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1年生1学期
4月18日(日)晴れ時々曇り 明莉との日常その2
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先週は宿泊研修の準備で何かと浮ついた気分だった日曜だけど、本来は土曜と同じく朝は贅沢に眠り続ける日だ。昨日は昨日で色々大変だったから今日は普通の休日を――
「りょうちゃんー! 起きてー! りょうちゃんー!」
まるで借金取りのように僕の部屋の扉を明莉が叩く。どうやら優しい妹が日曜にも日記のネタを提供してくれるようだ。渋々起き上がった僕が扉を開けると、既に出かける準備万端の明莉がそこにいた。
「なに……?」
「なにって、りょうちゃん、先週暇な日があったらスイーツ買いに行こうって言ったでしょ」
「確かに言ったけど、そんなすぐに行くものとは思ってなかった」
「口約束はちょっと経つと、忘れたって言われるのがオチだもん。さぁ、早く着替えてー!」
それはおっしゃる通りだと思いながら、僕は出かける準備を始める。置いてあった朝食を急かされながら食べ終えると、僕と明莉は自転車に乗って家を後にした。ただ、今のところ僕の方は何の計画もない。
「それでどこに行くの?」
「うーん、とりあえずイオン!」
「まぁ、そうなるよね」
自宅付近でスイーツが食べられる店がないわけじゃないけど、行ってから考えるなら大型ショッピングモールに行くのが早い。とはいっても自転車だと20分以上かかるので、暫くはサイクリングになる。僕は家で明莉と話さないわけではないけど、平日は意外に話す暇がないので、がっつり話すとしたら今日みたいな休日になる。
「今週は部活休みなんだっけ?」
「うん。まだ新学期だからまちまちって感じー」
「それもそうか。今年はバド部多そう?」
「まだわかんなーい。というか、あかりにもとうとう後輩ができるんだね!」
「おおっ、先輩としての自覚に目覚めたか」
「どんな風にパシろうかなー」
「おいおい」
そんな風に下らない会話を続けていると、目的地に到着した。日曜ということもあって人は多く、駐車場もいっぱいになっていた。こういう時は自転車だと多少便利さを感じる。
「あっ、りょうちゃん! クレープある!」
「えっ? まだ店に入ってないんだけど」
「えっ? 店内でもおごってくれるの?」
「そういう意味じゃない。……まぁいいか」
珍しい場所ではないけど、せっかく来たなら店内を見てからじゃないのかと思いつつ、外にあったクレープ屋で今日の目的を果たす。
「りょうちゃん、違う味にしてね! あかりも食べるから」
「一応言うけど、僕が口付けるんだぞ」
「気にしないってー あっ、お父さんだと一瞬考えるけど」
そんなこと言ったら泣いてしまうぞと思いながら、2種類のクレープを買った僕らは外のベンチに座った。予想通り明莉から大口の味見をされたクレープを食べながら、とめどなくやって来る人たちを暫く眺める。
「りょうちゃんは高校どう?」
「うーん……高校もまだわからないことが多いよ。本格的に始まったのは先週の水曜日からだし」
「そっかぁ。でも、高校生ってなると一気に歳が離れた感じがするー」
「そんなことはないぞ。明莉も再来年には高校生だ」
「例えばなしだってー 高校かぁ、全然イメージできないや」
「それが普通だよ。僕も中3になるまではあんまり考えてなかった」
「あかりが高1になったらりょうちゃんは高3で、それからまた1年でりょうちゃんは大学か就職で、あかりは高2で……」
「そう言れると、そんなに時間ってないのかもな」
「……それでもね」
「ん?」
「あかりはいくつになってもこうやって時々りょうちゃんと出かけたいなーって思ってるよ?」
不意にそんなことを言われた僕は、少しグッと来てしまう。お互いに結構年齢が上がってからもこんな風に遊びに行けるのは、周りから珍しいと言われることもある。
でも、これからもすっと仲良くいられるなら僕としてはこの上なく嬉しいことだ。
「よーし! 食べ終わったし、せっかくだから店内も見て回るよね?」
「……明莉、もう一つくらいはスイーツ買ってもいいぞ。おごるから」
「本当に!? わーい!」
後から考えると、唐突にあんなことを言われたのは僕を丸め込むためだったのかもしれない。だけど、全くの嘘ではないと思うから、僕はこれからも妹におごらされるのだろう。
「りょうちゃんー! 起きてー! りょうちゃんー!」
まるで借金取りのように僕の部屋の扉を明莉が叩く。どうやら優しい妹が日曜にも日記のネタを提供してくれるようだ。渋々起き上がった僕が扉を開けると、既に出かける準備万端の明莉がそこにいた。
「なに……?」
「なにって、りょうちゃん、先週暇な日があったらスイーツ買いに行こうって言ったでしょ」
「確かに言ったけど、そんなすぐに行くものとは思ってなかった」
「口約束はちょっと経つと、忘れたって言われるのがオチだもん。さぁ、早く着替えてー!」
それはおっしゃる通りだと思いながら、僕は出かける準備を始める。置いてあった朝食を急かされながら食べ終えると、僕と明莉は自転車に乗って家を後にした。ただ、今のところ僕の方は何の計画もない。
「それでどこに行くの?」
「うーん、とりあえずイオン!」
「まぁ、そうなるよね」
自宅付近でスイーツが食べられる店がないわけじゃないけど、行ってから考えるなら大型ショッピングモールに行くのが早い。とはいっても自転車だと20分以上かかるので、暫くはサイクリングになる。僕は家で明莉と話さないわけではないけど、平日は意外に話す暇がないので、がっつり話すとしたら今日みたいな休日になる。
「今週は部活休みなんだっけ?」
「うん。まだ新学期だからまちまちって感じー」
「それもそうか。今年はバド部多そう?」
「まだわかんなーい。というか、あかりにもとうとう後輩ができるんだね!」
「おおっ、先輩としての自覚に目覚めたか」
「どんな風にパシろうかなー」
「おいおい」
そんな風に下らない会話を続けていると、目的地に到着した。日曜ということもあって人は多く、駐車場もいっぱいになっていた。こういう時は自転車だと多少便利さを感じる。
「あっ、りょうちゃん! クレープある!」
「えっ? まだ店に入ってないんだけど」
「えっ? 店内でもおごってくれるの?」
「そういう意味じゃない。……まぁいいか」
珍しい場所ではないけど、せっかく来たなら店内を見てからじゃないのかと思いつつ、外にあったクレープ屋で今日の目的を果たす。
「りょうちゃん、違う味にしてね! あかりも食べるから」
「一応言うけど、僕が口付けるんだぞ」
「気にしないってー あっ、お父さんだと一瞬考えるけど」
そんなこと言ったら泣いてしまうぞと思いながら、2種類のクレープを買った僕らは外のベンチに座った。予想通り明莉から大口の味見をされたクレープを食べながら、とめどなくやって来る人たちを暫く眺める。
「りょうちゃんは高校どう?」
「うーん……高校もまだわからないことが多いよ。本格的に始まったのは先週の水曜日からだし」
「そっかぁ。でも、高校生ってなると一気に歳が離れた感じがするー」
「そんなことはないぞ。明莉も再来年には高校生だ」
「例えばなしだってー 高校かぁ、全然イメージできないや」
「それが普通だよ。僕も中3になるまではあんまり考えてなかった」
「あかりが高1になったらりょうちゃんは高3で、それからまた1年でりょうちゃんは大学か就職で、あかりは高2で……」
「そう言れると、そんなに時間ってないのかもな」
「……それでもね」
「ん?」
「あかりはいくつになってもこうやって時々りょうちゃんと出かけたいなーって思ってるよ?」
不意にそんなことを言われた僕は、少しグッと来てしまう。お互いに結構年齢が上がってからもこんな風に遊びに行けるのは、周りから珍しいと言われることもある。
でも、これからもすっと仲良くいられるなら僕としてはこの上なく嬉しいことだ。
「よーし! 食べ終わったし、せっかくだから店内も見て回るよね?」
「……明莉、もう一つくらいはスイーツ買ってもいいぞ。おごるから」
「本当に!? わーい!」
後から考えると、唐突にあんなことを言われたのは僕を丸め込むためだったのかもしれない。だけど、全くの嘘ではないと思うから、僕はこれからも妹におごらされるのだろう。
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