42 / 942
1年生1学期
5月15日(土)曇り 清水夢愛との時間その2
しおりを挟む
今週の土曜日も休みの分を補う午前授業だ。先週と違って5日間過ごした後の土曜授業だから少し面倒くささを感じるけど、いざ学校に来ると午前だけならすぐに終わってしまった。
「りょーちゃん、一緒に帰ろ?」
授業終わり、珍しく松永がそう言った。
「今日は部活ないのか?」
「顧問の先生、テスト重視するっぽいから今日でテスト勉強期間入りらしい」
「そうなんだ。それじゃあ、しっかり勉強しないとな」
「それとこれとは話が別で……」
そんな会話をしつつ、僕と松永は学校を後にした。松永とは幼稚園から付き合いだけど、下校まで一緒になることはそれほど多くない。中学になってからは松永は部活に行っていたし、僕はさっさと帰宅していたからこんな風にテストが近くならないと案外ない状況なのだ。
「りょーちゃんさ、下白石モネとモカのどっちが可愛いと思う?」
「またそれ系か……そもそも何となくで覚えてるからどっちがどっちかわからない」
「えー!? 全然違うじゃん。もしかして、双子だと思ってる感じ?」
「えっ? 名前的にそうかと……」
「私はモネだな。名前の響きがいい」
いきなり割り込まれた声に、僕と松永は足を止める。そして、僕はその声の主が誰であるからすぐにわかった。
「あれ? どうしたんだ、良助……とそのご友人」
何故か僕と松永よりもびっくりした顔で後ろにいたのはやはり清水先輩だった。今週はエンカウント率が高いと思いながら僕は当然の疑問を口にする。
「どうしたんだじゃないですよ。何をさらっと混ざってるんですか」
「いや、良助っぽいやつがいるから何となく付いて来た」
「僕っぽい人に何となくで付いて行かないでください……」
それほど自分が特徴的な後ろ姿をしている自信がないので尚更気を付けて欲しい。いや、違う。今日は松永と下校しているんだ。いきなり現れたこの人を説明しなければ。
「松永、この人は……」
「りょーちゃんのお友達ですか。いつものお世話になってます」
「世話というほどではないからそれほど気にしないでいいぞ」
いつの間にか清水先輩の方へ歩幅を合わせた松永が調子の良さそうなことを言って、清水先輩も調子の良さそうな返しをする。
「俺は松永浩太って言います。りょーちゃんとは幼稚園の頃からの仲です」
「ほう。それはかなり長い付き合いだな。私は清水夢愛だ。良助と会うのはこれで5回目になる」
「へー 5回も会ったならもういい仲だと思いますよー」
「うむ。私も十分知り合いのつもりだ」
「松永、ちょっと」
そのまま喋られると止まりそうにないので、僕は松永の腕を掴んで清水先輩との距離を取った。
「何普通に話してるんだ」
「それはこっちの台詞だよ、りょーちゃん。いつの間にこんな美人さん掴まえたの?」
「掴まえてない……むしろ捕まった感じだ」
「そういう自慢?」
「違う! だから、あの人は……」
「何話してるんだ?」
僕と松永のひそひそ話に清水先輩はまた割って入ってくる。駄目だ。この二人と同時に話すのは難し過ぎる。
「いやぁ、実は学校の三大美人の話をしてましてー もしかしたら先輩がその一人なんじゃないかって言ってたんです……りょーちゃんが」
そう思っている間に松永はとんでもないことを言った。僕が「おい!」と反応するも、松永は笑って返すばかりだ。こいつ、この状況を楽しんでやがる。
「んー? 三大美人はよく知らないが、確か私は学校の5本の指に入る美人だと聞いたことはあるぞ? 他が誰かは全然知らないが」
清水先輩の思わぬ回答に僕と松永は顔を見合わせる。何で聞いていた話よりも二人増えてるんだ。美人の判定が緩いのか、この学校が美人だらけなのか。
「さて、そろそろ帰ろうかな。では、また会おう、良助……とそのご友人」
そんな疑問を残して清水先輩は嵐のように去っていった。ここに付いてくるまでが帰宅のついでじゃないなら、本当に何で付いて来たんだ。
「面白い人だったな~」
「いや、面白いというよりは厄介な感じが……」
「それより、りょーちゃん。やっぱり会ってるじゃん、三大美人改め五大美人の清水さん」
「松永が話してた人と同じって確証がなかったから……隠すつもりじゃなかった、ごめん」
「別にそれはいいよ。まぁ、あれだけ可愛い人なら秘密にしておきたいのもわからんではない」
「だからそういうつもりじゃないんだって。それに可愛い……でいいのかなあの人」
「えー、可愛いじゃん。ああいうお茶目な人、俺は好きだよ」
お茶目で片づけていいのかわからないけど、松永のウケはかなり良かったようだ。
「まさかりょーちゃんに知らぬ間にモテ期がやってきてるなんて……」
「こうなりそうだから言いたくなかったんだ」
「うそうそ。でも、もうちょっと清水さんの話、聞かせてよ」
それから帰り道は清水先輩と五大美人の話題になった。ただ、松永に話してみて改めて思ったけど、やっぱり僕はまだ清水先輩のことをよく知らないし、松永も僕の話だけではなぜ絡まれているかわからないと言われた。
