159 / 942
1年生2学期
9月9日(木)曇り 大山亜里沙との距離間その2
しおりを挟む
本日の授業をこなした後の帰りのホームルーム。先週行った校内実力テストの結果が返って来た。マークシート方式だったから全部の採点にそれほど時間がかからなかったんだろう。細長い紙には5教科と全体の得点及び学年内順位が書かれていた。
「産賀くんは何位だったー?」
そう聞いてきたのは栗原さんだった。主人公席になってから数日。僕が短い休み時間で暇そうにしていると、栗原さんや野島さんに絡まれるようになっていた。
「僕は31位」
「えー!? それって半分より上じゃん! 産賀くん、頭良かったんだね」
1年は6クラスの合計がだいたい200人くらいだったと思うので、半分よりは上なのは間違いない。5教科で目立って悪い得点もないから僕としてもちょっと嬉しかった。
「私はこの順位だし……今度から産賀くんに勉強教えて貰おうかなー」
「えっ」
「あははー 冗談だって」
別に嫌というわけじゃないけど、栗原さんの距離間の詰め方は予想できない。恐らくそれは僕と栗原さんの認識の違いがあるからだろう。
それからホームルームが終わって、松永たちと少し実力テストの話をしてから僕はそのまま帰ろうとした時だ。
「うぶクン! ちょっと待って」
僕を呼び止めたのは大山さんだった。席替えをした後大山さんの席は廊下側の真ん中あたりの席になっていた。足を止めた僕の傍まで大山さんがやって来る。
「どうしたの、大山さん」
「実力テストの順位どうだった?」
「えっ? 31位だったよ」
「おお、凄いじゃん」
「大山さんは?」
「22位!」
大山さんはドヤ顔でそう言う。どうやら僕は実力テストでも勝てないようだ。今回は勝負なしにして貰って助かった。
「学年で20位代は凄いなぁ」
「ふふーん、そうでしょ?」
「うん。それじゃあ……」
「あー! 待って! 実力テストのことも言いたかったけど、それより現社のノート写させてくれない?」
大山さんはまた帰ろうとした僕を止めて言う。そういえば昨日はすっかり忘れて……いても仕方がない。今の席では大山さんが眠っていたことは確認できないから。
「いいけど、僕に頼むより隣の席の人に頼んだ方がいいんじゃない?」
「えー……今更他の人に頼むのはなんかなぁ……」
「そうなの?」
「そうそう。それにうぶクンのノートが一番見やすいし」
そもそも他人のノートを見ないからよくわからないけど、大山さんが言うからにはそうなんだろう。
「でも、今日は現社のノートないから、明日でも……いや、今日僕が写して送るよ」
「いやいや、どうせ明日のも写させて貰うし、手間かかるから明日でもいいよ?」
「明日も寝るの確定しないで」
それに対して大山さんは笑って誤魔化す。こうやっていつも通りの話をしていると、席が変わったのに何も変わっていないように思える。
(あっ……)
いや、違う。そもそも大山さんが隣の席でなくなっただけで、僕は急に距離を取り過ぎている。席替えする前までは順位の話をしていたけど、大山さんから来てくれなければ僕から話しかけることもなかった。栗原さんの距離がわからないなんて言ってたけど、大山さんからすれば今の僕の方がよくわからなかったのかもしれない。
「大山さん、ごめ――」
「うん?」
「いや、えっと……ともかく明日また声かけるよ」
「ホントありがとねー それじゃ、また明日!」
また”ごめん”と言ってしまいそうになったけど、何とか踏みとどまった。さっき考えたのはあくまで僕が考えたことで大山さんは何とも思ってないかもしれない。それで突然謝ったらそれこそ変な距離の取り方だ。
人付き合いについて僕の悪いところが出てしまった日だけど、思えば夏休み中も大山さんとの距離の取り方は良いものとは言えなかった。本田くんの件は別にして、友達としての大山さんとの距離間はちゃんと思い出していこうと思った。
「産賀くんは何位だったー?」
そう聞いてきたのは栗原さんだった。主人公席になってから数日。僕が短い休み時間で暇そうにしていると、栗原さんや野島さんに絡まれるようになっていた。
「僕は31位」
「えー!? それって半分より上じゃん! 産賀くん、頭良かったんだね」
1年は6クラスの合計がだいたい200人くらいだったと思うので、半分よりは上なのは間違いない。5教科で目立って悪い得点もないから僕としてもちょっと嬉しかった。
