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1年生夏休み

8月26日(木)曇り 松永浩太との夏休み 

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 夏休み37日目。昨日から連続して我が家に客人がやって来た。

「いやー 課題終わんないわー」

 しかもここに来た理由は同じだった。昨日、原田さんを手助けをした理由の一つには原田さんの状況に既視感があったからだ。松永が夏休みの終盤に僕の家で宿題をするのは小学校からの恒例行事である。

「終わらないって……それならもっと早くやればいいだろうに」

「これでも夏休みは忙しかったからなー」

 そう言われるとテニス部かつ彼女持ちの松永と僕とでは事情が……いや、関係ない。どんな事情があろうと課題は平等にあるものだ。やってないのが悪い。

「毎回言ってるけど、手伝うわけじゃなくてわからないところ教えるだけだからな」

「それはもちろん。自分の家でやったら全然進まないけど、りょーちゃんの家ならなんか進むんだよね」

「まぁ、普段と違う場所の方がやりやすいのはわかる」

「そういうわけだからまずは飲み物貰っていい?」

 うちは喫茶店じゃないぞとツッコミながら僕は冷蔵庫へ飲み物を取りに行く。それ自体は夏休みじゃなくても松永が遊びに来た時恒例のことだけど、今日は特に丁重にもてなさなければならない。

「サンキュー」

「なぁ、松永、一つ相談があるんだ」

「えっ!? なになに? りょーちゃんが相談なんて珍しい」

「それが……」

 僕は飲み物を渡しながら本田くんに頼まれた件について話始める。もちろん、今から松永も参加してくれというわけじゃなく、この場合に僕はどうしたらいいかという話だ。正直、頼める先は残り一つしかないし、そこを断られると完全に詰んでいる。

「なるほどねー 俺の知らないうちにそんな予定が。でもさ、りょーちゃん」

「な、何?」

「考え過ぎだと思うよ。別にりょーちゃんもそこで恋愛成就させるわけじゃないんだから」

「そ、そりゃそうだけど……」

「俺はりょーちゃんが清水さんとか他の人に対してどんな風に接してるか知らないけど、普段のりょーちゃんなら理由さえ話せば、変に思われることはないんじゃないかなぁ」

 松永からそう言われると……何だか心強い。僕が今回のことで一番嫌だと思っているのはこのことで変な空気になってしまうことだ。客観的に大丈夫と言われれば僕も安心して行動できる。

「それにもし誘えなくてもそれはそれで仕方ないし」

「う、うん。他に候補を見つけろと言われても……」

「いや、出しゃばって手伝ってる俺が言うのもなんだけど、あくまでぽんちゃんが主体なんだからりょーちゃんは手伝えたらちょっと手伝ってやるかーくらい気持ちいいんだよ」

「そ、そうか」

「案外、りょーちゃんとか他の人がいない方がぽんちゃんも男見せなきゃってなるかもよ?」

 それはだいぶポジティブな願望だけど、僕は少々考え過ぎていたのかもしれない。本田くんから最初に聞いたからやらなきゃいけないと思っていたけど、最終的にどうしていくかは本田くん次第だ。

「じゃあ、お喋りはこれくらいにして課題進めますかー」

「ありがとう、松永。おかげで助かった」

「いやいや、今日も見張ってくれるんだし、これくらないなら。でも、読書感想文を間に合わせる方法なら考えてくれてもいいよ?」

「……これから毎晩30分ずつ読めば短編の話くらいは読み終えられると思う」

「えー そこはもっと裏ワザ的な……」

「横着するな。さぁ、今日でなるべく終わらせてくれよ」

 課題の方は話が別なので厳しくいくけど、松永に相談したおかげで僕の悩みはほとんど解決した。やっぱり悩みや愚痴を聞いてくれる誰かがいるのはありがたいことだ。
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