「ということは、やっぱりモテ期なんじゃね?」
今日の結論はそうなってしまった。
「りょーちゃん、一緒に帰ろ?」
授業終わり、珍しく松永がそう言った。
「今日は部活ないのか?」
「顧問の先生、テスト重視するっぽいから今日でテスト勉強期間入りらしい」
「そうなんだ。それじゃあ、しっかり勉強しないとな」
「それとこれとは話が別で……」
そんな会話をしつつ、僕と松永は学校を後にした。松永とは幼稚園から付き合いだけど、下校まで一緒になることはそれほど多くない。中学になってからは松永は部活に行っていたし、僕はさっさと帰宅していたからこんな風にテストが近くならないと案外ない状況なのだ。
「りょーちゃんさ、下白石モネとモカのどっちが可愛いと思う?」
「またそれ系か……そもそも何となくで覚えてるからどっちがどっちかわからない」
「えー!? 全然違うじゃん。もしかして、双子だと思ってる感じ?」
「えっ? 名前的にそうかと……」
「私はモネだな。名前の響きがいい」
いきなり割り込まれた声に、僕と松永は足を止める。そして、僕はその声の主が誰であるからすぐにわかった。
「あれ? どうしたんだ、良助……とそのご友人」
何故か僕と松永よりもびっくりした顔で後ろにいたのはやはり清水先輩だった。今週はエンカウント率が高いと思いながら僕は当然の疑問を口にする。
「どうしたんだじゃないですよ。何をさらっと混ざってるんですか」
「いや、良助っぽいやつがいるから何となく付いて来た」
「僕っぽい人に何となくで付いて行かないでください……」
それほど自分が特徴的な後ろ姿をしている自信がないので尚更気を付けて欲しい。いや、違う。今日は松永と下校しているんだ。いきなり現れたこの人を説明しなければ。
「松永、この人は……」
「りょーちゃんのお友達ですか。いつものお世話になってます」
「世話というほどではないからそれほど気にしないでいいぞ」
いつの間にか清水先輩の方へ歩幅を合わせた松永が調子の良さそうなことを言って、清水先輩も調子の良さそうな返しをする。
「俺は松永浩太って言います。りょーちゃんとは幼稚園の頃からの仲です」
「ほう。それはかなり長い付き合いだな。私は清水夢愛だ。良助と会うのはこれで5回目になる」
「へー 5回も会ったならもういい仲だと思いますよー」
「うむ。私も十分知り合いのつもりだ」
「松永、ちょっと」
そのまま喋られると止まりそうにないので、僕は松永の腕を掴んで清水先輩との距離を取った。
「何普通に話してるんだ」
「それはこっちの台詞だよ、りょーちゃん。いつの間にこんな美人さん掴まえたの?」
「掴まえてない……むしろ捕まった感じだ」
「そういう自慢?」
「違う! だから、あの人は……」
「何話してるんだ?」
僕と松永のひそひそ話に清水先輩はまた割って入ってくる。駄目だ。この二人と同時に話すのは難し過ぎる。
「いやぁ、実は学校の三大美人の話をしてましてー もしかしたら先輩がその一人なんじゃないかって言ってたんです……りょーちゃんが」
そう思っている間に松永はとんでもないことを言った。僕が「おい!」と反応するも、松永は笑って返すばかりだ。こいつ、この状況を楽しんでやがる。
「んー? 三大美人はよく知らないが、確か私は学校の5本の指に入る美人だと聞いたことはあるぞ? 他が誰かは全然知らないが」
清水先輩の思わぬ回答に僕と松永は顔を見合わせる。何で聞いていた話よりも二人増えてるんだ。美人の判定が緩いのか、この学校が美人だらけなのか。
「さて、そろそろ帰ろうかな。では、また会おう、良助……とそのご友人」
そんな疑問を残して清水先輩は嵐のように去っていった。ここに付いてくるまでが帰宅のついでじゃないなら、本当に何で付いて来たんだ。
「面白い人だったな~」
「いや、面白いというよりは厄介な感じが……」
「それより、りょーちゃん。やっぱり会ってるじゃん、三大美人改め五大美人の清水さん」
「松永が話してた人と同じって確証がなかったから……隠すつもりじゃなかった、ごめん」
「別にそれはいいよ。まぁ、あれだけ可愛い人なら秘密にしておきたいのもわからんではない」
「だからそういうつもりじゃないんだって。それに可愛い……でいいのかなあの人」
「えー、可愛いじゃん。ああいうお茶目な人、俺は好きだよ」
お茶目で片づけていいのかわからないけど、松永のウケはかなり良かったようだ。
「まさかりょーちゃんに知らぬ間にモテ期がやってきてるなんて……」
「こうなりそうだから言いたくなかったんだ」
「うそうそ。でも、もうちょっと清水さんの話、聞かせてよ」
それから帰り道は清水先輩と五大美人の話題になった。ただ、松永に話してみて改めて思ったけど、やっぱり僕はまだ清水先輩のことをよく知らないし、松永も僕の話だけではなぜ絡まれているかわからないと言われた。
「ということは、やっぱりモテ期なんじゃね?」
今日の結論はそうなってしまった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる