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1年生2学期

12月7日(火)曇り 松永浩太との昔話その6

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 期末テスト2日目。今日は岸本さんが苦手な数Ⅰがあったので、そちらの方が気になりつつもテストをこなしていった(決して余裕ぶっていたわけではない)。

 それからテストを終えるとテスト期間中恒例の松永との帰宅タイムに入る。

「りょーちゃん……明日の日本史でここだけは覚えておけってところある?」

「えっ、珍しい。いつもなら全然勉強してないって言うのに」

「いやぁ、茉奈ちゃんが受験勉強でがんばってるんだから俺もテストくらいしっかりやらないとなぁと思って」

「なんだ惚気か」

「これはセーフでしょ!? それに惚気だとしてもそういう理由でやる気出すならいいことだと思います!」

 猛烈に抗議する松永を見て僕は笑う。でも、松永の言う通りその心がけ自体は非常に良いことだ。

「とはいっても僕は日本史を教えられるほど暗記が得意なわけじゃないからなぁ。そもそも松永は暗記系得意なんだからそこは心配ないんじゃない?」

「そっか。じゃあ、勉強は帰ってからやるとして普通に駄弁りますか」

「ちょっとだけ感心した僕の気持ちを返せ」

「まぁ、いいじゃないの。帰ってからやる気はあるんだから」

 そんな風に言うからにはいつも通り補講にならない程度の点数を取るのだろう。このむらっけが無ければ文武両道と言えるのに、敢えてそうしないは良く言えば松永らしさだ。

「そういえばさ、この前ネットの記事で取り上げられたんだけど、りょーちゃんはいつからサンタの捜索始めてた?」

「サンタの捜索?」

「あ、正確に言うと家の中に隠しあるプレゼントの捜索。これはネタバレなんだけど……実はサンタって親なんだよね」

「知ってるよ。でも、プレゼントの捜索はしたことないかも」

「そうなの? それは純粋に信じてたから? それとも親に気を遣ってたから?」

「どちらかと言えば親かな。ほら、うちは明莉がいるから」

「あー、そういうことね! どうりでこの時期にめっちゃ話してそうな話題なのにりょーちゃんとは話したことなかったわけだ。俺も明莉ちゃんと会うタイミング結構あったろうし」

「そうそう。親に正体を明かされたのは小5の時だったけど、その時に明莉は小3だったから2年くらいは話を合わせてたかな」

「じゃあ、りょーちゃんは親がサンタかもって察し始めたのはいつ頃?」

「僕は小3の時だった。クリスマス当日眠れなかった時に両親が何かしてると思ってからもしかしたら……って思い始めたよ」

「俺は小2だったなぁ。親戚のちょっと年上の人から教えられてその時から早くプレゼントが欲しかったから探すようになった」

「それで見つかったの?」

「いや、さっぱりだった。それで小4の頃に探しているの気付かれたから「クリスマスまで待ちなさい!」って言われてその流れでバラされた感じ」

「なるほどね。僕も知ってからは明莉の欲しい物がどこに売ってるか聞かれることがあったけど、買った後にどこへ隠してるかは聞いたことなかった」

 そう言いながら自分の家の中で隠せそうな場所を思い浮かべてみるけど……たぶん今の僕が考えられる範囲でもプレゼントは見つかることはないと何となく思った。松永も含めて子どもが考えそうなことは両親ならお見通しなのだろうから。

「でも、気付いている頃はだいたい同じだからりょーちゃんが話を合わせてた頃に案外明莉ちゃんも察してたりして」

「ありそうだ。自分では何も言ってないつもりだけど、知ってる奴の言い方になってたかもしれない」

「二人で協力したら先にプレゼント見つかってたかもしれないのにー」

「それ思ったんだけど、仮にプレゼント見つけたとして先に開けられるかな?」

「……確かに。さすがに親に申し訳ないと思って開けない……いや、当時の幼き心ならあるいは……?」

「幼き心って言うより悪ガキじゃない?」

「ひどい! あの頃は純粋に冒険とロマンを求めて探してたのに!」

 今となっては枕元にプレゼントを置かれることはなくなってしまったけど、正体を知った後でも朝起きた時にプレゼントがあるというのはワクワク感があった。
 何故サンタがいると偽る必要があるのかと疑問に思う人もいるだろうけど、朝起きるとプレゼントがあることやその直前にプレゼントを探し出そうとすることはサンタの存在がなければ起きなかったことになる。
 そういう普段は体験できないワクワクを子どもの頃に楽しませる意味でサンタの文化はあるのかもしれない。現に少し成長した僕たちは未だにその話で盛り上がれるのだ。

 ……と、すっかりテストのことを忘れて僕も話してしまったので、松永との別れ際には「伊月さんのためにもあと3日がんばろう」と尻を叩いておいた。
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