上 下
228 / 942
1年生2学期

11月17日(水)晴れ 三人だけの昼食

しおりを挟む
 流れのまま水曜日。授業を終えて昼休みになると、僕はいつも通り昼食を取るために松永の席へ集まる。こうやっていつメンで集まって食べることが当たり前になってからそれなりの時間が経った。それでも集まれば話題が尽きることはなく、毎日楽しく喋りながらお昼を楽しんでいる。

 しかし、そんな集まりの中で今日はいつもと違うところがあった。

「悪い、みんな。今日はちょっと……」

「……あー、なるほど。了解了解」

 一旦、僕らのところへ顔を見せた本田くんはそのまま弁当を持って教室から出て行く。松永だけが先にわかったように言っていたけど、僕と大倉くんも少し遅れてそれが意味することに気付いた。

「も、もしかして……二人で食べる感じなのかな?」

「もしかしてじゃなくて、そうだと思う。いやー 校内で付き合うとそういうこともできちゃうんだねぇ。うらやましい!」

「で、でも、二人が付き合ってるのがバレちゃうんじゃないかな……?」

「まー、別に隠す必要はないしいいんじゃない? それにここだけの話だけど、女子間では結構広まってらしい」

 なぜ松永が女子間の話を知っているのかと思ったけど、確かに栗原さんも月曜に知っているような言い方をしていた。その後に詳しく話したわけじゃないから真相はわかっていないけど、松永が言う通りなら広まりつつあるのだろう。

「ちなみに俺は言ってないからね。ぽんちゃんから特に口封じされてるわけじゃないけど」

「ぼ、ボクも他の人には言ってないけど……じゃあ、どうして広まったんだろう?」

「そりゃあ、一緒に帰ったところ見られたとか……大山ちゃんが意外と公表してるとか?」

「二人とも。あんまり話してるとこれが広がる種になるから」

 僕がそう注意すると、二人とも口を隠す仕草をする。口外してはいけないと言われていないから僕も止める必要はないのだろうけど、ひそひそ話をされて本田くんや大山さんが良い気分になることはないと思う。そういうのを楽しむなら他に誰も聞こえてないところでやるべきだ。

「こ、これからは二人で食べるのがデフォルトになるのかな……」

「なに、クラさんちょっと寂しいの?」

「それは……うん。ちょっと思う」

「クラさん……! 心配ないよ、俺とりょーちゃんはずっと一緒だから!」

「あ、ありがとう。でも、松永くんは絶対だけど、産賀くんはワンチャン……」

「えっ!? そうなの、りょーちゃん!? りょーちゃんのそういう話あるの聞いてないんだけど!?」

「どういう盛り上がり方してるんだ。別にそういう話ないから松永も心配しなくていいぞ」

「いやぁ、いい友達を持ったなー」

 そんなことを言っている松永はちゃっかり彼女がいるのだから勝者故の余裕であるようにも聞こえる。いや、彼女がいることが勝者になると僕は思わない。思わないけど、一般的にはそうなるものだからそんな風に聞こえてしまう自分もいる。

 そして、大倉くんに便乗はしなかったけど、三人で終えた昼食は何だか物足りないというか、妙な感覚に僕もなってしまった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隣の席のヤンデレさん

葵井しいな
青春
私の隣の席にはとても可愛らしい容姿をした女の子がいる。 けれど彼女はすっごく大人しくて、話しかけてもほとんどアクションなんか起こらなかった。 それを気にかけた私が粘り強くお節介を焼いていたら、彼女はみるみるうちに変わっていきました。 ……ヤンの方向へと。あれれ、おかしいなぁ?

女神と共に、相談を!

沢谷 暖日
青春
九月の初め頃。 私──古賀伊奈は、所属している部活動である『相談部』を廃部にすると担任から言い渡された。 部員は私一人、恋愛事の相談ばっかりをする部活、だからだそうだ。 まぁ。四月頃からそのことについて結構、担任とかから触れられていて(ry 重い足取りで部室へ向かうと、部室の前に人影を見つけた私は、その正体に驚愕する。 そこにいたのは、学校中で女神と謳われている少女──天崎心音だった。 『相談部』に何の用かと思えば、彼女は恋愛相談をしに来ていたのだった。 部活の危機と聞いた彼女は、相談部に入部してくれて、様々な恋愛についてのお悩み相談を共にしていくこととなる──

サ帝

紅夜蒼星
青春
20××年、日本は100度前後のサウナの熱に包まれた! 数年前からサウナが人体に与える影響が取りだたされてはいた。しかし一過的なブームに過ぎないと、単なるオヤジの趣味だと馬鹿にする勢力も多かった。 だがサウナブームは世を席巻した。 一億の人口のうちサウナに入ったことのない人は存在せず、その遍く全ての人間が、サウナによって進化を遂げた「超人類」となった。   その中で生まれた新たなスポーツが、GTS(Golden Time Sports)。またの名を“輝ける刻の対抗戦”。 サウナ、水風呂、ととのい椅子に座るまでの一連のサウナルーティン。その時間を設定時間に近づけるという、狂っているとしか言いようがないスポーツ。 そんなGTSで、「福良大海」は中学時代に全国制覇を成し遂げた。 しかしとある理由から彼はサウナ室を去り、表舞台から姿を消した。 高校生となった彼は、いきつけのサウナで謎の美少女に声を掛けられる。 「あんた、サウナの帝王になりなさい」 「今ととのってるから後にしてくれる?」 それは、サウナストーンに水をかけられたように、彼の心を再び燃え上がらせる出会いだった。 これはサウナーの、サウナーによる、サウナーのための、サウナ青春ノベル。

終わりに見えた白い明日

kio
青春
寿命の終わりで自動的に人が「灰」と化す世界。 「名無しの権兵衛」を自称する少年は、不良たちに囲まれていた一人の少女と出会う。 ──これは、終末に抗い続ける者たちの物語。 やがて辿り着くのは、希望の未来。 【1】この小説は、2007年に正式公開した同名フリーノベルゲームを加筆修正したものです(内容に変更はありません)。 【2】本作は、徐々に明らかになっていく物語や、伏線回収を好む方にお勧めです。 【3】『ReIce -second-』にて加筆修正前のノベルゲーム版(WINDOWS機対応)を公開しています(作品紹介ページにて登場人物の立ち絵等も載せています)。 ※小説家になろう様でも掲載しています。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい

一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。 しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。 家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。 そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。 そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。 ……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──

少女が過去を取り戻すまで

tiroro
青春
小学生になり、何気ない日常を過ごしていた少女。 玲美はある日、運命に導かれるように、神社で一人佇む寂しげな少女・恵利佳と偶然出会った。 初めて会ったはずの恵利佳に、玲美は強く惹かれる不思議な感覚に襲われる。 恵利佳を取り巻くいじめ、孤独、悲惨な過去、そして未来に迫る悲劇を打ち破るため、玲美は何度も挫折しかけながら仲間達と共に立ち向かう。 『生まれ変わったら、また君と友達になりたい』 玲美が知らずに追い求めていた前世の想いは、やがて、二人の運命を大きく変えていく──── ※この小説は、なろうで完結済みの小説のリメイクです ※リメイクに伴って追加した話がいくつかあります  内容を一部変更しています ※物語に登場する学校名、周辺の地域名、店舗名、人名はフィクションです ※一部、事実を基にしたフィクションが入っています ※タグは、完結までの間に話数に応じて一部増えます ※イラストは「画像生成AI」を使っています

下弦に冴える月

和之
青春
恋に友情は何処まで寛容なのか・・・。

処理中です...