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1年生3学期
1月13日(木)曇り時々雪 清水夢愛の願望
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先日から引き続き雪が降って寒さが続く木曜日。自転車通学の僕は朝の凍った道は恐怖でしかなく、ここ数日はいつもより早めに出なければいけない。
「やぁ、良助」
そんな凍った道も完全に溶ける時間帯の放課後。帰ろうとしていた僕は校門で清水先輩と遭遇する。
「お疲れ様です。今日はどうしたんですか?」
「いや、特に何かあったわけじゃないよ。もうちょっと雪が積もればなぁと思いながらボーっとしていたらたまたま良助を見つけたんだ」
「そんな理由でボーっと……というか、これ以上雪が積もったら困りますよ。自転車乗れなくなっちゃいます」
「むしろ朝はよく自転車で来てるな。今日はスケートができそうなくらいツルツルだったぞ」
「目に見えて滑りそうなところは歩いてます。そのせいで早く出なきゃいけないんですけど……」
「なるほどなぁ。私はずっと徒歩だからそういうの気にしてなかった」
そう言われてそういえば清水先輩は自転車に乗れない(正確に言うと補助輪付きなら乗れる)ことを思い出す。確かその話を聞いたのは会ってからそれほど時間が経ってない時なので、かなり懐かしい。
「冬休みも雪の話をしてましたけど、本当に雪遊びしたいんですね」
「それを言うなら良助もまた雪が積もらない方がいいって言ってるな。まぁ、理由はよくわかったが」
「な、なんか、すみません。でも、今日なら少しくらいならできるんじゃないですか? 何をするかにも寄りますけど」
「そう、それなんだよ。今日は雪玉が作れるくらいには雪はあるんだが、小織に雪合戦しようと言ったら「服が濡れるし、降ってる雪は綺麗じゃないから嫌だ」と丁寧に断られてしまったんだ……」
「あー 確かに雪って不純物が混じってるみたいですからね……清水先輩?」
「つまり……良助ならやってくれるのでは?」
清水先輩は期待の目で僕を見つめる。僕もどちらかというと桜庭先輩と同じ感覚はあるけど、話を聞いてしまったからには断りづらい。
「わ、わかりました。ただ、さすがに校内でやるのもあれなんで……」
「だったら、適当な公園まで行こう! なるべく雪があるところ!」
わかりやすくテンションを上げた清水先輩は意気揚々と校門を出て行った。
それから10分後。近場の公園に到着した時点ではパラパラと粉雪が舞っていて、積もるほどの量ではなかったけど、影になっているところにはまだ雪が残っていた。
「……ところで、雪合戦にルールってあるのか?」
「きちんとした場だとあるみたいですけど、基本は単なるぶつけ合いになると思います」
「なるほど。じゃあ、とりあえず始め!」
そう言った清水先輩は即座に足元にある雪をかき集めて、僕の方へ投げつける。その勢いは結構なものだったので、胸の辺りに着弾すると意外にダメージを喰らう感覚があった。
それに対して僕も適当に雪玉を投げつけると……清水先輩はさらりとかわす。そして、すかさず次の玉を投げつけてきた。
はて、僕が今までやってきた雪合戦はこういうものだったろうか? 何というか、もっとお互いに戯れとしてやる感じで楽しむものだった気がする。わかりやす言うなら……キャッキャウフフという感じ。
僕も一瞬そういう絵面になってしまうのではないかと過ったから校内でやらない方がいいと思っていた。
しかし、清水先輩にとっての雪合戦はきちんとした場の方だったのかもしれない。
「良助、全然当てれてないぞ!? そんなんじゃ雪合戦にならないじゃないか!」
「そ、そう言われましても僕は投球力なくて……ぐへっ!」
「あっ、すまん。顔に当たるとは……ふふっ」
「……くそー!」
その一撃からちょっとだけムキになった僕は必死に応戦してみるけど、明らかに僕が被弾した回数の方が多かった。ただ、清水先輩が望んでいた雪遊びとしては正解だったように思う。
「うん、十分堪能した! ありがとう、良助」
「いえいえ。なんだかんだ僕も久しぶりにやって楽しかったです」
「それなら良かった。ただ、もう少し雪が積もっていればもっと面白そうだ。今度はそういうところでもやりたいなぁ……」
