わないで。ゆっくり切ればいけるから」
明莉は決して手先が不器用なわけではないし、怖がりなわけでもないけど、料理に関して言えば恐怖心や面倒くささが勝ってしまうらしい。
それなのに今回手作りチョコに挑むのはやはり周りに合わせるためなのだろうか。
そんな明莉は何とか下準備を終えると、次は刻んだチョコに鍋で温めた生クリームと混ぜ合わせて完全に溶かす工程に移っていく。
今回の生チョコ作りで一番大変なのはこの部分……というかこの作業が全てと言える。既存品のチョコと生クリームを使えば味のベースは完成しているし、この後は冷蔵する時間になるので難しい作業はほとんどないと言っていい。
「生クリーム、温まったかな……あっつ!」
「いきなり鍋に触ったら駄目じゃないか!? ミトン付けて!」
「それで、これをさっきのチョコ……あれ? 鍋とボウルのどっちに入れるんだっけ?」
「ボウルだよ。別に暗記テストじゃないんだから一旦止まってレシピ確認すればいいから」
「いやぁ、そこはりょうちゃんに任せようかなぁと」
明莉はそう言いながら鍋の方にチョコを入れようとしていたので、僕は「ストップ!」と大きな声を出す。
「ごめんごめん。でも、最終的に溶かすんだからどっちに入れても一緒じゃない?」
「そうかもしれないけど、何事も最初はレシピ通りにやるのが一番いいの。それで上手くできなかったら元も子もないだろう?」
「さすがりょうちゃん、料理担当だけあるね」
普段なら明莉に褒められると無条件に嬉しいけど、今回ばかりは少し心配になった。
これはシスコンだからひいき目に見ているとかじゃなくて、普段の明莉はこんなにポンコツではない。
だけど、割と工程が少ないこの生チョコ作りでもひやひやしてしまうのは、明莉と料理が何か根本的な部分で噛み合わないせいだと思う。
その後はなるべく口を出すまいと思っていたけど、レシピから逸れそうになる度に僕は注意することになった。一応、作業には一切手を出していないので、音声ガイドに従って作っていったと考えれば明莉の手作りと言えるものだろう。
「あとは1時間ほど待つだけだよね! 終わったー!」
「お、おめでとう……って、まだ切り分けと最後のトッピングが残ってるぞ。砂糖やココアパウダーをまぶすか、それともオリジナルにするか」
「忘れてないって。オリジナル要素にするなら……ゴマとかかけてみる?」
「不味くはならないと思うけど、よりによって本番前にそれ試していくの……?」
「意外と美味しいかもしれないし。大丈夫、人数分は残すから!」
その言い方からして、明莉は今日作るまでトッピングのことは何も考えていなかったようだ。
それから切り分けやトッピングでも危ない場面はあったけど、明莉はバレンタインの手作りチョコを完成させた。
やり切った明莉は嬉しそうに完成品を冷蔵庫へ納める中、明莉以上に疲れている僕を見て母さんは「お疲れ」と声をかけてくれる。
たぶん、母さんが教えた方が明莉をもっと上手く誘導できたと思うけど、平日忙しい中でそれまで任せるのは忍びないので、これで良かったのだと思う。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
彼女は、2.5次元に恋をする。
おか
青春
椿里高校の商業科1年、椋輪 蓮(むくわ れん)。
ある日の放課後、蓮は教室で『孤高の秀才』小石 輝(こいし てる)と遭遇し——!?
笑あり涙あり(あるのか?)の青春ラブコメディー。
サマネイ
多谷昇太
青春
1年半に渡って世界を放浪したあとタイのバンコクに辿り着き、得度した男がいます。彼の「ビルマの竪琴」のごとき殊勝なる志をもって…? いや、些か違うようです。A・ランボーやホイットマンの詩に侵されて(?)ホーボーのように世界中を放浪して歩いたような男。「人生はあとにも先にも一度っきり。死ねば何もなくなるんだ。あとは永遠の無が続くだけ。すれば就職や結婚、安穏な生活の追求などバカらしい限りだ。たとえかなわずとも、人はなんのために生きるか、人生とはなんだ、という終極の命題を追求せずにおくものか…」などと真面目に考えては実行してしまった男です。さて、それでどうなったでしょうか。お釈迦様の手の平から決して飛び立てず、逃げれなかったあの孫悟空のように、もしかしたらきついお灸をお釈迦様からすえられたかも知れませんね。小説は真実の遍歴と(構成上、また効果の上から)いくつかの物語を入れて書いてあります。進学・就職から(なんと)老後のことまでしっかり目に据えているような今の若い人たちからすれば、なんともあきれた、且つ無謀きわまりない主人公の生き様ですが(当時に於てさえ、そして甚だ異質ではあっても)昔の若者の姿を見るのもきっと何かのお役には立つことでしょう。
さあ、あなたも一度主人公の身になって、日常とはまったく違う、沙門の生活へと入り込んでみてください。では小説の世界へ、どうぞ…。
陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜
136君
青春
俺に青春など必要ない。
新高校1年生の俺、由良久志はたまたま隣の席になった有田さんと、なんだかんだで同居することに!?
絶対に他には言えない俺の秘密を知ってしまった彼女は、勿論秘密にすることはなく…
本当の思いは自分の奥底に隠して繰り広げる青春ラブコメ!
なろう、カクヨムでも連載中!
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330647702492601
なろう→https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n5319hy/
18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした
田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。
しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。
そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。
そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。
なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。
あらすじを読んでいただきありがとうございます。
併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。
より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!
檸檬色に染まる泉
鈴懸 嶺
青春
”世界で一番美しいと思ってしまった憧れの女性”
女子高生の私が、生まれてはじめて我を忘れて好きになったひと。
雑誌で見つけたたった一枚の写真しか手掛かりがないその女性が……
手なんか届かくはずがなかった憧れの女性が……
いま……私の目の前ににいる。
奇跡的な出会いを果たしてしまった私の人生は、大きく動き出す……
物理部のアオハル!!〜栄光と永幸の輝き〜
saiha
青春
近年、高校総体、甲子園と運動系の部活が学生を代表する花形とされている。そんな中、普通の青春を捨て、爪楊枝一本に命をかける集団、物理部。これは、普通ではいられない彼らの爆笑アオハル物語。
【アルファポリスで稼ぐ】新社会人が1年間で会社を辞めるために収益UPを目指してみた。
紫蘭
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスでの収益報告、どうやったら収益を上げられるのかの試行錯誤を日々アップします。
アルファポリスのインセンティブの仕組み。
ど素人がどの程度のポイントを貰えるのか。
どの新人賞に応募すればいいのか、各新人賞の詳細と傾向。
実際に新人賞に応募していくまでの過程。
春から新社会人。それなりに希望を持って入社式に向かったはずなのに、そうそうに向いてないことを自覚しました。学生時代から書くことが好きだったこともあり、いつでも仕事を辞められるように、まずはインセンティブのあるアルファポリスで小説とエッセイの投稿を始めて見ました。(そんなに甘いわけが無い)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる