63 / 942
1年生1学期
6月5日(土)曇り 清水夢愛との時間その4
しおりを挟む
「良助、お出かけか?」
遡ること数分前。明莉のテストも終わり完全な休日が戻ってきた僕は有意義な休日にするため出かけることにした。目的地はゲームショップもしくは本屋だ。特に何か買う用事がなくてもこの2店舗は適当に見ているだけで楽しい気分になる。たまに掘り出し物が見つかることもあるし、何もない休日ではお決まりのお出かけパターンだった。
それから自転車で自宅を出て店が集まる場所へ向かい始めた矢先、僕は清水先輩とエンカウントを果した。
「清水先輩……こんにちは」
そして、冒頭に戻る。この辺りは普段の行動範囲だけに、こんなところで会うと思ってなかった。これは凄い偶然かもしれない。
「今日はいい天気だから散歩しててな。適当に目的地を考えていたら、そういえば前に良助の家がこっちの方にあると聞いたのを思い出して歩いていたら……」
「偶然じゃなかった!? その散歩の仕方ちょっと怖いからやめてください!」
ぎりぎり知り合いだからセーフだったけど、やる人とやられる人がちょっと変わっていたら何らかの事件になっていたかもしれない。
「どこか怖いんだ? 散歩は自由気ままに歩くものだろう」
「ま、まぁ、そうですけど……そもそも西中の方向から歩いたのなら結構遠かったのでは」
「お? 良助は私の出身中学知ってるのか?」
「えっ? 桜庭先輩に教えて貰ったんですけど……」
「おお、あれから小織にも会っていたのか」
純粋に驚く清水先輩を見て、桜庭先輩は僕と会った話を清水先輩にはしていないことがわかった。まぁ、内容が清水先輩に関わる……どちらかといえばネガティブなことだったから喋らなかったのかもしれない。
「はい。清水先輩と初めて会った図書館でたまたま。その時にここまでは自転車でそこそこかかるって言ってた気がします」
「そうらしいな。私は自転車乗れないからわからないが」
「ええっ!? の、乗れないって」
「いや、語弊があるな。補助輪付きならたぶん乗れる」
それなら誰でも乗れるとツッコむ前に、その言い方からして自転車自体に乗ったことがなさそうだ。時々そういう人がいるとは聞くけど、実際に会うと結構びっくりする。お世辞にも交通機関が整っているとは言いづらいこの周辺で自転車は重要な足なのに。
「じゃあ、桜庭先輩と図書館に来た時は……まさか二人乗りを?」
「いや、その時は小織のおばさんに送って貰った」
「さすがにそうですよね」
「そうだ。二人乗りと言えば、今日は良助の……」
「だから二人乗りは駄目なんですって」
「むー 今のは良助から言い出したんだぞ」
初めて見るふくれっ面に僕はちょっとだけドキッとした。忘れていたけど、この人は我が高校が誇る五大美人で……それを置いといても眩しいタイプの人ではある。
「それより引き留めて悪かったな」
「えっ? ああ、それは大丈夫ですけど……お言葉に甘えてそろそろ行きます」
「ちなみにどこへ行くんだ?」
「本屋かゲームショップの予定です」
「ほー この辺の本屋は知ってるがゲームショップか。行った覚えがないな」
「そうなんですね。それじゃあ……」
「どの辺りにあるんだ?」
解放してくれる流れだと思ったら、妙に喰いつかれてしまった。いつの間にか自転車の傍にぴったりと近寄られていたので、適当に流して去れそうもない。
「ここから一番近いとこだったらこのままの方向に行って、自転車なら10分、徒歩なら20分くらいです。千円カットの散髪屋とか古着屋がある方で……」
「ふむふむあの辺りだな。散歩ついでにちょっと行ってみるか」
「清水先輩もゲームするんですね」
「うーん……家にゲーム機は一通りあるから、気が向いた時にはやる感じだ。それで良助はどっちに行くんだ?」
「えっと……それは」
「ゲームショップなら行き先は同じだな」
一応言っておくと清水先輩は圧をかけているわけじゃなく、恐らく純粋に聞いているだけだ。だから、僕が本屋に行く選択をすれば、当初の予定通りゆるりとした休日を過ごせる。
「……ゲームショップに行きます」
「おお! だったら一緒に行こう。良助のおすすめも聞きたいからな」
「はい。でも、歩いてですから20分くらいかかりますよ」
「私が走ってもいいんだぞ?」
「それは僕が嫌なので歩きます」
それから清水先輩の独特のゲーム感を聞きながらゲームショップへ向かうことになった。岸本さんの件から考えると、僕の方はまだ遠慮気味だけど、清水先輩から見た僕は友達の一人になりつつあるのかもしれない。それでも、桜庭先輩の言った事が正しいのならこの関係性は一過性のものになってしまう。それが惜しいかどうかは……まだ僕の中ではっきりしていない。
ちなみに、清水先輩はゲームショップに着いてから10分足らずで「堪能したから帰る」と言って別れることになったとさ。
遡ること数分前。明莉のテストも終わり完全な休日が戻ってきた僕は有意義な休日にするため出かけることにした。目的地はゲームショップもしくは本屋だ。特に何か買う用事がなくてもこの2店舗は適当に見ているだけで楽しい気分になる。たまに掘り出し物が見つかることもあるし、何もない休日ではお決まりのお出かけパターンだった。
それから自転車で自宅を出て店が集まる場所へ向かい始めた矢先、僕は清水先輩とエンカウントを果した。
「清水先輩……こんにちは」
そして、冒頭に戻る。この辺りは普段の行動範囲だけに、こんなところで会うと思ってなかった。これは凄い偶然かもしれない。
「今日はいい天気だから散歩しててな。適当に目的地を考えていたら、そういえば前に良助の家がこっちの方にあると聞いたのを思い出して歩いていたら……」
「偶然じゃなかった!? その散歩の仕方ちょっと怖いからやめてください!」
ぎりぎり知り合いだからセーフだったけど、やる人とやられる人がちょっと変わっていたら何らかの事件になっていたかもしれない。
「どこか怖いんだ? 散歩は自由気ままに歩くものだろう」
「ま、まぁ、そうですけど……そもそも西中の方向から歩いたのなら結構遠かったのでは」
「お? 良助は私の出身中学知ってるのか?」
「えっ? 桜庭先輩に教えて貰ったんですけど……」
「おお、あれから小織にも会っていたのか」
純粋に驚く清水先輩を見て、桜庭先輩は僕と会った話を清水先輩にはしていないことがわかった。まぁ、内容が清水先輩に関わる……どちらかといえばネガティブなことだったから喋らなかったのかもしれない。
「はい。清水先輩と初めて会った図書館でたまたま。その時にここまでは自転車でそこそこかかるって言ってた気がします」
「そうらしいな。私は自転車乗れないからわからないが」
「ええっ!? の、乗れないって」
「いや、語弊があるな。補助輪付きならたぶん乗れる」
それなら誰でも乗れるとツッコむ前に、その言い方からして自転車自体に乗ったことがなさそうだ。時々そういう人がいるとは聞くけど、実際に会うと結構びっくりする。お世辞にも交通機関が整っているとは言いづらいこの周辺で自転車は重要な足なのに。
「じゃあ、桜庭先輩と図書館に来た時は……まさか二人乗りを?」
「いや、その時は小織のおばさんに送って貰った」
「さすがにそうですよね」
「そうだ。二人乗りと言えば、今日は良助の……」
「だから二人乗りは駄目なんですって」
「むー 今のは良助から言い出したんだぞ」
初めて見るふくれっ面に僕はちょっとだけドキッとした。忘れていたけど、この人は我が高校が誇る五大美人で……それを置いといても眩しいタイプの人ではある。
「それより引き留めて悪かったな」
「えっ? ああ、それは大丈夫ですけど……お言葉に甘えてそろそろ行きます」
「ちなみにどこへ行くんだ?」
「本屋かゲームショップの予定です」
「ほー この辺の本屋は知ってるがゲームショップか。行った覚えがないな」
「そうなんですね。それじゃあ……」
「どの辺りにあるんだ?」
解放してくれる流れだと思ったら、妙に喰いつかれてしまった。いつの間にか自転車の傍にぴったりと近寄られていたので、適当に流して去れそうもない。
「ここから一番近いとこだったらこのままの方向に行って、自転車なら10分、徒歩なら20分くらいです。千円カットの散髪屋とか古着屋がある方で……」
「ふむふむあの辺りだな。散歩ついでにちょっと行ってみるか」
「清水先輩もゲームするんですね」
「うーん……家にゲーム機は一通りあるから、気が向いた時にはやる感じだ。それで良助はどっちに行くんだ?」
「えっと……それは」
「ゲームショップなら行き先は同じだな」
