11 / 942
1年生1学期
4月14日(水)曇り 本格的なスタート
しおりを挟む
宿泊研修という大きな行事を終えて、いよいよ本格的に授業が始まっていく。そのことを嘆く生徒もいるけど、学生の本分は勉強というし、先週の一週間と宿泊研修は準備期間で、これからが本当の意味での高校生活のスタートなのかもしれない。
「う、産賀くん!」
そして、本格的にスタートするのは勉強だけじゃない。その日の昼休み、席の後ろから大倉くんが声をかけてきた。
「ぼ、ボクも産賀くんとお昼ご飯……一緒してもいいかな?」
そう言った大倉くんは、僕に初めて話しかけてくれた時よりは緊張していなかった。こうやって大倉くんが来てくれるのも宿泊研修で一緒だったからこそだろう。僕は頷いてから大倉くんを連れて松永の席に向かう。大倉くんはまた緊張していだけど、松永に関して言えばあまり心配していなかった。
「大倉くんかぁ……じゃあ、クラさんで!」
「く、クラさん……?」
「下の名前でトモさんもいいかと思ったけど、何となくクラさんがしっくりこない?」
どういう基準なんだと僕は思いながら本田くんの方を見ると、肩をすくめていた。でも、付けられた本人である大倉くんが案外嬉しそうにしていうるので、相変わらず松永の距離を縮める早さに感心する。それから松永と本田くんは同じ班だったので、僕たちはお互いの宿泊研修を振り返りながら昼食を取り始めた。
「ぽんちゃん、野外炊事の時に玉ねぎ切ったら号泣しててさ。写真撮りたかったな~」
「あれはそういうものだから仕方ない……仕方ない」
これからこんな風な毎日が続いていくと思うと、良い準備期間が過ごせたのだと思う。
ただ、もう一つの出来事については、全然予想していないものだった。それは5時間目の後の休み時間のことだ。
「ねぇ、ちょっといい?」
「えっ?」
席の右側から声をかけられた僕が振り向くと、そこには大山さんがいた。いや、入学してからずっと隣にはいたんだけど、しっかり認識したのは宿泊研修からだ。今日も髪を後ろでまとめているからそれが大山さんのデフォルトなのだろう。
そんな大山さんに話しかけられる理由はまるでわからなかったが、その疑問はすぐに解決する。
「お願い! さっきの現社のノート写させて!」
手を合わせて頼み込む大山さんに僕は少し驚いてしまう。でも、断る理由はないので僕はノートを差し出した。
「いいけど、あんまり板書することはなかったよ」
「それでも一応ね! それじゃ、借りまーす!」
大山さんはノートを受け取ると、今日のページを開いてスマホで数枚写真を撮った。
「ありがと! 助かった~」
「それは良かった」
「産賀くんはさ、さっきの授業眠くなかった?」
ノートが返却されたので大山さんの用事も終わったと思ったけど、そのまま会話が続くので僕は心の中でまた驚く。
「お昼の後だからちょっとは眠かったけど……」
「それもあるけどー、宇梶先生の声ってなんかめっちゃ眠くならない? 喋りがゆっくりっていうか、独特のテンポっていうか」
「あー……確かに独特な感じはわかるな」
「でしょ? だから……」
「寝てたんだ」
僕に指摘されて、照れながら「えへへ」と笑う大山さんはとても可愛く見えた……じゃない。授業が本格的に始まったのに初っ端から寝るなんてなかなかの胆力だ。
「……まぁ、そんなわけで、今後も現社は寝ると思うからノート見せてね☆」
「えっ? そこは寝ないように努力を……」
「お願いね、うぶクン☆」
「なっ!?」
それは小学校の時から稀に呼ばれるあだ名だった……主にからかわれる時だけど。それから大山さんは微笑みながら立ち上がって、別の人と話に行ってしまった。どうやら大山さんも距離を縮めるのが早いらしい。
こんな風に頼られるのも準備期間のおかげ……ということでいいのだろうか。
「う、産賀くん!」
そして、本格的にスタートするのは勉強だけじゃない。その日の昼休み、席の後ろから大倉くんが声をかけてきた。
「ぼ、ボクも産賀くんとお昼ご飯……一緒してもいいかな?」
そう言った大倉くんは、僕に初めて話しかけてくれた時よりは緊張していなかった。こうやって大倉くんが来てくれるのも宿泊研修で一緒だったからこそだろう。僕は頷いてから大倉くんを連れて松永の席に向かう。大倉くんはまた緊張していだけど、松永に関して言えばあまり心配していなかった。
「大倉くんかぁ……じゃあ、クラさんで!」
「く、クラさん……?」
「下の名前でトモさんもいいかと思ったけど、何となくクラさんがしっくりこない?」
どういう基準なんだと僕は思いながら本田くんの方を見ると、肩をすくめていた。でも、付けられた本人である大倉くんが案外嬉しそうにしていうるので、相変わらず松永の距離を縮める早さに感心する。それから松永と本田くんは同じ班だったので、僕たちはお互いの宿泊研修を振り返りながら昼食を取り始めた。
「ぽんちゃん、野外炊事の時に玉ねぎ切ったら号泣しててさ。写真撮りたかったな~」
「あれはそういうものだから仕方ない……仕方ない」
これからこんな風な毎日が続いていくと思うと、良い準備期間が過ごせたのだと思う。
ただ、もう一つの出来事については、全然予想していないものだった。それは5時間目の後の休み時間のことだ。
「ねぇ、ちょっといい?」
「えっ?」
席の右側から声をかけられた僕が振り向くと、そこには大山さんがいた。いや、入学してからずっと隣にはいたんだけど、しっかり認識したのは宿泊研修からだ。今日も髪を後ろでまとめているからそれが大山さんのデフォルトなのだろう。
そんな大山さんに話しかけられる理由はまるでわからなかったが、その疑問はすぐに解決する。
「お願い! さっきの現社のノート写させて!」
手を合わせて頼み込む大山さんに僕は少し驚いてしまう。でも、断る理由はないので僕はノートを差し出した。
「いいけど、あんまり板書することはなかったよ」
「それでも一応ね! それじゃ、借りまーす!」
大山さんはノートを受け取ると、今日のページを開いてスマホで数枚写真を撮った。
「ありがと! 助かった~」
「それは良かった」
「産賀くんはさ、さっきの授業眠くなかった?」
ノートが返却されたので大山さんの用事も終わったと思ったけど、そのまま会話が続くので僕は心の中でまた驚く。
「お昼の後だからちょっとは眠かったけど……」
「それもあるけどー、宇梶先生の声ってなんかめっちゃ眠くならない? 喋りがゆっくりっていうか、独特のテンポっていうか」
「あー……確かに独特な感じはわかるな」
「でしょ? だから……」
「寝てたんだ」
僕に指摘されて、照れながら「えへへ」と笑う大山さんはとても可愛く見えた……じゃない。授業が本格的に始まったのに初っ端から寝るなんてなかなかの胆力だ。
「……まぁ、そんなわけで、今後も現社は寝ると思うからノート見せてね☆」
「えっ? そこは寝ないように努力を……」
「お願いね、うぶクン☆」
「なっ!?」
それは小学校の時から稀に呼ばれるあだ名だった……主にからかわれる時だけど。それから大山さんは微笑みながら立ち上がって、別の人と話に行ってしまった。どうやら大山さんも距離を縮めるのが早いらしい。
こんな風に頼られるのも準備期間のおかげ……ということでいいのだろうか。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました
フルーツパフェ
大衆娯楽
とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。
曰く、全校生徒はパンツを履くこと。
生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?
史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる