241 / 942
1年生2学期
11月30日(火)曇りのち雨 グループ名は難しい
しおりを挟む
11月最終日。テスト週間になったことで部活は停止されたので放課後に部活はなかったけど、僕は学校に居残ることになる。テスト前恒例になりつつある岸本さんからのテスト勉強のお誘いがあったからだ。
今日は図書室へ集まることになったので僕が向かうと、岸本さんと一緒に花園さんも待っていた。
「二人ともお疲れ」
「産賀くんも。テストの度に教えて貰って申し訳ないけど、こうやって誰かと勉強してる方がわからないところもできている気がするから」
「全然構わないよ。昨日教科書を貸して貰ったお返しということで」
「それならわたしはもっと前に色々して貰ったお返しをしてないから、今度またお返しを……」
「無限ループになりそうなのでそこまでにして貰っていいですか? ちなみに華凛は貸し借りは関係なしに遠慮なく二人へ教えを乞います」
何故か誇らしげに花園さんは言う。教えられる側の態度とは思えないけど、これくらい遠慮がない方がむしろ気持ちいいのかもしれない。
「もちろん、花園さんの方もできる限り協力するよ。それじゃあ……」
「ちょ、ちょっと待って。中に入る前に二人へ言いたいことがあるの」
岸本さんは何かありげな空気を出しながら僕と花園さんを呼び止める。この大事を言いそうな雰囲気の時の岸本さんは恐らく拍子抜けする感じのことを言う。
「実は……三人のグループを作ってみようと思っているのだけど」
「なるほど」
「そういう話だと思っていました」
「えっ? 二人とも何で予想が当たったみたいな顔をしているの……? わたしがそんなにグループを作りたそうな空気出てた……?」
それは花園さんの方も察していたようだ。でも、内容までは予想できないからこれはまた意外な提案だった。
「グループってLINEのだよね。別にいいけど……この三人で共有すべきことってある?」
「ほら、こうやってテスト勉強したりする時とか、たまに遊びに行ったりする時とか……」
「別にミチちゃんが間を取ってくれるので問題ないかと。作ったらそれほど使わなくて後悔するタイプのグループだと思います」
「それは……やっぱりそうだよね。ごめん、変なこと言って……」
想像以上にテンションが下がってしまった岸本さんを見て、僕と花園さんは「しまった」という表情をする。
花園さんがどう思っているかわからないけど、僕はLINEのグループというものが少々苦手というか、使い道がわからないと思っている。確かに複数人への連絡は便利だと思うけど、一度入ると何だか抜け出しづらいし、全く関係のない話でいちいち通知が来るのが億劫なのだ。
だから、むやみやたらに増やさない方がいいと思うけど……この場においてそれは空気が読めていなかった。たぶん、岸本さんは特別話したいことがあるうんぬんではなく、一つの機能として使ってみたかったんだ。
「いえ、やっぱり作ってもいいと思います。華凛も今後二人同時に連絡を寄越さなければならないようなシチュエーションがある気がしてきました」
「僕もそう思う! 今後もテスト勉強で集まる時があれば便利だし」
「……本当に作ってもいい?」
僕と花園さんは必死に頷く。それを見た岸本さんはスマホを操作し始めた。
「これで……二人を招待したから」
「うん。入れたよ」
「華凛も問題なく」
「ありがとう。それとついでに二人も連絡先を交換しておいたらいいと思うのだけれど」
「あー……そうだね。じゃあ、花園さんにメッセージ送るよ」
「ブロックします」
「ええっ!?」
「冗談です。まぁ、リョウスケに関しては特に連絡することはありませんが」
そんな僕と花園さんのやり取りを見て、岸本さんは嬉しそうに笑った。
そこで僕が気付いた……というよりは勝手に予想したことにはなるけど、岸本さんは僕と花園さんに繋がって欲しかったのではないかと思った。僕個人としては花園さんとも友達になっているつもりで、恐らく花園さんもそう思ってくれているだろうけど、昨日の通り連絡先は知らない仲でもあった。
それが岸本さんからすると、少しだけ気になってしまう距離間だったのかもしれない。もちろん、交換したところで僕と花園さんが急にもっと仲良くなることはないけど、そういう安心感が欲しいのは何となくわかる。
「長引かせてごめんね。ここからは切り替えていくから」
「はい。ですが、この1年生グループ(仮)のままだと格好が付かないと思うのですが」
「じゃあ、どういうグループ名がいい? 三人の要素を合わせるとなると……」
なんてことを考えてみたけど、単に岸本さんがグループを作りたかったと考える方が正解なんだろう。この日の勉強が終わった帰り道でも楽しそうにグループ名を考えていた。ちなみに最終的には「ハナミチwithU」という僕が外部参加したみたいなグループ名になった。
今日は図書室へ集まることになったので僕が向かうと、岸本さんと一緒に花園さんも待っていた。
「二人ともお疲れ」
「産賀くんも。テストの度に教えて貰って申し訳ないけど、こうやって誰かと勉強してる方がわからないところもできている気がするから」
「全然構わないよ。昨日教科書を貸して貰ったお返しということで」
「それならわたしはもっと前に色々して貰ったお返しをしてないから、今度またお返しを……」
「無限ループになりそうなのでそこまでにして貰っていいですか? ちなみに華凛は貸し借りは関係なしに遠慮なく二人へ教えを乞います」
何故か誇らしげに花園さんは言う。教えられる側の態度とは思えないけど、これくらい遠慮がない方がむしろ気持ちいいのかもしれない。
「もちろん、花園さんの方もできる限り協力するよ。それじゃあ……」
「ちょ、ちょっと待って。中に入る前に二人へ言いたいことがあるの」
岸本さんは何かありげな空気を出しながら僕と花園さんを呼び止める。この大事を言いそうな雰囲気の時の岸本さんは恐らく拍子抜けする感じのことを言う。
「実は……三人のグループを作ってみようと思っているのだけど」
「なるほど」
「そういう話だと思っていました」
「えっ? 二人とも何で予想が当たったみたいな顔をしているの……? わたしがそんなにグループを作りたそうな空気出てた……?」
それは花園さんの方も察していたようだ。でも、内容までは予想できないからこれはまた意外な提案だった。
「グループってLINEのだよね。別にいいけど……この三人で共有すべきことってある?」
「ほら、こうやってテスト勉強したりする時とか、たまに遊びに行ったりする時とか……」
「別にミチちゃんが間を取ってくれるので問題ないかと。作ったらそれほど使わなくて後悔するタイプのグループだと思います」
「それは……やっぱりそうだよね。ごめん、変なこと言って……」
想像以上にテンションが下がってしまった岸本さんを見て、僕と花園さんは「しまった」という表情をする。
花園さんがどう思っているかわからないけど、僕はLINEのグループというものが少々苦手というか、使い道がわからないと思っている。確かに複数人への連絡は便利だと思うけど、一度入ると何だか抜け出しづらいし、全く関係のない話でいちいち通知が来るのが億劫なのだ。
だから、むやみやたらに増やさない方がいいと思うけど……この場においてそれは空気が読めていなかった。たぶん、岸本さんは特別話したいことがあるうんぬんではなく、一つの機能として使ってみたかったんだ。
「いえ、やっぱり作ってもいいと思います。華凛も今後二人同時に連絡を寄越さなければならないようなシチュエーションがある気がしてきました」
「僕もそう思う! 今後もテスト勉強で集まる時があれば便利だし」
「……本当に作ってもいい?」
僕と花園さんは必死に頷く。それを見た岸本さんはスマホを操作し始めた。
「これで……二人を招待したから」
「うん。入れたよ」
「華凛も問題なく」
「ありがとう。それとついでに二人も連絡先を交換しておいたらいいと思うのだけれど」
「あー……そうだね。じゃあ、花園さんにメッセージ送るよ」
「ブロックします」
「ええっ!?」
「冗談です。まぁ、リョウスケに関しては特に連絡することはありませんが」
そんな僕と花園さんのやり取りを見て、岸本さんは嬉しそうに笑った。
そこで僕が気付いた……というよりは勝手に予想したことにはなるけど、岸本さんは僕と花園さんに繋がって欲しかったのではないかと思った。僕個人としては花園さんとも友達になっているつもりで、恐らく花園さんもそう思ってくれているだろうけど、昨日の通り連絡先は知らない仲でもあった。
それが岸本さんからすると、少しだけ気になってしまう距離間だったのかもしれない。もちろん、交換したところで僕と花園さんが急にもっと仲良くなることはないけど、そういう安心感が欲しいのは何となくわかる。
「長引かせてごめんね。ここからは切り替えていくから」
「はい。ですが、この1年生グループ(仮)のままだと格好が付かないと思うのですが」
「じゃあ、どういうグループ名がいい? 三人の要素を合わせるとなると……」
なんてことを考えてみたけど、単に岸本さんがグループを作りたかったと考える方が正解なんだろう。この日の勉強が終わった帰り道でも楽しそうにグループ名を考えていた。ちなみに最終的には「ハナミチwithU」という僕が外部参加したみたいなグループ名になった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
庭木を切った隣人が刑事訴訟を恐れて小学生の娘を謝罪に来させたアホな実話
フルーツパフェ
大衆娯楽
祝!! 慰謝料30万円獲得記念の知人の体験談!
隣人宅の植木を許可なく切ることは紛れもない犯罪です。
30万円以下の罰金・過料、もしくは3年以下の懲役に処される可能性があります。
そうとは知らずに短気を起こして家の庭木を切った隣人(40代職業不詳・男)。
刑事訴訟になることを恐れた彼が取った行動は、まだ小学生の娘達を謝りに行かせることだった!?
子供ならば許してくれるとでも思ったのか。
「ごめんなさい、お尻ぺんぺんで許してくれますか?」
大人達の事情も知らず、健気に罪滅ぼしをしようとする少女を、あなたは許せるだろうか。
余りに情けない親子の末路を描く実話。
※一部、演出を含んでいます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる