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1年生1学期
6月14日(月)曇り時々晴れ 清水夢愛との時間その6
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今日はお昼ご飯の確保のため、気になっていた購買へ行くことにした。母さんが弁当を作れない日はコンビニで買うばかりだったので、利用するのは今回が初めてだ。
1階にある校内の購買は小さな窓口で、ドラマやアニメで描写されるような盛況する場所ではない。それでも毎日利用する人は一定数いるらしく、ちゃんと商品を選びたいなら3時間目終わりの休み時間がちょうど入荷するタイミングでおすすめと利用したクラスメイトから言われた。
そのアドバイス通り、3時間目終わりの休み時間で購買へ向かうと……初めて行く珍しい場所だと会ってしまう人が、窓口から少し離れた位置で仁王立ちしていた。
「おお、良助。こんなところで珍しいな」
様子を見るため隣に行くと、清水先輩は顔だけこちらへ向けてそんなことを言う。
「こんにちは。清水先輩もお昼ご飯買いに来たんですか?」
「ああ。昼食はここかコンビニでいつも買っているからな」
なるほど。それなら初めて来る僕を見て珍しいと言うのも納得がいく。僕からすればまたも偶然の出会いだと思っていたけど、清水先輩からすれば購買や少し前に会ったコンビニはいつもの行動範囲だったのか。
「それで……どうして遠目に購買を見てるんですか?」
「買う時に迷ったらいけないからな」
「清水先輩、結構選ぶのに迷うタイプなんですね」
「いや、それがだな……今日入っている食品は全て一度は食べたものなんだ」
「あー……何回も来てるから食べ飽きてると」
「時々新しいものも出ているが、基本はそれほど変わらない。だが、一度食べたものを何回も食べるのは面白くない」
「な、なるほど」
面白くないという表現はちょっとわからないけど、長く食べ続けていて同じものに飽きてしまう感覚はわかる。でも、選択肢がないと結局は定番のものになってしまい、それが繰り返されると今の清水先輩の状態になってしまうこともあるものだ。
「良助は何を買うんだ?」
「商品を見てからじゃないとわからないですけど、パン系にしようかと。何かおすすめあったりします?」
「ふむ。パンならどれも美味しいぞ」
「そ、そうですか……」
もしかして清水先輩は本当に面白くないから迷っているだけで、食べ物自体のこだわりはそんなにないのかもしれない。このまま清水先輩を見ていても仕方ないので、僕は自分の目で確かめに行く。
窓口に行くと、店員の後ろにはいくつかの文房具とトレーに入ったおにぎりやパン、小さなお弁当があった。一人が買う量にも寄るけど、一日の入荷数はだいたいひとクラスの半分ほどのようだ。
それから僕はそれほど悩まず購入を終えた後、一応気になる清水先輩に声をかける。
「清水先輩、決まりました?」
「決まらん! 良助は結局何買ったんだ?」
「焼きそばパンとウインナーパンです。定番ですけど、見たことないパッケージでした」
「ああ、その二つも普通に美味しかった。……うーん」
「そろそろ決めないと休み時間が……」
「むむむ……仕方ない、今日は諦めるか」
「えっ? 諦めるって……」
「今日の昼食はなしということだが?」
「そういう意味ですか!? いやいや、食べておかないと」
「一回くらい抜いても何ともないだろ」
「そうかもしれないですけど……」
後から考えれば女の子がダイエットとしてお昼を食べないのは珍しくないのかもしれないし、たぶん清水先輩は桜庭先輩と一緒に食べるのだから、何も買っていなくても桜庭先輩が何とかしていたに違いない。でも、この時の僕は何を焦っていたのかそんなところまで頭が回らなかった。
「わかりました。清水先輩、これ食べてください」
僕はそう言って焼きそばパンを清水先輩に手渡す。
「え? これ良助の昼食じゃ……」
「食べないと5時間目以降に支障が出ますから! それじゃあ、僕は戻ります!」
そのまま急いで教室に戻ったから清水先輩がどんな反応をしていたかわからない。でも、話しかけられてしまったからには知り合いがこのまま昼食を食べない選択をされるのはなんとなく嫌だったのだ。清水先輩なら本当に食べそうにない気がするから余計に。
「りょーちゃん、パン一個で足りるの?」
「……もう一個買えばよかった」
今までの人生で一番いらないお節介をした気がするけど……あの場の僕が良いと思ったのなら良しとしよう。
1階にある校内の購買は小さな窓口で、ドラマやアニメで描写されるような盛況する場所ではない。それでも毎日利用する人は一定数いるらしく、ちゃんと商品を選びたいなら3時間目終わりの休み時間がちょうど入荷するタイミングでおすすめと利用したクラスメイトから言われた。
そのアドバイス通り、3時間目終わりの休み時間で購買へ向かうと……初めて行く珍しい場所だと会ってしまう人が、窓口から少し離れた位置で仁王立ちしていた。
「おお、良助。こんなところで珍しいな」
様子を見るため隣に行くと、清水先輩は顔だけこちらへ向けてそんなことを言う。
「こんにちは。清水先輩もお昼ご飯買いに来たんですか?」
「ああ。昼食はここかコンビニでいつも買っているからな」
なるほど。それなら初めて来る僕を見て珍しいと言うのも納得がいく。僕からすればまたも偶然の出会いだと思っていたけど、清水先輩からすれば購買や少し前に会ったコンビニはいつもの行動範囲だったのか。
「それで……どうして遠目に購買を見てるんですか?」
「買う時に迷ったらいけないからな」
「清水先輩、結構選ぶのに迷うタイプなんですね」
「いや、それがだな……今日入っている食品は全て一度は食べたものなんだ」
「あー……何回も来てるから食べ飽きてると」
「時々新しいものも出ているが、基本はそれほど変わらない。だが、一度食べたものを何回も食べるのは面白くない」
「な、なるほど」
面白くないという表現はちょっとわからないけど、長く食べ続けていて同じものに飽きてしまう感覚はわかる。でも、選択肢がないと結局は定番のものになってしまい、それが繰り返されると今の清水先輩の状態になってしまうこともあるものだ。
「良助は何を買うんだ?」
「商品を見てからじゃないとわからないですけど、パン系にしようかと。何かおすすめあったりします?」
「ふむ。パンならどれも美味しいぞ」
「そ、そうですか……」
もしかして清水先輩は本当に面白くないから迷っているだけで、食べ物自体のこだわりはそんなにないのかもしれない。このまま清水先輩を見ていても仕方ないので、僕は自分の目で確かめに行く。
窓口に行くと、店員の後ろにはいくつかの文房具とトレーに入ったおにぎりやパン、小さなお弁当があった。一人が買う量にも寄るけど、一日の入荷数はだいたいひとクラスの半分ほどのようだ。
それから僕はそれほど悩まず購入を終えた後、一応気になる清水先輩に声をかける。
「清水先輩、決まりました?」
「決まらん! 良助は結局何買ったんだ?」
「焼きそばパンとウインナーパンです。定番ですけど、見たことないパッケージでした」
「ああ、その二つも普通に美味しかった。……うーん」
「そろそろ決めないと休み時間が……」
「むむむ……仕方ない、今日は諦めるか」
「えっ? 諦めるって……」
「今日の昼食はなしということだが?」
「そういう意味ですか!? いやいや、食べておかないと」
「一回くらい抜いても何ともないだろ」
「そうかもしれないですけど……」
後から考えれば女の子がダイエットとしてお昼を食べないのは珍しくないのかもしれないし、たぶん清水先輩は桜庭先輩と一緒に食べるのだから、何も買っていなくても桜庭先輩が何とかしていたに違いない。でも、この時の僕は何を焦っていたのかそんなところまで頭が回らなかった。
「わかりました。清水先輩、これ食べてください」
僕はそう言って焼きそばパンを清水先輩に手渡す。
「え? これ良助の昼食じゃ……」
「食べないと5時間目以降に支障が出ますから! それじゃあ、僕は戻ります!」
そのまま急いで教室に戻ったから清水先輩がどんな反応をしていたかわからない。でも、話しかけられてしまったからには知り合いがこのまま昼食を食べない選択をされるのはなんとなく嫌だったのだ。清水先輩なら本当に食べそうにない気がするから余計に。
「りょーちゃん、パン一個で足りるの?」
「……もう一個買えばよかった」
今までの人生で一番いらないお節介をした気がするけど……あの場の僕が良いと思ったのなら良しとしよう。
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