産賀良助の普変なる日常

ちゃんきぃ

文字の大きさ
上 下
81 / 942
1年生1学期

6月23日(水)晴れ時々雨 本田真治の恋煩いその3

しおりを挟む
「うぶクン、ノート……」

「あっ、ごめん。ちょっとお手洗い行きたいから机の上のやつ、勝手に使っといていいよ」

 その日は珍しくお腹の調子が悪かった……わけではなく、実験的なことをしてみた。それは最近は本田くんを巻き込んで大山さんと話している時間で、僕が席を外してみるというものだ。もちろん、この実験は本田くんに相談されたわけじゃなく、僕が独断で行っている。

 劇的に進展して欲しいと思っているわけじゃないけど、僕が隣の席にいると大山さんの男子との会話はひとまとめにされてしまう傾向がある(元々僕が巻き込んでいるのもあるが)。そうなると、本田くんが大山さんとサシで喋ると言うのは結構難しい状況なのだ。

 そこで、この休み時間に僕が抜けることで、どのような結果が出るか見てみようと思ったのだ。

 一応、本当にトイレへ行った後、僕は教室に入らず、扉の横の窓を少し空けて、隠れつつ待機する。

「う、産賀くん、どうしたの……?」

「大倉くん、ちょっとそこ動かないでいてくれる?」

 首を傾げながらもそのまま座ってくれた大倉くんを隠れ蓑にしつつ、真ん中の大山さんと本田くんがいる場所を見る。

(ちょうど僕のノートを返して……おおっ、本田くんも後ろを振り向いてるぞ! そのまま……話してる!)

 ここからでは全く会話の内容はわからないけど、見事に二人きりの会話が成立した! ……だからどうだと言われたら何もないんだけど、僕がいないタイミングなら二人が会話することがわかったのは本田くんにとっても大きな収穫なんじゃないだろうか。

 それからチャイムがなるギリギリまで大倉くんに適当な言い訳をしてから僕は席に戻った。

 すると、本田くんは僕を見るなりすぐに声をかける。

「良ちゃん、大丈夫だった?」

「えっ? 何が?」

「いや、随分長く行ってたからお腹壊してたのかと」

「あー……うん。ちょっとだけ調子悪かったけど、大丈夫。すっきりした」

「なら良かった。良ちゃん、お腹弱いタイプだったんだ」

 本田くんと大山さんに思わぬ誤認をされてしまうことになったけど、それを含めて話題になったならこの実験は成功だろう。がんばれ、本田くん。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~

kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。 一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた! 宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!? ※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

切り札の男

古野ジョン
青春
野球への未練から、毎日のようにバッティングセンターに通う高校一年生の久保雄大。 ある日、野球部のマネージャーだという滝川まなに野球部に入るよう頼まれる。 理由を聞くと、「三年の兄をプロ野球選手にするため、少しでも大会で勝ち上がりたい」のだという。 そんな簡単にプロ野球に入れるわけがない。そう思った久保は、つい彼女と口論してしまう。 その結果、「兄の球を打ってみろ」とけしかけられてしまった。 彼はその挑発に乗ってしまうが…… 小説家になろう・カクヨム・ハーメルンにも掲載しています。

乙男女じぇねれーしょん

ムラハチ
青春
 見知らぬ街でセーラー服を着るはめになったほぼニートのおじさんが、『乙男女《おつとめ》じぇねれーしょん』というアイドルグループに加入し、神戸を舞台に事件に巻き込まれながらトップアイドルを目指す青春群像劇! 怪しいおじさん達の周りで巻き起こる少女誘拐事件、そして消えた3億円の行方は……。 小説家になろうは現在休止中。

処理中です...