上 下
164 / 942
1年生2学期

9月14日(火)雨のち曇り オトコのコの会話

しおりを挟む
 今週も文芸部のミーティングが開かれて、文化祭に向けた創作物の提出が迫っていることが知らされる。体育祭が終わった後は祝日が何回か挟まるので、その時間を使えば提出は間に合いそうだ。

 ミーティングを終った後、僕はそのまま作業に移らず藤原先輩の席へ向かう。今日は藤原先輩に聞きたいことがあったのだ。残念ながら文芸部関連のことはないけど。

「藤原先輩、ちょっと聞いていいですか?」

「……? どうしたの……」

「……うちの高校のフォークダンスってどんな感じです?」

 昨日栗原さんから聞いて初めて知ったフォークダンスについて、僕は色々と不安があった。でも、女子の先輩方に聞くのは何か違う気がするから僕がすぐに聞ける唯一の男子の先輩である藤原先輩を頼ったのだ。

 すると、藤原先輩は考えるためか数十秒間動きを止めてから喋りだす。

「……普通?」

「ふ、普通ですか」

「……オレ……他のフォークダンスのこと、よく知らない……」

「それはそうですよね。えっと……聞きたいのはそのダンスが難しいかどうかなんです」

「……オレも適当に踊れてるから……そんなに心配いらない……と思う」

 藤原先輩の運動能力は僕からすると未知数だけど、恐らくそれほど難しいものではないようだ。それなら良かった。こんなギリギリで知って覚えられないようなダンスだったら周りに迷惑をかけるところだった。

 そんなことを考えて僕が安心していると、藤原先輩は僕を手招きした。最近は耳を近づけなくても藤原先輩の声が聞き取れるようになったから随分と久しぶりな気がする。僕は藤原先輩に近づいて耳を貸す。しかし、聞かれた言葉予想外のものだった。

「産賀くん……誰か気になる子が……いるの?」

「ぶっ!? な、なんでですか!?」

「……フォークダンスを気にするのは……そういうことかと……」

「いえ、そういうわけじゃなくて……というかフォークダンスってやっぱりそういう感じなんですか……?」

「……多からず……少なからず……男女双方ともある……らしい」

 わざわざ男女で組ませる必要性はわからないけど、生徒の間ではちょっとばかりイベントのようなものになっていたのか。そうなると、何となく女子の先輩方に聞かなかったのは正解だった。藤原先輩ならこれ以上追求することもないだろう。

「シュウとウーブくん、なに話してるの?」

 そう、こんな風に割り込んでくるソフィア先輩に聞かれたらまた勘違いされてしまう。

「な、なんでもないです。ね、藤原先輩」

「……うん、なんでも」

「……あー! わかった!」

「ええっ!?」

「二人してオトコのコの会話してたんでしょー!」

 謎に盛り上がりながらソフィア先輩はそう言うけど……完全に間違いではないのか。女子も同じフォークダンスで盛り上がるとしても男子とは内容が違うかもしれない。最も今ソフィア先輩が言ってるのは別の意味だろうけど。

「別にそういうのじゃないです」

「ソフィア……逆セクハラっていうのもあるから……」

「なんか今日の二人は連携取れてるね……?」

 僕としてはそのフォークダンスが藤原先輩とソフィア先輩にとってはどう見えるのかは気になったけど、今日のところはダンスが難しくないとわかっただけ良しとしよう。藤原先輩もラブコメを書くくらいだからこういう話には興味があるのだと知れたのもいい発見だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

人生負け組のスローライフ

雪那 由多
青春
バアちゃんが体調を悪くした! 俺は長男だからバアちゃんの面倒みなくては!! ある日オヤジの叫びと共に突如引越しが決まって隣の家まで車で十分以上、ライフラインはあれどメインは湧水、ぼっとん便所に鍵のない家。 じゃあバアちゃんを頼むなと言って一人単身赴任で東京に帰るオヤジと新しいパート見つけたから実家から通うけど高校受験をすててまで来た俺に高校生なら一人でも大丈夫よね?と言って育児拒否をするオフクロ。  ほぼ病院生活となったバアちゃんが他界してから築百年以上の古民家で一人引きこもる俺の日常。 ―――――――――――――――――――――― 第12回ドリーム小説大賞 読者賞を頂きました! 皆様の応援ありがとうございます! ――――――――――――――――――――――

詩集(ポエム?)

凛音
青春
初めまして、思いつくままに詩(ポエム) を書いていこうと思います。 リクエストもお待ちしております(笑)

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

野球

moon
青春
甲子園を目指して野球部に入部した。 健二の成長物語

sweet!!

仔犬
BL
バイトに趣味と毎日を楽しく過ごしすぎてる3人が超絶美形不良に溺愛されるお話です。 「バイトが楽しすぎる……」 「唯のせいで羞恥心がなくなっちゃって」 「……いや、俺が媚び売れるとでも思ってんの?」

恐喝されている女の子を助けたら学校で有名な学園三大姫の一人でした

恋狸
青春
 特殊な家系にある俺、こと狭山渚《さやまなぎさ》はある日、黒服の男に恐喝されていた白海花《しらみはな》を助ける。 しかし、白海は学園三大姫と呼ばれる有名美少女だった!?  さらには他の学園三大姫とも仲良くなり……?  主人公とヒロイン達が織り成すラブコメディ!  小説家になろう、カクヨムでも投稿しています。  カクヨムにて、月間3位

処理中です...