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1年生1学期
5月14日(金)曇り 岸本路子との交流その2
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気が付くとあっという間の金曜日。今日も引き続き文芸部の部室で小説の構想を練る日だ。まぁ、僕はまだ小説にするかどうかすら決まってないけど。
「産賀くん、今日も質問いいかしら?」
そんな僕と比べて今日も岸本さんは質問をお願いしてきた。現時点でどれくらい進んでいるのかは聞きづらいけど、質問が出るということは何か進展があるのかもしれない。僕が頷くと、岸本さんはノートを開きながら喋りだす。
「男子学生の普段の会話が知りたいの。休み時間とか放課後とか……あっ、メールのやり取りでもいいわ」
「普段の会話か……」
そう聞かれた僕は自分の普段の会話を思い返してみる。昨日は本田くんと女の子のタイプを話して、いつもの休み時間は大倉くんとゲームについて語り合って、松永とはこの前に広末スズとアリスのどっちが可愛いかという話を……
「……あれ?」
「どうしたの、産賀くん?」
直近の会話を思い返すと、女の子の話かホビーの話しかしていない。もっと実のある話をしているものだと思っていたけど、そんなことはなかった。
そして、この事実を岸本さんに話すのは……めちゃくちゃ恥ずかしい。格好つけたいわけじゃないけど、こんな話しかしてませんよと自ら宣言するのは下手な罰ゲームよりもきつい気がする。もう少しファッションや世間のニュースに目を向けて普段の会話に取り入れるべきだった。
「産賀くん? わたし、別に面白いエピソードを求めているわけじゃないから、ありのままのことでいいのだけれど」
「あ、ありのままだよね! そうだな……うーんと……」
「……もしかして、答えづらい質問だった?」
「いや! そんなことないよ! ただ、本当に普通の会話しかしてなくて、直前の授業の話とかお腹空いて何食べたいって話題とか……」
「そうなんだ。結構、普通と……」
真面目にメモをする岸本さんに僕は少しだけ心が痛くなる。岸本さんは文芸部の男子が他にいなくて僕を頼ってくれているのに、差し障りのないことを言っていいのだろうか。岸本さんはリアリティのためにこの質問を考えているんだ。それを引き受けたのは僕なのだから……
「そ、それから!」
「それから?」
「……女の子の話題もある、かな」
素直に……いや、若干オブラートに包んで答えた。それからすかさず僕は喋り続けようとする。
「後はテレビや動画、ゲームや漫画の――」
「女の子の話題って」
「えっ?」
「どういうもの?」
しかし、日和って言った部分を深く掘られてしまった。
「それは……芸能人の話題や……どういう子が好みかってやつ」
「……ふーん」
「もっと詳しく言った方がいい……?」
「ううん。今日はこれで十分。ありがとう、とても参考になったわ」
「……それなら良かった」
岸本さんは特に引いている様子じゃなかったので、僕は胸をなでおろした。
「……いいな」
「岸本さん? まだ何か……」
「何でもない」
正直、引き受けた時は、単に質問を答えるだけだから簡単な話だと思っていた。でも、いざ聞かれると回答に困る質問が他にもあるかもしれない。これからの質問も岸本さんに引かれないよう正しく答えていこうと思いつつ、普段の会話の質をもっと上げておこうと思うのだった。
「産賀くん、今日も質問いいかしら?」
そんな僕と比べて今日も岸本さんは質問をお願いしてきた。現時点でどれくらい進んでいるのかは聞きづらいけど、質問が出るということは何か進展があるのかもしれない。僕が頷くと、岸本さんはノートを開きながら喋りだす。
「男子学生の普段の会話が知りたいの。休み時間とか放課後とか……あっ、メールのやり取りでもいいわ」
「普段の会話か……」
そう聞かれた僕は自分の普段の会話を思い返してみる。昨日は本田くんと女の子のタイプを話して、いつもの休み時間は大倉くんとゲームについて語り合って、松永とはこの前に広末スズとアリスのどっちが可愛いかという話を……
「……あれ?」
「どうしたの、産賀くん?」
直近の会話を思い返すと、女の子の話かホビーの話しかしていない。もっと実のある話をしているものだと思っていたけど、そんなことはなかった。
そして、この事実を岸本さんに話すのは……めちゃくちゃ恥ずかしい。格好つけたいわけじゃないけど、こんな話しかしてませんよと自ら宣言するのは下手な罰ゲームよりもきつい気がする。もう少しファッションや世間のニュースに目を向けて普段の会話に取り入れるべきだった。
「産賀くん? わたし、別に面白いエピソードを求めているわけじゃないから、ありのままのことでいいのだけれど」
「あ、ありのままだよね! そうだな……うーんと……」
「……もしかして、答えづらい質問だった?」
「いや! そんなことないよ! ただ、本当に普通の会話しかしてなくて、直前の授業の話とかお腹空いて何食べたいって話題とか……」
「そうなんだ。結構、普通と……」
真面目にメモをする岸本さんに僕は少しだけ心が痛くなる。岸本さんは文芸部の男子が他にいなくて僕を頼ってくれているのに、差し障りのないことを言っていいのだろうか。岸本さんはリアリティのためにこの質問を考えているんだ。それを引き受けたのは僕なのだから……
「そ、それから!」
「それから?」
「……女の子の話題もある、かな」
素直に……いや、若干オブラートに包んで答えた。それからすかさず僕は喋り続けようとする。
「後はテレビや動画、ゲームや漫画の――」
「女の子の話題って」
「えっ?」
「どういうもの?」
しかし、日和って言った部分を深く掘られてしまった。
「それは……芸能人の話題や……どういう子が好みかってやつ」
「……ふーん」
「もっと詳しく言った方がいい……?」
「ううん。今日はこれで十分。ありがとう、とても参考になったわ」
「……それなら良かった」
岸本さんは特に引いている様子じゃなかったので、僕は胸をなでおろした。
「……いいな」
「岸本さん? まだ何か……」
「何でもない」
正直、引き受けた時は、単に質問を答えるだけだから簡単な話だと思っていた。でも、いざ聞かれると回答に困る質問が他にもあるかもしれない。これからの質問も岸本さんに引かれないよう正しく答えていこうと思いつつ、普段の会話の質をもっと上げておこうと思うのだった。
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