「私はこの順位だし……今度から産賀くんに勉強教えて貰おうかなー」
「えっ」
「あははー 冗談だって」
別に嫌というわけじゃないけど、栗原さんの距離間の詰め方は予想できない。恐らくそれは僕と栗原さんの認識の違いがあるからだろう。
それからホームルームが終わって、松永たちと少し実力テストの話をしてから僕はそのまま帰ろうとした時だ。
「うぶクン! ちょっと待って」
僕を呼び止めたのは大山さんだった。席替えをした後大山さんの席は廊下側の真ん中あたりの席になっていた。足を止めた僕の傍まで大山さんがやって来る。
「どうしたの、大山さん」
「実力テストの順位どうだった?」
「えっ? 31位だったよ」
「おお、凄いじゃん」
「大山さんは?」
「22位!」
大山さんはドヤ顔でそう言う。どうやら僕は実力テストでも勝てないようだ。今回は勝負なしにして貰って助かった。
「学年で20位代は凄いなぁ」
「ふふーん、そうでしょ?」
「うん。それじゃあ……」
「あー! 待って! 実力テストのことも言いたかったけど、それより現社のノート写させてくれない?」
大山さんはまた帰ろうとした僕を止めて言う。そういえば昨日はすっかり忘れて……いても仕方がない。今の席では大山さんが眠っていたことは確認できないから。
「いいけど、僕に頼むより隣の席の人に頼んだ方がいいんじゃない?」
「えー……今更他の人に頼むのはなんかなぁ……」
「そうなの?」
「そうそう。それにうぶクンのノートが一番見やすいし」
そもそも他人のノートを見ないからよくわからないけど、大山さんが言うからにはそうなんだろう。
「でも、今日は現社のノートないから、明日でも……いや、今日僕が写して送るよ」
「いやいや、どうせ明日のも写させて貰うし、手間かかるから明日でもいいよ?」
「明日も寝るの確定しないで」
それに対して大山さんは笑って誤魔化す。こうやっていつも通りの話をしていると、席が変わったのに何も変わっていないように思える。
(あっ……)
いや、違う。そもそも大山さんが隣の席でなくなっただけで、僕は急に距離を取り過ぎている。席替えする前までは順位の話をしていたけど、大山さんから来てくれなければ僕から話しかけることもなかった。栗原さんの距離がわからないなんて言ってたけど、大山さんからすれば今の僕の方がよくわからなかったのかもしれない。
「大山さん、ごめ――」
「うん?」
「いや、えっと……ともかく明日また声かけるよ」
「ホントありがとねー それじゃ、また明日!」
また”ごめん”と言ってしまいそうになったけど、何とか踏みとどまった。さっき考えたのはあくまで僕が考えたことで大山さんは何とも思ってないかもしれない。それで突然謝ったらそれこそ変な距離の取り方だ。
人付き合いについて僕の悪いところが出てしまった日だけど、思えば夏休み中も大山さんとの距離の取り方は良いものとは言えなかった。本田くんの件は別にして、友達としての大山さんとの距離間はちゃんと思い出していこうと思った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
光のもとで1
葉野りるは
青春
一年間の療養期間を経て、新たに高校へ通いだした翠葉。
小さいころから学校を休みがちだった翠葉は人と話すことが苦手。
自分の身体にコンプレックスを抱え、人に迷惑をかけることを恐れ、人の中に踏み込んでいくことができない。
そんな翠葉が、一歩一歩ゆっくりと歩きだす。
初めて心から信頼できる友達に出逢い、初めての恋をする――
(全15章の長編小説(挿絵あり)。恋愛風味は第三章から出てきます)
10万文字を1冊として、文庫本40冊ほどの長さです。
少女が過去を取り戻すまで
tiroro
青春
小学生になり、何気ない日常を過ごしていた少女。
玲美はある日、運命に導かれるように、神社で一人佇む寂しげな少女・恵利佳と偶然出会った。
初めて会ったはずの恵利佳に、玲美は強く惹かれる不思議な感覚に襲われる。
恵利佳を取り巻くいじめ、孤独、悲惨な過去、そして未来に迫る悲劇を打ち破るため、玲美は何度も挫折しかけながら仲間達と共に立ち向かう。
『生まれ変わったら、また君と友達になりたい』
玲美が知らずに追い求めていた前世の想いは、やがて、二人の運命を大きく変えていく────
