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1年生1学期
4月30日(金)曇りのち晴れ 大倉伴憲との日常その2
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4月最終日。今日は学校では特に大きなことはなく、学生の本分である勉強をこなして、文芸部に顔を見せて帰宅すると、いつの間にか夜になっていた。しかし、いくら連休前だからといって気がゆるんでいたわけではない。今日のメインイベントは夜にあるのだ。
『も、もしもーし。う、産賀くん、聞こえてる……?』
「うん、大丈夫。こっちの声はどう?」
『だ、大丈夫! こ、こんばんは』
そう、今日は大倉くんと通話しながらゲームをするのだ。学校でゲームの話はしていたけど、平日はなかなか時間が合わせられないし、4月の土日はそこそこ忙しかったからこの日が初めてのゲーム通話になった。
「大倉くんは結構通話しながらゲームするの?」
『う、うん! そ、その……ネットの友達とかと』
「へー、そうなんだ。僕は何となくボイスチャットに抵抗あるけど……そもそもボイスチャットある協力ゲームあんまりやらないな……」
『ぼ、ボクも基本一人プレイが多いよ。で、でも、雑談しながらそれぞれ他のゲームすることもあるから』
そういうネットの活用は大倉くんの方が詳しいようだ。僕はながら作業するなら音楽を流すくらいで、喋りながらだと手が止まってしまいそう……というか今も止まっている。
『う、産賀くんは松永くんとゲームとか通話とかしなかったの……?』
「時々はやるけど、松永はアウトドアというか、外に出て遊ぶ方が好きだから、ゲームは家に集まった時くらいかな。通話は時々あったような……いや、それも結局は外に出るか遊びに来て話すかだからあんまりない気がする」
『そ、そうなんだ。アウトドア……だ、だからカラオケ推しだったのかな』
大倉くんが言っているのは休みに入る前、連休のどこかで本田くんを含めて4人でカラオケ行くことを約束したからだ。予定では3日の昼からになっている。
「それもあると思うけど、松永は普通にカラオケ好きだからね。僕も中学の時よくついて行ったよ」
『う、産賀くんは……そういう時は何歌ってる?』
「うーん……好きなジャンルとか決まったアーティストとかはいないから割と適当かな」
『て、適当……』
「大倉くん?」
『そ、その……ぼ、ボク、みんなが知ってる曲あんまり歌えないと思うから、どうしようかと……』
「そこは大丈夫だよ。僕も松永が歌ってる曲は半分くらいわからないし、大倉くんが歌ったら松永や僕も盛り上げるから」
『そ、そんな気を遣わせるわけじゃ……じ、実はボク、そんなにカラオケ行ったことないから……』
そう言われると、大倉くんが不安になる気持ちはわかる。カラオケに慣れないうちは、何を歌えばいいかわからないし、そもそも人前で歌うのが少し恥ずかしいものだ。だけど、男子で行くカラオケではそもそも歌の上手さや理解が求めているわけじゃない。
「そうだったんだ。でも、本当に心配ないよ。女子が混ざってたら別だけど、男子のうちでやるカラオケは何歌ってもみんな楽しいし、知らない曲で興味が出てそこから話もできるから」
『そ、そういうものなんだ……』
「まぁ、どうしても駄目だったら……僕もみんなが知らなさそうな曲入れるよ。大倉くんもわからない自信があるんだ」
『そ、そこに自信いる……?』
「……まぁ、いらないか」
『……ははっ。うん……あ、ありがとう、産賀くん。不安に思い過ぎちゃいけないよね……』
大倉くんが僕の言葉で安心できたかはわからないけど、ひとまず納得してくれたみたいだ。
「って、完全に手が止まってた。そろそろクエスト行こうか」
『う、うん!』
それから僕と大倉くんはメインイベントのゲームを楽しんだ。途中で集中して無口になる僕を大倉くんが呼びかけていたことを考えると、実況動画は絶対できない人間だと思った。
『も、もしもーし。う、産賀くん、聞こえてる……?』
「うん、大丈夫。こっちの声はどう?」
『だ、大丈夫! こ、こんばんは』
そう、今日は大倉くんと通話しながらゲームをするのだ。学校でゲームの話はしていたけど、平日はなかなか時間が合わせられないし、4月の土日はそこそこ忙しかったからこの日が初めてのゲーム通話になった。
「大倉くんは結構通話しながらゲームするの?」
『う、うん! そ、その……ネットの友達とかと』
「へー、そうなんだ。僕は何となくボイスチャットに抵抗あるけど……そもそもボイスチャットある協力ゲームあんまりやらないな……」
『ぼ、ボクも基本一人プレイが多いよ。で、でも、雑談しながらそれぞれ他のゲームすることもあるから』
そういうネットの活用は大倉くんの方が詳しいようだ。僕はながら作業するなら音楽を流すくらいで、喋りながらだと手が止まってしまいそう……というか今も止まっている。
『う、産賀くんは松永くんとゲームとか通話とかしなかったの……?』
「時々はやるけど、松永はアウトドアというか、外に出て遊ぶ方が好きだから、ゲームは家に集まった時くらいかな。通話は時々あったような……いや、それも結局は外に出るか遊びに来て話すかだからあんまりない気がする」
『そ、そうなんだ。アウトドア……だ、だからカラオケ推しだったのかな』
大倉くんが言っているのは休みに入る前、連休のどこかで本田くんを含めて4人でカラオケ行くことを約束したからだ。予定では3日の昼からになっている。
「それもあると思うけど、松永は普通にカラオケ好きだからね。僕も中学の時よくついて行ったよ」
『う、産賀くんは……そういう時は何歌ってる?』
「うーん……好きなジャンルとか決まったアーティストとかはいないから割と適当かな」
『て、適当……』
「大倉くん?」
『そ、その……ぼ、ボク、みんなが知ってる曲あんまり歌えないと思うから、どうしようかと……』
「そこは大丈夫だよ。僕も松永が歌ってる曲は半分くらいわからないし、大倉くんが歌ったら松永や僕も盛り上げるから」
『そ、そんな気を遣わせるわけじゃ……じ、実はボク、そんなにカラオケ行ったことないから……』
そう言われると、大倉くんが不安になる気持ちはわかる。カラオケに慣れないうちは、何を歌えばいいかわからないし、そもそも人前で歌うのが少し恥ずかしいものだ。だけど、男子で行くカラオケではそもそも歌の上手さや理解が求めているわけじゃない。
「そうだったんだ。でも、本当に心配ないよ。女子が混ざってたら別だけど、男子のうちでやるカラオケは何歌ってもみんな楽しいし、知らない曲で興味が出てそこから話もできるから」
『そ、そういうものなんだ……』
「まぁ、どうしても駄目だったら……僕もみんなが知らなさそうな曲入れるよ。大倉くんもわからない自信があるんだ」
『そ、そこに自信いる……?』
「……まぁ、いらないか」
『……ははっ。うん……あ、ありがとう、産賀くん。不安に思い過ぎちゃいけないよね……』
大倉くんが僕の言葉で安心できたかはわからないけど、ひとまず納得してくれたみたいだ。
「って、完全に手が止まってた。そろそろクエスト行こうか」
『う、うん!』
それから僕と大倉くんはメインイベントのゲームを楽しんだ。途中で集中して無口になる僕を大倉くんが呼びかけていたことを考えると、実況動画は絶対できない人間だと思った。
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