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1年生3学期

2月1日(火)晴れのち曇り ソフィアと藤原その6

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 2月が始まる火曜日。今日も創作を進める一方で、僕はここでもバレンタインチョコについての情報を集めることにした。
 もちろん、枕詞に「妹に頼まれたんですけど」を付けているのでチョコを欲しがる奴には見えていないと思うけど、代わりに明莉がチョコを手伝わせることが狭い範囲で広まってしまった。ここから中学まで噂が届くことはないだろうけど、明莉にはちょっとだけ申し訳ごない。

「手作りチョコかぁー あんまり作ったことないかも。森ちゃん部長は?」

「ないねー 何ならチョコ交換を忘れるレベル」

 そんな中で、意外なことに文芸部内では手作りチョコ派でない人が結構いた。仮に僕がその立場になったら……というか、今絶賛作る立場になって思うことは、考えることが多くて面倒くさいところもあるから納得できる。

「結局身内で交換するなら既に出来上がってる美味しいチョコがいいって思っちゃうし。でも、男子的には手作りの方がいいんでしょ?」

「いや、僕はこだわりないですけど」

「へー そんな台詞いつか誰かからも聞いたな~」

 そう言ったソフィア先輩が目線を向けたのは藤原先輩だった。僕は素直にそう思って言ったけど、他の誰に聞いてもそれに似た答えになるはずだ。絶対手作りの方がいいと言えるのは貰える自信があるヤツだけだど思う。

 すると、森本先輩が僕に向けてこっそりと手招きする。

「……実はさー 去年のバレンタインにソフィアが初めて手作りチョコに挑戦したんだよー」

「おお。だから、あんまりって話だったんですか」

「そうそうー でもね、その手作りした流れでシュート君にさっきみたいな男子は~の質問したら、ウーブ君が言ったような感じの答えが返ってきてねー それがほんのちょっとでも嬉しいって言えば良かったものの、シュート君が感情籠ってない感じだったから……」

 森本先輩はそこから先を敢えて言わず、ソフィア先輩の方を見る。

 それが意味することは恐らく……ソフィア先輩の感情と藤原先輩の態度が噛み合わなくて変な空気になってしまったのだろう。さっきは誰でも僕みたいな答えになると言ってしまったけど、これは空気が読めてないヤツの答え方だったのかもしれない。

「な、なんか、すみません……藤原先輩。僕のせいで余計な話蒸し返しちゃって」

「……大丈夫。だいたい……オレが悪い」

 森本先輩との話を終えた後、謝罪しに行くと藤原先輩はそう言った。

「……言葉選びは難しい。あの時も……無難な答えを……選んだつもりだった」

「わ、わかります。思わぬ誤解を招くことありますよね……」

「……産賀くんは……そういうところは……大丈夫そうだと……思ってた」

「えっ? 全然そんなことないですよ。むしろ、後に引きずるタイプで……」

「……わかる。一週間ぐらい……引きずる」

 思わぬネガティブトークで合致した僕と藤原先輩はそのまま愚痴っぽい話題で盛り上がってしまった。

 しかし、よくよく思い返してみると、去年のバレンタイン時点でソフィア先輩が藤原先輩にそこまで働きかけているのは驚きだし、反省する藤原先輩もその意図を汲み取っているような気がするのは……むずがゆい話である。
 今年のバレンタインは二人の間に何か起こるのだろうか、と野次馬的な気持ちはここに記して口に出さないことにした。
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