※この小説は、なろうで完結済みの小説のリメイクです
※リメイクに伴って追加した話がいくつかあります
内容を一部変更しています
※物語に登場する学校名、周辺の地域名、店舗名、人名はフィクションです
※一部、事実を基にしたフィクションが入っています
※タグは、完結までの間に話数に応じて一部増えます
※イラストは「画像生成AI」を使っています
樹企画第二弾作品集(Spoon内自主企画)
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
◆こちらはspoonというアプリで、読み手様個人宛てに書いた作品となりますが、spoonに音声投稿後フリー台本として公開許可を頂いたものをこちらにまとめました。
1:30〜8分ほどで読み切れる作品集です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
サマネイ
多谷昇太
青春
1年半に渡って世界を放浪したあとタイのバンコクに辿り着き、得度した男がいます。彼の「ビルマの竪琴」のごとき殊勝なる志をもって…? いや、些か違うようです。A・ランボーやホイットマンの詩に侵されて(?)ホーボーのように世界中を放浪して歩いたような男。「人生はあとにも先にも一度っきり。死ねば何もなくなるんだ。あとは永遠の無が続くだけ。すれば就職や結婚、安穏な生活の追求などバカらしい限りだ。たとえかなわずとも、人はなんのために生きるか、人生とはなんだ、という終極の命題を追求せずにおくものか…」などと真面目に考えては実行してしまった男です。さて、それでどうなったでしょうか。お釈迦様の手の平から決して飛び立てず、逃げれなかったあの孫悟空のように、もしかしたらきついお灸をお釈迦様からすえられたかも知れませんね。小説は真実の遍歴と(構成上、また効果の上から)いくつかの物語を入れて書いてあります。進学・就職から(なんと)老後のことまでしっかり目に据えているような今の若い人たちからすれば、なんともあきれた、且つ無謀きわまりない主人公の生き様ですが(当時に於てさえ、そして甚だ異質ではあっても)昔の若者の姿を見るのもきっと何かのお役には立つことでしょう。
さあ、あなたも一度主人公の身になって、日常とはまったく違う、沙門の生活へと入り込んでみてください。では小説の世界へ、どうぞ…。
陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜
136君
青春
俺に青春など必要ない。
新高校1年生の俺、由良久志はたまたま隣の席になった有田さんと、なんだかんだで同居することに!?
絶対に他には言えない俺の秘密を知ってしまった彼女は、勿論秘密にすることはなく…
本当の思いは自分の奥底に隠して繰り広げる青春ラブコメ!
なろう、カクヨムでも連載中!
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330647702492601
なろう→https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n5319hy/
彼ノ女人禁制地ニテ
フルーツパフェ
ホラー
古より日本に点在する女人禁制の地――
その理由は語られぬまま、時代は令和を迎える。
柏原鈴奈は本業のOLの片手間、動画配信者として活動していた。
今なお日本に根強く残る女性差別を忌み嫌う彼女は、動画配信の一環としてとある地方都市に存在する女人禁制地潜入の動画配信を企てる。
地元住民の監視を警告を無視し、勧誘した協力者達と共に神聖な土地で破廉恥な演出を続けた彼女達は視聴者たちから一定の反応を得た後、帰途に就こうとするが――
檸檬色に染まる泉
鈴懸 嶺
青春
”世界で一番美しいと思ってしまった憧れの女性”
女子高生の私が、生まれてはじめて我を忘れて好きになったひと。
雑誌で見つけたたった一枚の写真しか手掛かりがないその女性が……
手なんか届かくはずがなかった憧れの女性が……
いま……私の目の前ににいる。
奇跡的な出会いを果たしてしまった私の人生は、大きく動き出す……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる