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1年生2学期

11月25日(木)晴れ 清水夢愛の夢探しその10

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 全国的に突然冬がやって来てた木曜日。場所によっては雪まで降っているようで、自転車で風を切る僕はこの朝に急いで手袋とネックウォーマーを用意することになった。

「はぁ……」

 そんな寒さの中、学校へ到着すると朝に会うのは珍しい人が珍しいテンションで校門に佇んでいた。

「どうしたんですか、清水先輩?」

「ああ、良助か……おはよう」

「おはようございます。清水先輩ってこの時間に登校してたんですね」

「いや、今日はたまたまこの時間に来ただけだ……はぁ」

「絶対何かあったじゃないですか。僕で良ければ聞きますよ」

「それが……特にやることが無くなってしまったんだ」

 清水先輩は悲しそうに言う。それを他の人が聞けば何のことやらと思うだろうけど、事情を知っている僕からすれば少し驚くことだった。

「無くなったって……スポーツ系は駄目だったんですか?」

「あれは単に体を動かすブームが来ていただけだ。それに今から本格的に何かのスポーツ選手を目指すにしても私は実績も何もないから遅過ぎるだろうしな」

「確かに難しいかもしれないですけど、それならまた別のやりたいことを探せばいいじゃないですか」

「そうなんだが……今は完全に途切れてしまったんだ。興味というか、集中力というか……」

 そう言われてしまうと、無理に何かしなくてもいいのではと思ってしまうけど、清水先輩はそれが落ち着かないようだ。かと言って僕から提案できるようなことはすぐに思い付かない。

「すまんな、良助。朝からこんな話をして。そろそろ教室へ行こうか」

「いえ……僕が言うのも何ですけど、あんまり焦らないでください。今まで色々見つけてきたんですからそういう日もたまにはあります」

「それは……そうだな。別に焦ることはない。年末まではまだ1ヶ月はある」

「もしかして年明けとかに進路希望調査とかがある感じです?」

「いや、私の中で定めたリミットだ。いつまでも考えていても仕方ないからな」

「それでリミットになったら強制的に決まってしまうと……」

「……あ。特にどうなるかは考えてなかった」

「えぇ……」

 それだと期限がある意味がなくなってしまうけど、清水先輩的にはそういう気持ちで色々考えているのだろう。

「清水先輩の親は進路について何か言ってたりするんですか?」

「……両親は私の自由にしていいと言っているよ。進学でも就職でも好きなようにって」

「だったら余計に焦らなくても大丈夫だと思います。って、さっきから1年の僕が言ってもと感じですけど……」

「いや……話したらそんなに考えることでもないと思ってきた。ありがとう、良助」

 それだけ言うと、清水先輩は自分の教室へ向かって行った。

 清水先輩の去り際の言葉が気遣いでなければ、今度会った時は新しい何かを見つけているはずだ。でも、今日の気持ちを引きずったままだと、暫くは悩む時間になってしまうのかもしれない。

 そんな時に僕も何か言えるようになっていればいいけど……僕も夢に描くほどやりたいことはまだ見つかっていない。清水先輩が3年生になるまでだいたい4ヶ月ほどで、僕はそれに1年がプラスされるけど、来年の同じ時期に進むべき道が少しでも見えているだろうか。

 この日の夜、僕は桜庭先輩にメッセージを送った。それに対しての回答は「暫く様子見」とのことだったので、僕も自分のことを考えつつ待機しておくことにする。
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