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1年生3学期
1月30日(日)曇り 明莉との日常その33
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1月最後の日曜日。とはいっても何か特別なことをするわけではなく、家でのんびりと過ごしていた。
「りょうちゃん。男子ってバレンタインのチョコはどれくらいの甘さがいいのかな?」
「甘さかぁ。人によるとは思うけど……えっ!?」
そんなのんびり具合が一気に吹っ飛ぶ話題を明莉が振ってくる。
「あ、明莉、男子にチョコあげるの!?」
「いや、バドミントン部、基本練習は別だけど男子もいるし、今年はあげてやらんこともないと思って」
「な、なんだそういうことか……」
「全くりょうちゃんは早とちりなんだからー」
そう言われても明莉からそういう相談を受けると思ってなかったから驚いてしまったのだ。でも、昨日の件も含めて最近の僕の思考はそちら寄りになっているようだ。
「ごめんごめん。でも、去年は別にあげてなかったのに今年はあげるのか」
「何か今年は他の女子がやる気みたいだからそうなった。女子間では普通に交換したりしてたけど」
「あー 去年結構買い込んでたな」
「それなんだよ、りょうちゃん。確かにチョコの交換は楽しんだけど、そこそこの人数と交換するからある程度量が必要で、費用がかかっちゃうんだよねー だから、男子の分はまとめて買いたいと思ってて」
さっきの明莉の口ぶりは周りがやるから自分も仕方なくやっているという感じで、兄としては安心だけど、男子としては複雑なものだった。いや、貰えるだけありがたくはあるんだけど。
「そういうわけで、男子の総意をりょうちゃんに聞いてるわけです」
「僕を代表にされると困るけど、普通に甘いやつでいいと思う。僕の周りだと甘いの駄目って言う男子見た事ないし」
「それじゃあ、チロルチョコの詰め合わせ買って配ればいいか……」
「本当に最低限だ。それにしても随分と早く準備するんだな、バレンタイン」
「えっ? 別に早くはないと思うけど? だいたい2週間後だし」
「あっ、そうか。もう2月に入るんだもんなぁ」
「……ところで、りょうちゃん。あかりはもう一つりょうちゃんに言いたいことがあるんだけど」
明莉はなぜか改まって言う。男子にチョコをあげること以外に驚かされるようなことがあるんだろうか。
「あかり、今年の女子用のチョコはちょっと自作しようと思ってるんですよ」
「へぇ、いいじゃないか。僕も教室で手作りチョコ同士で交換してるの見たことあるよ」
「でも、そのチョコって手作りする必要があるじゃない?」
「ん? まぁ、自作なんだからそういう意味だと思うけど…………まさか」
「りょうちゃん、手伝って!」
明莉はスイーツをねだる時のように僕へお願いする。
「はぁ!? いやいや、明莉が作るから自作のチョコになるんじゃないの!?」
「そうは言っても普段の料理担当はりょうちゃんだから、あかりはその手のスキルがないんだよ。だけど、口が滑って手作りチョコの流れに乗っちゃったから……」
「別に今からできないって言えば自作しなくてもよいのでは……?」
「りょうちゃんならわかるでしょ!? そういう時に後から撤回するのはめっちゃ気まずいって!」
それはわからないことはないけど、それと同じくらい手作りチョコ同士の交換のはずなのに他の人の作った物だったというのはどうなのだろうか。夏休みの絵の宿題を親がやってしまうかのような妙な気まずさを感じる。
「全部りょうちゃんに任せるわけじゃないし、あかりも作りたいって気持ちはあるから! ね? お願い、りょうちゃん!」
ただ、可愛い妹にそうお願いされてしまったらよほど悪いことじゃない限り僕は頷いてしまう。
「ありがとう! りょうちゃん! それじゃあ、今年のバレンタインは月曜日だからその前の土日のどっちかで材料買って、一緒に作ってね。あっ、それまでにどういうのがいいかあかりも調べとくけど、りょうちゃんも良さそうなのがあったらレシピ見といて!」
まるで僕が頷くことをわかっていたかのように詳しい流れを伝えられる。最初の男子の話はあくまで前振りで、こっちが本題だったのだ。
こうして、バレンタインだというのに僕がチョコを作る予定ができてしまった。本来のバレンタインは男性からだと聞くし、逆チョコなんて単語もあるくらいだから珍しいことではないんだろうけど、貰うあてもないのに作る方に行ってしまうのは何だか複雑な気持ちだった。
「りょうちゃん。男子ってバレンタインのチョコはどれくらいの甘さがいいのかな?」
「甘さかぁ。人によるとは思うけど……えっ!?」
そんなのんびり具合が一気に吹っ飛ぶ話題を明莉が振ってくる。
「あ、明莉、男子にチョコあげるの!?」
「いや、バドミントン部、基本練習は別だけど男子もいるし、今年はあげてやらんこともないと思って」
「な、なんだそういうことか……」
「全くりょうちゃんは早とちりなんだからー」
そう言われても明莉からそういう相談を受けると思ってなかったから驚いてしまったのだ。でも、昨日の件も含めて最近の僕の思考はそちら寄りになっているようだ。
「ごめんごめん。でも、去年は別にあげてなかったのに今年はあげるのか」
「何か今年は他の女子がやる気みたいだからそうなった。女子間では普通に交換したりしてたけど」
「あー 去年結構買い込んでたな」
「それなんだよ、りょうちゃん。確かにチョコの交換は楽しんだけど、そこそこの人数と交換するからある程度量が必要で、費用がかかっちゃうんだよねー だから、男子の分はまとめて買いたいと思ってて」
さっきの明莉の口ぶりは周りがやるから自分も仕方なくやっているという感じで、兄としては安心だけど、男子としては複雑なものだった。いや、貰えるだけありがたくはあるんだけど。
「そういうわけで、男子の総意をりょうちゃんに聞いてるわけです」
「僕を代表にされると困るけど、普通に甘いやつでいいと思う。僕の周りだと甘いの駄目って言う男子見た事ないし」
「それじゃあ、チロルチョコの詰め合わせ買って配ればいいか……」
「本当に最低限だ。それにしても随分と早く準備するんだな、バレンタイン」
「えっ? 別に早くはないと思うけど? だいたい2週間後だし」
「あっ、そうか。もう2月に入るんだもんなぁ」
「……ところで、りょうちゃん。あかりはもう一つりょうちゃんに言いたいことがあるんだけど」
明莉はなぜか改まって言う。男子にチョコをあげること以外に驚かされるようなことがあるんだろうか。
「あかり、今年の女子用のチョコはちょっと自作しようと思ってるんですよ」
「へぇ、いいじゃないか。僕も教室で手作りチョコ同士で交換してるの見たことあるよ」
「でも、そのチョコって手作りする必要があるじゃない?」
「ん? まぁ、自作なんだからそういう意味だと思うけど…………まさか」
「りょうちゃん、手伝って!」
明莉はスイーツをねだる時のように僕へお願いする。
「はぁ!? いやいや、明莉が作るから自作のチョコになるんじゃないの!?」
「そうは言っても普段の料理担当はりょうちゃんだから、あかりはその手のスキルがないんだよ。だけど、口が滑って手作りチョコの流れに乗っちゃったから……」
「別に今からできないって言えば自作しなくてもよいのでは……?」
「りょうちゃんならわかるでしょ!? そういう時に後から撤回するのはめっちゃ気まずいって!」
それはわからないことはないけど、それと同じくらい手作りチョコ同士の交換のはずなのに他の人の作った物だったというのはどうなのだろうか。夏休みの絵の宿題を親がやってしまうかのような妙な気まずさを感じる。
「全部りょうちゃんに任せるわけじゃないし、あかりも作りたいって気持ちはあるから! ね? お願い、りょうちゃん!」
ただ、可愛い妹にそうお願いされてしまったらよほど悪いことじゃない限り僕は頷いてしまう。
「ありがとう! りょうちゃん! それじゃあ、今年のバレンタインは月曜日だからその前の土日のどっちかで材料買って、一緒に作ってね。あっ、それまでにどういうのがいいかあかりも調べとくけど、りょうちゃんも良さそうなのがあったらレシピ見といて!」
まるで僕が頷くことをわかっていたかのように詳しい流れを伝えられる。最初の男子の話はあくまで前振りで、こっちが本題だったのだ。
こうして、バレンタインだというのに僕がチョコを作る予定ができてしまった。本来のバレンタインは男性からだと聞くし、逆チョコなんて単語もあるくらいだから珍しいことではないんだろうけど、貰うあてもないのに作る方に行ってしまうのは何だか複雑な気持ちだった。
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