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1年生2学期
9月16日(木)曇り 学校五大美人(真)
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この日、土曜日にほぼ雨が降るものだと学校側が判断したことで、体育祭は19日の日曜日もしくは20日で祝日の月曜日に延期することになった。それに伴って明日やる予定だったグラウンドのテント等の準備も当日の朝へ延期される。9月に体育祭を開催する悪いところが出てしまったようだ。
そんな中、今日はギリギリ天気が持ったことからグラウンドや体育館など学校全体を利用して体育祭の練習が始まる。ただ、フォークダンスを始めとする全体練習はないので、僕は完全に暇な人になってしまった。小中学校の時も実際の種目を練習することはほとんどなかったけど、学年で披露するものがないだけでこれほど暇になるとは思わなかった。
そんな中、大倉くんと共に校内の清掃作業に励んでいた時だ。
「やぁ、良助……とそのご友人」
どこからともなくやって来た清水先輩が話しかけてきた。体操着姿は初めて見るけど、清水先輩が。来ていると何となく様になっているように見える。
「清水先輩、こんなところで何してるんですか」
「それはこっちの台詞でもあるぞ」
「僕はこの通り練習がない清掃組ですけど、清水先輩もそうなんですか?」
「ああ。小織はダンスがあるらしくて暇だからウロウロしてた」
「ということは、清水先輩は剣道か柔道を履修してるんですね」
体育の選択授業は3つのうちから選ぶようになっているけど、その中でダンスは体育祭での披露が目標の一つになっているらしい。一方、剣道や柔道は学年末に試合を行うようで……今から気が重い。
「私は柔道だ。良助は?」
「僕も柔道です。理由は特にないですけど」
「何故か剣道は不人気だな。良助のご友人は?」
「えっ!? あ、あの……その……」
いきなり話を振られてた大倉くんはあたふたする。僕も話しかけると思っていなかったからちょっと驚いたので、助け舟を出すことにした。
「彼も柔道で……えっと、友達の大倉くんです」
「そういえば自己紹介がまだだったな。私は2年の清水夢愛だ。清らかな水に夢を愛すると書く」
「あっ! はい、大倉です! よろしくお願いいたします!」
「そんなに畏まらなくてもいいぞ。だが、あまり2人の清掃を邪魔したら悪いから私はこれで失礼するよ」
「いや、清水夢愛も清掃組なのでは……?」
「細かいことは気にするな。それじゃあ、また」
逃げるように清水夢愛は去っていった。夏休みの宿題といい、清水先輩は案外サボり癖があるのかもしれない。いや、今の僕と大倉くんも半分くらいサボっているようなものだけど。
「う、産賀くん、今の人が例の……」
「あー、大倉くんにも話してたっけ?」
「時々松永くんも言ってたから……ほ、本当に綺麗な人だった……」
「学校五大美人なんて言われてるからね」
「そ、そういうのって狭い範囲の噂だと思ってたけど、本当にいるんだなぁ……」
大倉くんがうっとりしているのを見ると心からそう言っている感じがする。確かに清水先輩は綺麗な人ではあるけど、僕は感覚が鈍ってしまったのか、抜きん出て美人と言われてるとよくわからなくなっていた。こんな風に客観的な評価があると、僕もそういう人と友人である自覚を持って……どうするべきなんだろうか?
清水先輩の校内での立ち位置を改めて思い出す日だった。
そんな中、今日はギリギリ天気が持ったことからグラウンドや体育館など学校全体を利用して体育祭の練習が始まる。ただ、フォークダンスを始めとする全体練習はないので、僕は完全に暇な人になってしまった。小中学校の時も実際の種目を練習することはほとんどなかったけど、学年で披露するものがないだけでこれほど暇になるとは思わなかった。
そんな中、大倉くんと共に校内の清掃作業に励んでいた時だ。
「やぁ、良助……とそのご友人」
どこからともなくやって来た清水先輩が話しかけてきた。体操着姿は初めて見るけど、清水先輩が。来ていると何となく様になっているように見える。
「清水先輩、こんなところで何してるんですか」
「それはこっちの台詞でもあるぞ」
「僕はこの通り練習がない清掃組ですけど、清水先輩もそうなんですか?」
「ああ。小織はダンスがあるらしくて暇だからウロウロしてた」
「ということは、清水先輩は剣道か柔道を履修してるんですね」
体育の選択授業は3つのうちから選ぶようになっているけど、その中でダンスは体育祭での披露が目標の一つになっているらしい。一方、剣道や柔道は学年末に試合を行うようで……今から気が重い。
「私は柔道だ。良助は?」
「僕も柔道です。理由は特にないですけど」
「何故か剣道は不人気だな。良助のご友人は?」
「えっ!? あ、あの……その……」
いきなり話を振られてた大倉くんはあたふたする。僕も話しかけると思っていなかったからちょっと驚いたので、助け舟を出すことにした。
「彼も柔道で……えっと、友達の大倉くんです」
「そういえば自己紹介がまだだったな。私は2年の清水夢愛だ。清らかな水に夢を愛すると書く」
「あっ! はい、大倉です! よろしくお願いいたします!」
「そんなに畏まらなくてもいいぞ。だが、あまり2人の清掃を邪魔したら悪いから私はこれで失礼するよ」
「いや、清水夢愛も清掃組なのでは……?」
「細かいことは気にするな。それじゃあ、また」
逃げるように清水夢愛は去っていった。夏休みの宿題といい、清水先輩は案外サボり癖があるのかもしれない。いや、今の僕と大倉くんも半分くらいサボっているようなものだけど。
「う、産賀くん、今の人が例の……」
「あー、大倉くんにも話してたっけ?」
「時々松永くんも言ってたから……ほ、本当に綺麗な人だった……」
「学校五大美人なんて言われてるからね」
「そ、そういうのって狭い範囲の噂だと思ってたけど、本当にいるんだなぁ……」
大倉くんがうっとりしているのを見ると心からそう言っている感じがする。確かに清水先輩は綺麗な人ではあるけど、僕は感覚が鈍ってしまったのか、抜きん出て美人と言われてるとよくわからなくなっていた。こんな風に客観的な評価があると、僕もそういう人と友人である自覚を持って……どうするべきなんだろうか?
清水先輩の校内での立ち位置を改めて思い出す日だった。
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