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1年生2学期
9月4日(土)曇り 清水先輩との夏散歩その8
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「すまん、良助」
久しぶりのありがたさを感じる土曜の休み。僕の睡眠はスマホの通知音で妨げられる。ただ、それも慣れたもので……あれ? これは今週の月曜にも思ったことだ。それに気付きながらも返信した僕が集合場所に着くと、今日の清水先輩は申し訳なさそうに冒頭の言葉を言った。
「すっかり夏休みが終わったのを忘れていた」
「いえ、構いませんよ。土曜日は基本暇なので」
「……良助。私が言うのもなんだがいつも暇だな」
「……言わないでください」
清水先輩も呼び出してから気付いたようだけど、僕もまだ夏休み気分が抜けていないから強いことは言えない。むしろ今日呼ばれなかったら暇だったことは間違いないので、日記に書くことができてありがたい限りだ。
「清水先輩こそ土曜日は基本空いてるんですか?」
「いや、時々茶道部で出ることはある」
「へぇー……」
「良助……今、私が部活に行ってるのが意外だと思っただろ?」
「思いました」
「素直でよろしい」
そう言った清水先輩は笑っていたので許してくれたようだ。でも、だいぶ前に聞いた話では桜庭先輩に呼ばれないと部活に行かないと言っていた気がする。僕はそれも素直に聞くと、清水先輩は歩きだしながら話し始める。
「確かに私は毎日のように出るわけじゃないが、別にサボってるわけじゃない。1週間に2回ある作法とかの勉強会は欠かさず出ているし、1年で何回かやるお茶会も休まず参加している」
「当たり前ですけど、頻繁にお茶をたててるわけじゃないんですね」
「そうだな。茶室の方は茶道の先生が来ない限り使わないし、一応ある部室は物置き兼お喋りの場になっているから茶道部らしいところはあまりない」
「文芸部の部室はちょっと本がある以外は空き教室みたいな感じです」
「そうか。そうなると文化部らしい部室は吹奏楽部や美術部くらいなのかもな」
僕の周りは運動部が多いから別の文化部の話を聞くのは新鮮な感じだ。特に茶道部は茶室でやっている分、活動内容は初めて聞くものだった。
「でも、行く時は桜庭先輩に呼ばれて行くんですね」
「ああ。今日の件でわかったと思うが、私は曜日や休みに気付かないことがあるからな」
「なるほど。ただ、昨日学校行ったじゃないですか」
「そうだが……それが?」
「金曜日の次は休みの土曜日ってなりません?」
「ならないな」
「…………」
「…………」
駄目だ。これは僕が理解できないものらしい。夏休みで曜日感覚が失われたというなら全然納得できるけど、普段から曜日に気付かないのはかなり特殊だと思う。
「まぁ、そんな感じだから小織と喧嘩した時は呼び出される時、結構気まずかった」
「もうその話は掘り返さなくていいですから」
「いいじゃないか。それが解決したおかげもあって……私は少し部員と話せるようになった」
「あっ……」
「以前の私は本当に小織から呼ばれて行くだけだったからな。茶道自体は興味があっても他の部員とはあまり関わらなかったんだ」
清水先輩はしみじみと言う。僕は今日みたいに話せる機会が多くなったからすっかり忘れていたけど、以前の清水先輩は話す相手を選ぶ人だった。そんな状況が桜庭先輩との喧嘩を経て少し変わったのはついこの間の話である。僕としては触れていいか迷ってしまう件だけど、清水先輩がいい結果として話すのならたまに振り返ってもいいのかもしれない。
「良助、文化祭で暇があったら茶道部も覗いてみるといい。私が応対できるかはわからないが、美味しいお茶は飲めるぞ」
「わかりました。楽しみにしてます」
「もちろん、良助の文芸部も覗きに行くからな」
「それは……ご自由に」
「なんでちょっと嫌そうなんだ。日記以外に何書くのか気になってるんだぞ?」
意外にも喰い付いてくる清水先輩に僕は適当にかわしておく。作品は誰かに見せるために書いているものだけど、いざ知り合いに見られるのは恥ずかしい。
