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1年生1学期
4月7日(水)晴れ 大倉伴憲との出会い
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今日の1・2時間目は新入生である僕たちの身体測定だ。とはいってもその大半は待ち時間で、楽ではあるけど退屈な時間だ。出席番号順で待機するから、松永や本田くんのところに行って話をするわけにもいかない。
「あ、あの……」
そんなことを思いながら、視力検査の列で待っている時だった。僕の後ろから少し上ずった声が聞こえてきた。振り向くと、僕が前日の2日間でよく見た顔……出席番号順だから当然なのだが、僕の後ろの席にいる眼鏡の男子が話しかけていたのだ。確かその名前は――
「お、大倉っていいます!」
まるで予知したかのように僕の疑問に答えた大倉くんは、言い終わった後も落ち着かない様子だ。プリントを後ろを回す時にはそれほど気にならなかったけど、彼も高校が始まっばかりの緊張している一人なのだろうか。
「僕は産賀。えっと……」
昨日は松永を挟んでいたから良かったけれど、僕一人だと会話の取っ掛かりがなかなか思い付かない。せっかく大倉くんが勇気を出して話を振ってくれたのだから、今度は僕が何か言葉を返さなければならないはずだ。僕はひとまず今日のことに触れてみる。
「身長……どうだった?」
「し、身長は、ちょっとだけ伸びてました。ボ、ボクは元々がそんなに高くないけど……」
「そうなんだ。僕は中3の時と変わらなかったよ」
「で、でも……う、産賀くんは結構高そうだよね?」
「男子の平均くらいだけどそうなのかな。もしかして、授業中見づらかったり……」
「そ、そんなことないよ! た、高くてうらやましいくらいで……」
自分で思い返しても初対面の相手に気を使わせる発言をさせてしまった時点で、今日の会話は失敗だった。その後もお互いに暇はつぶせたかもしれないが、いまいち盛り上がりにかける話を続けることになる。
大倉くんとは宿泊研修でも同じ班になる予定だ。そこで何とか挽回できることを願いつつ、自分の不甲斐なさを感じる1日になった。
「あ、あの……」
そんなことを思いながら、視力検査の列で待っている時だった。僕の後ろから少し上ずった声が聞こえてきた。振り向くと、僕が前日の2日間でよく見た顔……出席番号順だから当然なのだが、僕の後ろの席にいる眼鏡の男子が話しかけていたのだ。確かその名前は――
「お、大倉っていいます!」
まるで予知したかのように僕の疑問に答えた大倉くんは、言い終わった後も落ち着かない様子だ。プリントを後ろを回す時にはそれほど気にならなかったけど、彼も高校が始まっばかりの緊張している一人なのだろうか。
「僕は産賀。えっと……」
昨日は松永を挟んでいたから良かったけれど、僕一人だと会話の取っ掛かりがなかなか思い付かない。せっかく大倉くんが勇気を出して話を振ってくれたのだから、今度は僕が何か言葉を返さなければならないはずだ。僕はひとまず今日のことに触れてみる。
「身長……どうだった?」
「し、身長は、ちょっとだけ伸びてました。ボ、ボクは元々がそんなに高くないけど……」
「そうなんだ。僕は中3の時と変わらなかったよ」
「で、でも……う、産賀くんは結構高そうだよね?」
「男子の平均くらいだけどそうなのかな。もしかして、授業中見づらかったり……」
「そ、そんなことないよ! た、高くてうらやましいくらいで……」
自分で思い返しても初対面の相手に気を使わせる発言をさせてしまった時点で、今日の会話は失敗だった。その後もお互いに暇はつぶせたかもしれないが、いまいち盛り上がりにかける話を続けることになる。
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