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1年生夏休み
8月8日(日)晴れ時々曇り 岸本路子との夏創作その3
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夏休み19日目。昨日に課題は終わり見えていると言ったばかりけど、もう一つの課題については少々難航している。
それは本題の小説……の方ではなく、追加で出された短歌の方だ。水原先輩から渡して貰った資料に目を通したけど、いざ考えていくと上手くまとまらない。三十一音は数字だけで見れば多くないの、それを五と七に区切ってなおかつ連続した文にすることは初めての僕にとって難しいことだった。小学校の頃に国語の授業で俳句や詩を詠んだ覚えはあるけど、それとはまた違う感覚だ。
森本先輩曰く、見たまま感じたまま書けばいいらしいけど、それが何とも難しい。そういえば昨日、僕が大倉くんに言った読書感想文の書き方でも同じような言い方をしてしまった。その後に少し説明したけど、もしかしたらこういう自分のフィーリングを信じてという言い方はわかってる側の意見で、聞いた側はわかりづらいのかもしれない。
それはそれとして、煮詰まってしまった僕は……岸本さんに聞いてみることにした。7月中は部活で落ち合うために一定の頻度で連絡していたけど、この一週間は一度もやり取りをしていない。LINEで気軽に連絡していいと言われてたのに、僕からはまだ遠慮がちになっている。なかなか改善しない僕の悪いところだ。
だから、これもまたいい機会と思って僕は「岸本さん、短歌ってもうできた?」というメッセージを送信した。
それから少し待つ……かと思いきや、1分も経たないうちに返信がきた。
――お
「お?」
……って何の略称だろう。こういう新しい言葉はみんなが取り入れた後に知るタイプだから全然わからない。オッケーとか、終わったとかの意味だろうか。そんなことを考えていると、続けてメッセージがきた。
――ごめんなさい。
――おはようございます。産賀くん。
どうやらただの入力ミスだったらしい。そういえば、部室へ行く時のやり取りはいつも朝だったから挨拶から始まっていた。それ以外のメッセージだと挨拶から入るべきか未だに迷うことはあるけど、岸本さんの場合は挨拶からの方がいいみたいだ。
――短歌はまだ終わっていません。
――産賀くんはどうでしょうか?
そう聞かれたので、僕は全く進んでないと答える。岸本さんは普段も丁寧な喋りだと思っているけど、文面だと更に丁寧になって、若干畏まっている風に見える。
――そうですか。
そこで岸本さんの返信は一旦止まった。さて、ここからどうするべきだろうか。岸本さんならできていそうとちょっとだけ期待していたけど、二人ともできていないならこの話はここで終わってしまう。でも、せっかく声をかけたのだから何か僕からお誘いをしてみてもいいかもしれない。
「岸本さんが良かったら、図書館で資料探しをしてみませんか……いや、僕まで畏まってないか? 一緒に資料を探してみない……ちょっと砕け過ぎかな?」
数分考えて、結局は最初の文章を打ち込んで送信する。そして、送った途端、本当に誘って良かったのかちょっと心配になってきた。いつも岸本さんから色々言ってくれるお礼も含めたつもりだけど、やっぱり男子から女子をお誘いするのは変な意味に取られてしまう可能性もある。
だけど、僕が思ったよりも早く返事が返ってきた。
――わ
「わ?」
いったい何の略称……じゃなくて、たぶん打ち間違いだ。
――わたしで良ければ。
――わたしも気になってたことだったから。
――ごめんなさい。何度も。
――ぜひ行きたいです。
急なことだったので焦らせてしまったみたいだけど、どうやら一緒に行ってもいいようだ。僕は内心ホッとする。誘い下手ではあるけど、一歩踏み出せた気分だった。
それから日程を相談すると、図書館へ行くのは3日後の水曜日に決まった。それまでにも考えておくつもりだけど、短歌が出来上がるかどうかはその日にかかっているかもしれない。
それは本題の小説……の方ではなく、追加で出された短歌の方だ。水原先輩から渡して貰った資料に目を通したけど、いざ考えていくと上手くまとまらない。三十一音は数字だけで見れば多くないの、それを五と七に区切ってなおかつ連続した文にすることは初めての僕にとって難しいことだった。小学校の頃に国語の授業で俳句や詩を詠んだ覚えはあるけど、それとはまた違う感覚だ。
森本先輩曰く、見たまま感じたまま書けばいいらしいけど、それが何とも難しい。そういえば昨日、僕が大倉くんに言った読書感想文の書き方でも同じような言い方をしてしまった。その後に少し説明したけど、もしかしたらこういう自分のフィーリングを信じてという言い方はわかってる側の意見で、聞いた側はわかりづらいのかもしれない。
それはそれとして、煮詰まってしまった僕は……岸本さんに聞いてみることにした。7月中は部活で落ち合うために一定の頻度で連絡していたけど、この一週間は一度もやり取りをしていない。LINEで気軽に連絡していいと言われてたのに、僕からはまだ遠慮がちになっている。なかなか改善しない僕の悪いところだ。
だから、これもまたいい機会と思って僕は「岸本さん、短歌ってもうできた?」というメッセージを送信した。
それから少し待つ……かと思いきや、1分も経たないうちに返信がきた。
――お
「お?」
……って何の略称だろう。こういう新しい言葉はみんなが取り入れた後に知るタイプだから全然わからない。オッケーとか、終わったとかの意味だろうか。そんなことを考えていると、続けてメッセージがきた。
――ごめんなさい。
――おはようございます。産賀くん。
どうやらただの入力ミスだったらしい。そういえば、部室へ行く時のやり取りはいつも朝だったから挨拶から始まっていた。それ以外のメッセージだと挨拶から入るべきか未だに迷うことはあるけど、岸本さんの場合は挨拶からの方がいいみたいだ。
――短歌はまだ終わっていません。
――産賀くんはどうでしょうか?
そう聞かれたので、僕は全く進んでないと答える。岸本さんは普段も丁寧な喋りだと思っているけど、文面だと更に丁寧になって、若干畏まっている風に見える。
――そうですか。
そこで岸本さんの返信は一旦止まった。さて、ここからどうするべきだろうか。岸本さんならできていそうとちょっとだけ期待していたけど、二人ともできていないならこの話はここで終わってしまう。でも、せっかく声をかけたのだから何か僕からお誘いをしてみてもいいかもしれない。
「岸本さんが良かったら、図書館で資料探しをしてみませんか……いや、僕まで畏まってないか? 一緒に資料を探してみない……ちょっと砕け過ぎかな?」
数分考えて、結局は最初の文章を打ち込んで送信する。そして、送った途端、本当に誘って良かったのかちょっと心配になってきた。いつも岸本さんから色々言ってくれるお礼も含めたつもりだけど、やっぱり男子から女子をお誘いするのは変な意味に取られてしまう可能性もある。
だけど、僕が思ったよりも早く返事が返ってきた。
――わ
「わ?」
いったい何の略称……じゃなくて、たぶん打ち間違いだ。
――わたしで良ければ。
――わたしも気になってたことだったから。
――ごめんなさい。何度も。
――ぜひ行きたいです。
急なことだったので焦らせてしまったみたいだけど、どうやら一緒に行ってもいいようだ。僕は内心ホッとする。誘い下手ではあるけど、一歩踏み出せた気分だった。
それから日程を相談すると、図書館へ行くのは3日後の水曜日に決まった。それまでにも考えておくつもりだけど、短歌が出来上がるかどうかはその日にかかっているかもしれない。
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