上 下
93 / 942
1年生1学期

7月5日(月)雨のち曇り 大山亜里沙との会話その14

しおりを挟む
 テスト2日前の月曜日。水曜日からテストが始まるけど、通常授業からいきなりテストに切り替わるのは何だかやりづらさを感じてしまう。僕は土日が終わった次の週で全てのテストが終わった方が楽だと思っている。その分、前日の土日はがんばらないといけないけど。

「うぶクン、今回はアタシとテスト勝負しないの?」

 1時間目が終わった休み時間、大山さんはそう聞いてきた。特に前振りもなく言われたから僕はちょっと驚く。

「テスト勝負って毎回やる感じなの?」

「だって、前回アタシが勝ったままだからうぶクンもリベンジする機会が欲しいと思って」

「僕ってそんな闘争心溢れてる感じに見えるかな?」

「もー そこはノリ的な問題じゃん~」

 そう言われても前回はそれで返事をしたらお願い付きの勝負になってしまったんだ。今回は慎重にいかなくては。

「良ちゃんがやらないなら、オレと勝負するのはどうだ?」

「えっ? 本田と?」

 そんな僕と大山さんの会話に本田くんはさらりと混ざってきた。先週の件があったから本田くんに話を振ろうか迷っていたけど、本田くんから来てくれるなら何も問題ない。しかも勝負をしかけるなんてなかなか積極的だ。

「オレじゃ役不足か?」

「ううん、全然! アタシは競い合った方がやる気が出るだけだし。でも、本田がそう言うのちょっと意外かも?」

「本田くん、この前のテストの点数が僕と同じくらいだから、大山さんともいい勝負になると思う」

「へー、そうだったんだ」

 よし、今のは自然な感じでアシストできたんじゃないか? この勝負で二人の距離が近づく……かどうかはわからないけど、少なくとも話すきっかけにはなりそうだ。

「じゃあ、今回は本田と勝負ね! それで、勝った方がお願いするのあり? なし?」

 あれ? 僕の時には問答無用でありだったのに、本田くんには聞くのか。どっちがいいかわからないけど、扱いの差を感じる。

「ありでいいよ。その方が勝負のしがいがあるんだろ?」

「わかってるぅ! じゃあ、何お願いするか考えとくね」

「ああ、オレも考えるよ。勝つつもりで」

「あー!? 言ったな~」

 また聞く側に回っているけど、僕が感じている以上に二人は仲良くなっているのかもしれない。そう考えると、中学の時の本田くんがあまり話せなかったのは単にきっかけがなかっただけに想える。

「うぶクンはどっちが勝つと思う?」

「うーん……前回のままでいくと、大山さんが勝ちそう」

「じゃあ、うぶクンはアタシの味方だね!」

「良ちゃん、参加してないからって余裕だな」

「いやいや、本田くんもがんばって」

 本当はまた何かお願いされると困るから回避できて良かったと思っているし、二人がお互いにどんなお願いをするだろうかと考えるほど余裕だ。やっぱり勝負事は外野で見ているのが一番楽しいと思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼女は、2.5次元に恋をする。

おか
青春
椿里高校の商業科1年、椋輪 蓮(むくわ れん)。 ある日の放課後、蓮は教室で『孤高の秀才』小石 輝(こいし てる)と遭遇し——!? 笑あり涙あり(あるのか?)の青春ラブコメディー。

少女が過去を取り戻すまで

tiroro
青春
小学生になり、何気ない日常を過ごしていた少女。 玲美はある日、運命に導かれるように、神社で一人佇む寂しげな少女・恵利佳と偶然出会った。 初めて会ったはずの恵利佳に、玲美は強く惹かれる不思議な感覚に襲われる。 恵利佳を取り巻くいじめ、孤独、悲惨な過去、そして未来に迫る悲劇を打ち破るため、玲美は何度も挫折しかけながら仲間達と共に立ち向かう。 『生まれ変わったら、また君と友達になりたい』 玲美が知らずに追い求めていた前世の想いは、やがて、二人の運命を大きく変えていく──── ※この小説は、なろうで完結済みの小説のリメイクです ※リメイクに伴って追加した話がいくつかあります  内容を一部変更しています ※物語に登場する学校名、周辺の地域名、店舗名、人名はフィクションです ※一部、事実を基にしたフィクションが入っています ※タグは、完結までの間に話数に応じて一部増えます ※イラストは「画像生成AI」を使っています

檸檬色に染まる泉

鈴懸 嶺
青春
”世界で一番美しいと思ってしまった憧れの女性” 女子高生の私が、生まれてはじめて我を忘れて好きになったひと。 雑誌で見つけたたった一枚の写真しか手掛かりがないその女性が…… 手なんか届かくはずがなかった憧れの女性が…… いま……私の目の前ににいる。 奇跡的な出会いを果たしてしまった私の人生は、大きく動き出す……

彼ノ女人禁制地ニテ

フルーツパフェ
ホラー
古より日本に点在する女人禁制の地―― その理由は語られぬまま、時代は令和を迎える。 柏原鈴奈は本業のOLの片手間、動画配信者として活動していた。 今なお日本に根強く残る女性差別を忌み嫌う彼女は、動画配信の一環としてとある地方都市に存在する女人禁制地潜入の動画配信を企てる。 地元住民の監視を警告を無視し、勧誘した協力者達と共に神聖な土地で破廉恥な演出を続けた彼女達は視聴者たちから一定の反応を得た後、帰途に就こうとするが――

18禁NTR鬱ゲーの裏ボス最強悪役貴族に転生したのでスローライフを楽しんでいたら、ヒロイン達が奴隷としてやって来たので幸せにすることにした

田中又雄
ファンタジー
『異世界少女を歪ませたい』はエロゲー+MMORPGの要素も入った神ゲーであった。 しかし、NTR鬱ゲーであるためENDはいつも目を覆いたくなるものばかりであった。 そんなある日、裏ボスの悪役貴族として転生したわけだが...俺は悪役貴族として動く気はない。 そう思っていたのに、そこに奴隷として現れたのは今作のヒロイン達。 なので、酷い目にあってきた彼女達を精一杯愛し、幸せなトゥルーエンドに導くことに決めた。 あらすじを読んでいただきありがとうございます。 併せて、本作品についてはYouTubeで動画を投稿しております。 より、作品に没入できるようつくっているものですので、よければ見ていただければ幸いです!

光のもとで1

葉野りるは
青春
一年間の療養期間を経て、新たに高校へ通いだした翠葉。 小さいころから学校を休みがちだった翠葉は人と話すことが苦手。 自分の身体にコンプレックスを抱え、人に迷惑をかけることを恐れ、人の中に踏み込んでいくことができない。 そんな翠葉が、一歩一歩ゆっくりと歩きだす。 初めて心から信頼できる友達に出逢い、初めての恋をする―― (全15章の長編小説(挿絵あり)。恋愛風味は第三章から出てきます) 10万文字を1冊として、文庫本40冊ほどの長さです。

陰キャの陰キャによる陽に限りなく近い陰キャのための救済措置〜俺の3年間が青くなってしまった件〜

136君
青春
俺に青春など必要ない。 新高校1年生の俺、由良久志はたまたま隣の席になった有田さんと、なんだかんだで同居することに!? 絶対に他には言えない俺の秘密を知ってしまった彼女は、勿論秘密にすることはなく… 本当の思いは自分の奥底に隠して繰り広げる青春ラブコメ! なろう、カクヨムでも連載中! カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330647702492601 なろう→https://ncode.syosetu.com/novelview/infotop/ncode/n5319hy/

意味がわかると怖い話

邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き 基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。 ※完結としますが、追加次第随時更新※ YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*) お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕 https://youtube.com/@yuachanRio

処理中です...