それはいつもは一度やるとそれで十分だと言う清水先輩にしては珍しい感想な気がした。確かにもっと積もっていれば縦横無尽に雪玉を補充出来て面白かったかもしれない。
でも、毎日の行き来を考えるとやっぱり雪は控えめがいいと心の中で思った。
「やぁ、良助」
そんな凍った道も完全に溶ける時間帯の放課後。帰ろうとしていた僕は校門で清水先輩と遭遇する。
「お疲れ様です。今日はどうしたんですか?」
「いや、特に何かあったわけじゃないよ。もうちょっと雪が積もればなぁと思いながらボーっとしていたらたまたま良助を見つけたんだ」
「そんな理由でボーっと……というか、これ以上雪が積もったら困りますよ。自転車乗れなくなっちゃいます」
「むしろ朝はよく自転車で来てるな。今日はスケートができそうなくらいツルツルだったぞ」
「目に見えて滑りそうなところは歩いてます。そのせいで早く出なきゃいけないんですけど……」
「なるほどなぁ。私はずっと徒歩だからそういうの気にしてなかった」
そう言われてそういえば清水先輩は自転車に乗れない(正確に言うと補助輪付きなら乗れる)ことを思い出す。確かその話を聞いたのは会ってからそれほど時間が経ってない時なので、かなり懐かしい。
「冬休みも雪の話をしてましたけど、本当に雪遊びしたいんですね」
「それを言うなら良助もまた雪が積もらない方がいいって言ってるな。まぁ、理由はよくわかったが」
「な、なんか、すみません。でも、今日なら少しくらいならできるんじゃないですか? 何をするかにも寄りますけど」
「そう、それなんだよ。今日は雪玉が作れるくらいには雪はあるんだが、小織に雪合戦しようと言ったら「服が濡れるし、降ってる雪は綺麗じゃないから嫌だ」と丁寧に断られてしまったんだ……」
「あー 確かに雪って不純物が混じってるみたいですからね……清水先輩?」
「つまり……良助ならやってくれるのでは?」
清水先輩は期待の目で僕を見つめる。僕もどちらかというと桜庭先輩と同じ感覚はあるけど、話を聞いてしまったからには断りづらい。
「わ、わかりました。ただ、さすがに校内でやるのもあれなんで……」
「だったら、適当な公園まで行こう! なるべく雪があるところ!」
わかりやすくテンションを上げた清水先輩は意気揚々と校門を出て行った。
それから10分後。近場の公園に到着した時点ではパラパラと粉雪が舞っていて、積もるほどの量ではなかったけど、影になっているところにはまだ雪が残っていた。
「……ところで、雪合戦にルールってあるのか?」
「きちんとした場だとあるみたいですけど、基本は単なるぶつけ合いになると思います」
「なるほど。じゃあ、とりあえず始め!」
そう言った清水先輩は即座に足元にある雪をかき集めて、僕の方へ投げつける。その勢いは結構なものだったので、胸の辺りに着弾すると意外にダメージを喰らう感覚があった。
それに対して僕も適当に雪玉を投げつけると……清水先輩はさらりとかわす。そして、すかさず次の玉を投げつけてきた。
はて、僕が今までやってきた雪合戦はこういうものだったろうか? 何というか、もっとお互いに戯れとしてやる感じで楽しむものだった気がする。わかりやす言うなら……キャッキャウフフという感じ。
僕も一瞬そういう絵面になってしまうのではないかと過ったから校内でやらない方がいいと思っていた。
しかし、清水先輩にとっての雪合戦はきちんとした場の方だったのかもしれない。
「良助、全然当てれてないぞ!? そんなんじゃ雪合戦にならないじゃないか!」
「そ、そう言われましても僕は投球力なくて……ぐへっ!」
「あっ、すまん。顔に当たるとは……ふふっ」
「……くそー!」
その一撃からちょっとだけムキになった僕は必死に応戦してみるけど、明らかに僕が被弾した回数の方が多かった。ただ、清水先輩が望んでいた雪遊びとしては正解だったように思う。
「うん、十分堪能した! ありがとう、良助」
「いえいえ。なんだかんだ僕も久しぶりにやって楽しかったです」
「それなら良かった。ただ、もう少し雪が積もっていればもっと面白そうだ。今度はそういうところでもやりたいなぁ……」
それはいつもは一度やるとそれで十分だと言う清水先輩にしては珍しい感想な気がした。確かにもっと積もっていれば縦横無尽に雪玉を補充出来て面白かったかもしれない。
でも、毎日の行き来を考えるとやっぱり雪は控えめがいいと心の中で思った。
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