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1年生1学期
5月23日(日)晴れ 明莉との日常その8
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テストを明日に控えた日曜日。松永のように詰め込むわけじゃないけど、それでもこの時点で微妙に覚えきれていない暗記系は今日やテスト直前の夜に覚えることになる。僕は見るだけじゃ覚えられない自覚があるからルーズリーフに何回か書きながら暗記していた。
「あー……うー……」
一方、今日も同じ居間で勉強する明莉はとろけたスライムのようになっていた。暑さは迫っているけど、今日はそんなにとろけるほどじゃないはずなのに。
「そのあーうー言うのやめなさい」
「いー……おー……」
「そういう意味じゃない」
つい気になって絡んでしまったらもう無理だ。僕は一旦シャーペンを置く。
「どうしたんだ? 何かわからない問題あった?」
「そういうわけじゃないんだけど、やる気が……」
「明莉だって木曜からテストなんだからそうも言ってられないだろう」
「甘いね、りょうちゃん。あかりはまだ3日も猶予を残している!」
「長いと取るか短いと取るかは明莉次第だけど」
「……そんなにないかー」
そう言いながらも明莉はだらりとしていた。明莉は決して成績が悪いわけじゃないし、むしろいい方ではあるけど、テスト前はいつもこんな感じだ。お互いを見張るはずの居間での勉強なのに、その状態になると僕にまでデバフがかかってしまう。
「疲れてるなら自分の部屋に帰ってもいいんだぞ?」
「ひどいよ、りょうちゃん!? あかりのこと見捨てるの!?」
「とんでもない。明莉がピンチだったら右腕でも捧げる覚悟だ」
「それはちょっと重いかな……」
「……もちろん、冗談だ」
一瞬引かれた感じがしたので前言を撤回する。僕が見捨てる気はないのは本当だけど、さじ加減を間違えると父さんと同じ距離感になってしまうかもしれない。
「あかりのやる気スイッチどこにあるんだろう……」
「うーん……テスト後に何かご褒美を設置するとか」
「りょうちゃんおごってくれるの?」
「それは……いや、今回は無理だ」
「今回って別に前回も前々回もテストの時はおごってもらってないよー」
明莉に言い訳したいわけじゃなく、今回は大山さんとの勝負があるので下手なことは言えない。何を要求されるかわからないけど、場合によってはスイーツで勘弁して貰うつもりだから明莉と二重になったら大変だ。
「自分で買ってもいいじゃないか。いつもよりちょっと贅沢な買い物でも……」
「あかりは買いたい時に買うからなぁ~ ニンジンに釣られて走るウマにはなれないよー」
「じゃあ、今は勉強したくない時だから永遠に勉強できないやつじゃないか」
「りょうちゃん、名推理だね!」
まずい。このままいくとずっと明莉と楽しくお喋りすることになってしまう……いや、まずくはない。楽しいのはいいことだ。でも、昨日は気になることがあったせいで集中できていたと言われると、そうでもないし、こんなこと考えてる間も時間は過ぎて……
「…………」
「明莉?」
「………………」
「明莉ー」
「りょうちゃん、今はスイッチ入ってるから勉強させて」
「なんで!?」
「りょうちゃんのテスト勉強時間を少し無駄にできたと思ったら、なんかやらなきゃって思えた!」
「なんでひどいスイッチだ……」
まぁ、こんな風に気まぐれで明莉が勉強しだすのもいつも通りだったりする。本当は休憩時間を決めてこういう雑談をした方がいいんだけど、それができないから困ったものだ。
そして、時間を無駄にされた事実に再び気付いた僕も勉強を再開するのだった。
「あー……うー……」
一方、今日も同じ居間で勉強する明莉はとろけたスライムのようになっていた。暑さは迫っているけど、今日はそんなにとろけるほどじゃないはずなのに。
「そのあーうー言うのやめなさい」
「いー……おー……」
「そういう意味じゃない」
つい気になって絡んでしまったらもう無理だ。僕は一旦シャーペンを置く。
「どうしたんだ? 何かわからない問題あった?」
「そういうわけじゃないんだけど、やる気が……」
「明莉だって木曜からテストなんだからそうも言ってられないだろう」
「甘いね、りょうちゃん。あかりはまだ3日も猶予を残している!」
「長いと取るか短いと取るかは明莉次第だけど」
「……そんなにないかー」
そう言いながらも明莉はだらりとしていた。明莉は決して成績が悪いわけじゃないし、むしろいい方ではあるけど、テスト前はいつもこんな感じだ。お互いを見張るはずの居間での勉強なのに、その状態になると僕にまでデバフがかかってしまう。
「疲れてるなら自分の部屋に帰ってもいいんだぞ?」
「ひどいよ、りょうちゃん!? あかりのこと見捨てるの!?」
「とんでもない。明莉がピンチだったら右腕でも捧げる覚悟だ」
「それはちょっと重いかな……」
「……もちろん、冗談だ」
一瞬引かれた感じがしたので前言を撤回する。僕が見捨てる気はないのは本当だけど、さじ加減を間違えると父さんと同じ距離感になってしまうかもしれない。
「あかりのやる気スイッチどこにあるんだろう……」
「うーん……テスト後に何かご褒美を設置するとか」
「りょうちゃんおごってくれるの?」
「それは……いや、今回は無理だ」
「今回って別に前回も前々回もテストの時はおごってもらってないよー」
明莉に言い訳したいわけじゃなく、今回は大山さんとの勝負があるので下手なことは言えない。何を要求されるかわからないけど、場合によってはスイーツで勘弁して貰うつもりだから明莉と二重になったら大変だ。
「自分で買ってもいいじゃないか。いつもよりちょっと贅沢な買い物でも……」
「あかりは買いたい時に買うからなぁ~ ニンジンに釣られて走るウマにはなれないよー」
「じゃあ、今は勉強したくない時だから永遠に勉強できないやつじゃないか」
「りょうちゃん、名推理だね!」
まずい。このままいくとずっと明莉と楽しくお喋りすることになってしまう……いや、まずくはない。楽しいのはいいことだ。でも、昨日は気になることがあったせいで集中できていたと言われると、そうでもないし、こんなこと考えてる間も時間は過ぎて……
「…………」
「明莉?」
「………………」
「明莉ー」
「りょうちゃん、今はスイッチ入ってるから勉強させて」
「なんで!?」
「りょうちゃんのテスト勉強時間を少し無駄にできたと思ったら、なんかやらなきゃって思えた!」
「なんでひどいスイッチだ……」
まぁ、こんな風に気まぐれで明莉が勉強しだすのもいつも通りだったりする。本当は休憩時間を決めてこういう雑談をした方がいいんだけど、それができないから困ったものだ。
そして、時間を無駄にされた事実に再び気付いた僕も勉強を再開するのだった。
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