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1年生3学期

2月6日(日)雪のち晴れ 大倉伴憲との日常その11

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 昨日から続いて朝は粉雪舞う日曜日。生チョコの方はとりあえず完成したけど、初めてやったせいか想定された時間よりもかかってしまった。そう考えると、やっぱり手作りチョコは手間がかかると思う。

「それで、明莉が嘘を付いているとは思いたくないんだけど、もしかしてついでにそういう目的にがあったりするのかなぁと……大倉くんはどう思う?」

『ぼ、ボクに聞かれても……』

 ごもっともな返しをされて僕は「ごめん」と謝る。昼過ぎから今日も通話を繋いでゲームをしている中、僕から出てくる話題はここ数日のバレンタインチョコの話とそれに関わることばかりだった。

『お、女の子のきょうだいがいればまだ何か言えるかもしれないけど、ボクの周りは親戚含めて男子ばかりだし、バレンタインの事情はさっぱりだよ』

「そうか……」

『う、産賀くん的には仮に妹さんが本命チョコをあげるようなことがあったら……』

「やっぱりあるの!?」

『た、たとえ話だから! あったら嫌だと思うの?』

 大倉くんの質問は妹がいないからこその純粋な疑問だった。それに対する答えは僕の言動からにじみ出ている気もするけど、改めて考えながら言葉を返す。

「嫌じゃないと言えば嘘になるけど、明莉がそう思ってるのなら応援したい気持ちもある。だから、もしも、仮に、万が一そういう目的があるなら話してくれてもいいんじゃないかとも思ってて」

『話したら応援できる?』

「確約はできないけど、応援するつもりだよ。それで兄を頼ってくれてるなら嬉しいものだし」

『娘の結婚相手を迎えるお父さんみたいな感じになってるんだね。い、妹がいたらそんな風に思うのかなぁ』

「……いや、僕は信じられないけど、仲が悪い兄弟姉妹はいるものだし、自分で言っておいてなんだけど、僕は少し引っ付き過ぎてる感じはする」

 大倉くんの意見を聞いて自分を振り返ると尚更そう思った。今回の件で言えばあるかどうかわからないことまで心配しているのだからなかなか重症だ。

『あ、あの、産賀くん。また、たとえ話にはなるけど、仮に妹さんにそういう相手がいてチョコを受け取って貰えてもすぐに話が進むわけじゃないから、まだ言いたくないっていうのもあるかもしれない』

「……なるほど」

『も、もちろん、仮の話なんだけどね! ボクは妹さんの話聞いているようで全部知ってるわけじゃないから』

「ううん。ありがとう、大倉くん。ちょっと気になってから他の人の意見が聞けて良かったよ」

『ぼ、ボクの意見はだいたいアニメとか漫画とかの受け売りだけどね』

「それでもだよ。じゃあ、次は……仮に彼氏ができた時ってどうしよう? 一発殴っとくべき?」

『いつの時代の父親……?』

 さすがに最後の発言は本気じゃないけど、そういう冗談を言えるくらいには今回の件を整理できた。大倉くんにはこういう相談もしやすいから本当に感謝している。

 急なバレンタインの手作りチョコがどんな結果を招くかはわからないけど、僕としては明莉が一番喜べるようであればそれでいいと思った。
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