それはそれとして、清水先輩の茶道部に対するあれこれが聞けたのはいい時間だった。
久しぶりのありがたさを感じる土曜の休み。僕の睡眠はスマホの通知音で妨げられる。ただ、それも慣れたもので……あれ? これは今週の月曜にも思ったことだ。それに気付きながらも返信した僕が集合場所に着くと、今日の清水先輩は申し訳なさそうに冒頭の言葉を言った。
「すっかり夏休みが終わったのを忘れていた」
「いえ、構いませんよ。土曜日は基本暇なので」
「……良助。私が言うのもなんだがいつも暇だな」
「……言わないでください」
清水先輩も呼び出してから気付いたようだけど、僕もまだ夏休み気分が抜けていないから強いことは言えない。むしろ今日呼ばれなかったら暇だったことは間違いないので、日記に書くことができてありがたい限りだ。
「清水先輩こそ土曜日は基本空いてるんですか?」
「いや、時々茶道部で出ることはある」
「へぇー……」
「良助……今、私が部活に行ってるのが意外だと思っただろ?」
「思いました」
「素直でよろしい」
そう言った清水先輩は笑っていたので許してくれたようだ。でも、だいぶ前に聞いた話では桜庭先輩に呼ばれないと部活に行かないと言っていた気がする。僕はそれも素直に聞くと、清水先輩は歩きだしながら話し始める。
「確かに私は毎日のように出るわけじゃないが、別にサボってるわけじゃない。1週間に2回ある作法とかの勉強会は欠かさず出ているし、1年で何回かやるお茶会も休まず参加している」
「当たり前ですけど、頻繁にお茶をたててるわけじゃないんですね」
「そうだな。茶室の方は茶道の先生が来ない限り使わないし、一応ある部室は物置き兼お喋りの場になっているから茶道部らしいところはあまりない」
「文芸部の部室はちょっと本がある以外は空き教室みたいな感じです」
「そうか。そうなると文化部らしい部室は吹奏楽部や美術部くらいなのかもな」
僕の周りは運動部が多いから別の文化部の話を聞くのは新鮮な感じだ。特に茶道部は茶室でやっている分、活動内容は初めて聞くものだった。
「でも、行く時は桜庭先輩に呼ばれて行くんですね」
「ああ。今日の件でわかったと思うが、私は曜日や休みに気付かないことがあるからな」
「なるほど。ただ、昨日学校行ったじゃないですか」
「そうだが……それが?」
「金曜日の次は休みの土曜日ってなりません?」
「ならないな」
「…………」
「…………」
駄目だ。これは僕が理解できないものらしい。夏休みで曜日感覚が失われたというなら全然納得できるけど、普段から曜日に気付かないのはかなり特殊だと思う。
「まぁ、そんな感じだから小織と喧嘩した時は呼び出される時、結構気まずかった」
「もうその話は掘り返さなくていいですから」
「いいじゃないか。それが解決したおかげもあって……私は少し部員と話せるようになった」
「あっ……」
「以前の私は本当に小織から呼ばれて行くだけだったからな。茶道自体は興味があっても他の部員とはあまり関わらなかったんだ」
清水先輩はしみじみと言う。僕は今日みたいに話せる機会が多くなったからすっかり忘れていたけど、以前の清水先輩は話す相手を選ぶ人だった。そんな状況が桜庭先輩との喧嘩を経て少し変わったのはついこの間の話である。僕としては触れていいか迷ってしまう件だけど、清水先輩がいい結果として話すのならたまに振り返ってもいいのかもしれない。
「良助、文化祭で暇があったら茶道部も覗いてみるといい。私が応対できるかはわからないが、美味しいお茶は飲めるぞ」
「わかりました。楽しみにしてます」
「もちろん、良助の文芸部も覗きに行くからな」
「それは……ご自由に」
「なんでちょっと嫌そうなんだ。日記以外に何書くのか気になってるんだぞ?」
意外にも喰い付いてくる清水先輩に僕は適当にかわしておく。作品は誰かに見せるために書いているものだけど、いざ知り合いに見られるのは恥ずかしい。
それはそれとして、清水先輩の茶道部に対するあれこれが聞けたのはいい時間だった。
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