一応言っておくと清水先輩は圧をかけているわけじゃなく、恐らく純粋に聞いているだけだ。だから、僕が本屋に行く選択をすれば、当初の予定通りゆるりとした休日を過ごせる。
「……ゲームショップに行きます」
「おお! だったら一緒に行こう。良助のおすすめも聞きたいからな」
「はい。でも、歩いてですから20分くらいかかりますよ」
「私が走ってもいいんだぞ?」
「それは僕が嫌なので歩きます」
それから清水先輩の独特のゲーム感を聞きながらゲームショップへ向かうことになった。岸本さんの件から考えると、僕の方はまだ遠慮気味だけど、清水先輩から見た僕は友達の一人になりつつあるのかもしれない。それでも、桜庭先輩の言った事が正しいのならこの関係性は一過性のものになってしまう。それが惜しいかどうかは……まだ僕の中ではっきりしていない。
ちなみに、清水先輩はゲームショップに着いてから10分足らずで「堪能したから帰る」と言って別れることになったとさ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
公爵家の隠し子だと判明した私は、いびられる所か溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
実は、公爵家の隠し子だったルネリア・ラーデインは困惑していた。
なぜなら、ラーデイン公爵家の人々から溺愛されているからである。
普通に考えて、妾の子は疎まれる存在であるはずだ。それなのに、公爵家の人々は、ルネリアを受け入れて愛してくれている。
それに、彼女は疑問符を浮かべるしかなかった。一体、どうして彼らは自分を溺愛しているのか。もしかして、何か裏があるのではないだろうか。
そう思ったルネリアは、ラーデイン公爵家の人々のことを調べることにした。そこで、彼女は衝撃の真実を知ることになる。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
麗しのマリリン
松浦どれみ
青春
〜ニックネームしか知らない私たちの、青春のすべて〜
少女漫画を覗き見るような世界観。
2023.08
他作品やコンテストの兼ね合いでお休み中です。
連載再開まで今しばらくお待ちくださいませ。
【あらすじ】
私立清流館学園は学校生活をニックネームで過ごす少し変わったルールがある。
清流館高校1年2組では入学後の自己紹介が始まったところだった。
主人公のマリ、新堂を中心にクラスメイトたちの人間関係が動き出す1年間のお話。
片恋も、友情も、部活も、トラウマも、コンプレックスも、ぜんぶぜんぶ青春だ。
主要メンバー全員恋愛中!
甘くて酸っぱくてじれったい、そんな学園青春ストーリーです。
感想やお気に入り登録してくれると感激です!
よろしくお願いします!
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
愛すべきマリア
志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。
学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。
家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。
早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。
頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。
その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。
体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。
しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。
他サイトでも掲載しています。
表紙は写真ACより転載しました。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる