上 下
258 / 942
1年生2学期

12月17日(金)曇り時々雨 ソフィアと藤原その5

しおりを挟む
 期末テストが全て返却された金曜日。僕の全体の結果としては13教科合計1105点で、赤点も特になかったことから無事に補習を受けずに冬休みを迎えられることになった。

 そんな心に余裕を持ちながら放課後に文芸部の勉強会を終えると、いつも通りの雑談タイムに入った。今日の話題は明日の打ち上げや冬休みに関するものが多い。

「藤原先輩、昨日の朝出た情報見ました?」

「……見た。女の子のキャラデザ……良かった……」

 そんな中、僕と藤原先輩の男子二人はゲームの最新情報について盛り上がっていた。藤原先輩との話す内容はは教室の男子勢と話すようなこととあまり変わらず、部活に関わらない話だとたまにこうやってゲームや漫画の話をしている。他の女子の先輩方もそういう内容を話せる方だけど、内容的には何となく男子同士の方が話しやすい。

「何話してるの?」

 そういう時に容赦なく乗り込んでくるのは主にソフィア先輩だ。別にやましい話はしてないけど、僕と藤原先輩は毎回ドキッとした反応をする。

「げ、ゲームの話です」

「おー もうすぐクリスマスだし、そういうの買う時期だよねー あっ、ウーブ君はクリスマスは何か予定あるの?」

「家で過ごすと思います。例年通り」

「わー、クリスマスらしくていいね! じゃあ……シュウは?」

 一瞬何でそんなこと聞くんですかと思ってしまったけど、どうやら本当に聞きたいのは僕の予定じゃないらしい。いや、これは未だに確定的な情報じゃなくて、今まで見てきたことからの推測でしかない。そういうことで余計なことを考えてはいけないとつい最近も教えられたばかりだ。

「……特にない」

「……そうなんだ」

 二人は意味深な間でやり取りする。いやいや、それでもこれは僕の想像力が豊かなだけだ。同じ空間にいればこういう風な話をすることもあるだろう。

「あのさ、もし……もしもだよ? ソフィアも暇だって言ったらどうする……?」

「………………」

 藤原先輩はすぐに何も言わない。そのせいでこの二人の空間に巻き込まれてしまった僕はどうすればいいかわからなくなってしまう。おかしい。さっきまで僕は藤原先輩とゲームの話で盛り上がっていたのに。

「……なんてね! ソフィアもウーブ君と同じように家族でパーティーしてるから暇じゃないんだけど!」

「……それ、去年も聞いた」

「えー!? だったら、何で早くツッコんでくれなかったのー!?」

「……そう……言われても……」

 笑いながら抗議するソフィア先輩に藤原先輩は態度を変えず答える。それを見た僕は思わず息を吐きだした。本当に何だったんだ今の時間は。

「ウーブくんー……ちょっとー……」

 すると、黒板がある方から森本先輩が小さな声で僕を呼びつけていた。隣にはこちらを窺うようにして水原先輩もいる。

「どうしたんですか?」

「さっきの二人の会話……どうだったー?」

「どうって……クリスマスの話でした」

「それでー!? 結果はー!?」

「なんかボケとツッコミの話で終わりました」

 僕の答えに森本先輩と水原先輩は露骨にがっかりとした。

「産賀、そこはフォロー入れても良かったのに」

「えっ!? さっきの僕が喋っていい空気じゃなかったですよ!?」

「まぁ、それなら仕方ないが……」

「今年も結局何もなしかー いや、明日の打ち上げであるいは……」

「あの……よく知らない僕が言うのも何ですけど、そっとしておいてあげた方がいいんじゃないですか? 今も仲良さそうに話してますし」

 それはほんの少しだけ先輩方を注意する意味も込めていた。もちろん、二人の方が見ている時間が長いからそうとも言えないんだろうけど、僕もそれと似た件で入り込み過ぎたからどうしても言ってしまった。

「まー、スーパーお節介なのはわかってるんだけどねー ほら、あたし達来年は3年で受験生ないし就活生だからさー」

「別にその時期も全く時間がないわけじゃないだろうが、今ほどは暇じゃなくなるだろう。そうすると、あの二人が会う時間も減ってしまうんだ」

「あっ……」

 それに対する森本先輩と水原先輩の言葉は純粋にあの二人を思っているものだった。仮にソフィア先輩と藤原先輩がお互いに意識があっても会う時間がなければ何もなくなってしまう可能性がある。その良し悪しは単純に判断できないけど、外野から見れば勿体ないと感じてしまうものだ。

「すみません。わかったようなこと言って……」

「いや、この場合は産賀の方が正しいよ。結局、私たちがどう思おうが、本人たちの真意はわからないからな」

「しょうがないなー もう少しだけ様子見かー」

 そうやって僕たちが話している間もソフィア先輩と藤原先輩は普段通りのやり取りをしていた。

 男子同士の会話で言えば好きな子の話は出てきそうなものだけど、僕は藤原先輩と会話でそういう話を意図的に避けてきた。
 仮に僕がそういう話を振ることで何か動くとしたら……と少しだけ考えたけど、今の僕にはそうするのが難しい。でも、本当に動くべき時が来たら僕も応援しようと思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛
青春
 俺には二人の容姿端麗な姉がいる。 自慢そうに聞こえただろうか?  それは少しばかり誤解だ。 この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ…… 次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。 外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん…… 「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」 「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」 ▼物語概要 【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】 47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在) 【※不健全ラブコメの注意事項】  この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。  それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。  全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。  また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。 【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】 【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】 【2017年4月、本幕が完結しました】 序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。 【2018年1月、真幕を開始しました】 ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)

学校一の美人から恋人にならないと迷惑系Vtuberになると脅された。俺を切り捨てた幼馴染を確実に見返せるけど……迷惑系Vtuberて何それ?

ただ巻き芳賀
青春
学校一の美人、姫川菜乃。 栗色でゆるふわな髪に整った目鼻立ち、声質は少し強いのに優し気な雰囲気の女子だ。 その彼女に脅された。 「恋人にならないと、迷惑系Vtuberになるわよ?」 今日は、大好きな幼馴染みから彼氏ができたと知らされて、心底落ち込んでいた。 でもこれで、確実に幼馴染みを見返すことができる! しかしだ。迷惑系Vtuberってなんだ?? 訳が分からない……。それ、俺困るの?

俺がカノジョに寝取られた理由

下城米雪
ライト文芸
その夜、知らない男の上に半裸で跨る幼馴染の姿を見た俺は…… ※完結。予約投稿済。最終話は6月27日公開

元婚約者様の勘違い

希猫 ゆうみ
恋愛
ある日突然、婚約者の伯爵令息アーノルドから「浮気者」と罵られた伯爵令嬢カイラ。 そのまま罵詈雑言を浴びせられ婚約破棄されてしまう。 しかしアーノルドは酷い勘違いをしているのだ。 アーノルドが見たというホッブス伯爵とキスしていたのは別人。 カイラの双子の妹で数年前親戚である伯爵家の養子となったハリエットだった。 「知らない方がいらっしゃるなんて驚きよ」 「そんな変な男は忘れましょう」 一件落着かに思えたが元婚約者アーノルドは更なる言掛りをつけてくる。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

せっかく転生したのにモブにすらなれない……はずが溺愛ルートなんて信じられません

嘉月
恋愛
隣国の貴族令嬢である主人公は交換留学生としてやってきた学園でイケメン達と恋に落ちていく。 人気の乙女ゲーム「秘密のエルドラド」のメイン攻略キャラは王立学園の生徒会長にして王弟、氷の殿下こと、クライブ・フォン・ガウンデール。 転生したのはそのゲームの世界なのに……私はモブですらないらしい。 せめて学園の生徒1くらいにはなりたかったけど、どうしようもないので地に足つけてしっかり生きていくつもりです。 少しだけ改題しました。ご迷惑をお掛けしますがよろしくお願いします。

女神と共に、相談を!

沢谷 暖日
青春
九月の初め頃。 私──古賀伊奈は、所属している部活動である『相談部』を廃部にすると担任から言い渡された。 部員は私一人、恋愛事の相談ばっかりをする部活、だからだそうだ。 まぁ。四月頃からそのことについて結構、担任とかから触れられていて(ry 重い足取りで部室へ向かうと、部室の前に人影を見つけた私は、その正体に驚愕する。 そこにいたのは、学校中で女神と謳われている少女──天崎心音だった。 『相談部』に何の用かと思えば、彼女は恋愛相談をしに来ていたのだった。 部活の危機と聞いた彼女は、相談部に入部してくれて、様々な恋愛についてのお悩み相談を共にしていくこととなる──

ミックスド★バス~家のお風呂なら誰にも迷惑をかけずにイチャイチャ?~

taki
恋愛
【R18】恋人同士となった入浴剤開発者の温子と営業部の水川。 お互いの部屋のお風呂で、人目も気にせず……♥ えっちめシーンの話には♥マークを付けています。 ミックスド★バスの第5弾です。

処理中です...