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裸夫が描きたい自称清楚系ヒロインはあらゆる手段で俺を脱がせようとしてくる
デンジャラスミズギ
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美術準備室へ行くことが習慣化した今日この頃。俺にはある一つの目標ができていた。それはこの件をきっかけに大きく進んだことで、現在はあまり進んでいないことである。
「三雲クン、今日も行こっか?」
「うん! 今行きまーす!」
そう、涼花ちゃんとの仲の進展だ。今も脳内では涼花ちゃんなどと親しげに呼んでいるが、現実では未だに捻木さん呼びだし、一応教室内で話す機会も少し増えたけど、がっつり話せるタイミングと言えばこの美術室へ向かうまでと到着後の少しの時間しかない。
そのせいで涼花ちゃんとの話題はその日の授業の振り返りとか、明日の課題とか、学生らしいけど言うほど盛り上がらない内容になっていた。
「3時間の英語の時、三雲クンが発音良く読もうとしててちょっと笑っちゃった。ふふっ」
いや、涼花ちゃんはそういう話題でも十分可愛い反応をくれるし、何なら今日のこの話も実質俺のことを見ていてくれたということで以前なら満足できていたのだが……人間は欲深い生き物だ。もっと色んな話をしてみたいと思ってしまう。
そのためにまず必要なのは……連絡先を交換することだ。情けないことにこれだけ話していても未だにLINEもメールも電話番号も知らない。そこで繋がればこの時間以外でもスマホでコミュニケーションができて、何なら夜までやり取りしちゃって、たまに声が聴きたいなんて言われちゃって……
「三雲クン?」
「あっ、はい!」
涼花ちゃんが声をかけてくれたのはまだ廊下だった。ボーっとしているとすぐに美術室へ着いてしまうからチャンスはあるようでそんなにない。というか、これまで何度もタイミングを逃していた。この話題は俺が任意で発動しなければならないから、涼花ちゃんから別の話を振られると失敗してしまう。
だが、今日こそ何らかの連絡先を手に入れてみせる時だ。俺は意を決して言う。
「捻木さん……LINEやってる?」
「うん。やってるよ」
「じゃあ……交換しない?」
「えっ? どうして?」
純粋な笑顔のまま聞いてくる涼花ちゃんを見た俺は……心の中で同じ台詞を呟いた。唐突過ぎたのがいけなかったのかな?
「ほ、ほら、連絡取りやすくしておくと便利じゃない?」
「三雲クンとは毎日教室で会うし、こうやって美術室へ一緒に行ってるんだから用事があるならその時に言えばいいと思うよ?」
「……そ、その通りっすね」
俺の言葉に涼花ちゃんスマイルが返されるが、俺は全然納得していない。
いや、毎日こんなに近くで会えることには感謝だし、軽々しく連絡先を交換しないのは自衛的には素晴らしいことなんだけど……なんで笑顔で断られてるの!? めっちゃ仲良しまでは行ってないとわかってたけど、そこそこ知り合いになれてると思ったんだけど!?
あれか、俺の中の俺が邪念を放っているのか? 決してそんなつもりはないんだ涼花ちゃん。連絡取りやすくなるのは本当だって。別に夜もしつこくメッセ送ったりしないし、既読スルーされても全然構わないから……
「三雲クン、今日もいってらっしゃいっ」
「えっ……はい」
気が付くといつもの美術室へ送り出される場面までスキップされていた。
何だろう、この……嫌われているわけじゃないけど、一定の距離は保たれている感じは。でも、単なる同級生の男子と接する距離間はそれくらいが適正なのかもしれない。
敗北感を覚えつつもそのまま突っ立ているわけにもいかないので、俺は準備室の扉を開ける。
だが、今日は何をされてもそれほどいいリアクションを取れる気がしなかった。たまには俺にもそういう日が――
「ハッピーサマー!」
「…………」
俺の耳と目に入ってきたのは季節外れの台詞と季節外れ恰好だった。具体的に言えば今は冬で、目の前にいる中楚は……ブルーハワイ色の水着を着ていたのだ。しかも結構肌が見えるビキニタイプのやつを。
「さぁ、テルク――」
その光景を何とか頭の中で処理しようとがんばったけど、その前に腕が勝手に動いて扉を閉めてしまった。
そうして俺はそのまま固まって考え始める。
(いや、この寒い時期に水着になるなんてあり得ない……よな? ちょっと傷心してるから幻覚が見えただけ……だよな?)
自分に言い聞かせようとするけど、もう一度扉を開ける気になれない。このまま突入すると、色んな意味で大変なことになってしまうと思う。
「どうしたの、三雲クン? ずっと扉の前に立って……」
そんな俺の様子がおかしいと思った涼花ちゃんがこちらに近づいてくる。さすがにそれは不味いとようやく頭が回り始めた俺だったが、それと同時に内側から扉が激しく叩かれ始める。
『ちょっとテルクニ!? ノータイムで閉めるのはひどくない!? 水着よ!? 水着回よ!?』
「こら! おとなしくしろ……」
「三雲クン、清莉奈ちゃんに何か……」
「あー!? その……扉がちょっと開きづらくなってて、それを調べてるだけだから気にしないで!」
扉に背を向けて開かないように抑えながら言い訳するけど、その間にも中楚は扉を叩いてくる。
『何が駄目だったの!? 台詞? 色味? それとも違うタイプの水着が……もっとエグいやつの方が良かったの!?』
「いいから早く服着てくれ……! じゃないと入れな――」
「清莉奈ちゃん、すごく扉を叩いてるけど、そんなに開きが悪くなってるの? だったら、榎沢先生に相談して……」
「ううん! たぶん、あれだから! 叩けば直るタイプのやつだから!!!」
この流れで涼花ちゃんに水着姿の中楚を目撃されてしまうと、ただでさえ現状それほど信頼されて無さそうな俺の評価が更に下がってしまいそうな気がする。
というか、見られたらどう言い訳すればいいんだよ!? 普段二人きりの個室で女の子方が水着で待ってたなんて、どう考えても俺が悪いことしてるように見られるじゃないか!? 誰にも聞かれないから言うけど、エッチな漫画の展開だよそれは。
中楚に服を着て貰うのと、涼花ちゃんへの言い訳。両方やらなくちゃあいけないのはだいたい中楚のせいだけど、俺がその一味とされてしまいそうなのが辛いところだ。
「何だか今にも溢れ出しそうなゾンビを必死に止めているみたいに見えるけど……それだけ言うなら大丈夫かな。三雲クンに任せるねっ」
「はい!!! 任せといて!!!」
涼花ちゃんの例えほどドラマチックな状況ではないが、何とか危機を脱することができた。涼花ちゃんが部活動へ戻って行ったのを確認すると、三度俺は扉に向かって言う。
「中楚、ちゃんと制服着たか?」
『えっ。もう一回ちゃんと見て欲しいんだけど……』
「冗談はそれくらいにしろ! 着ないなら帰るぞ」
『……はーい』
中楚の声は扉越しでもわかるほど不服そうだった。
「三雲クン、今日も行こっか?」
「うん! 今行きまーす!」
そう、涼花ちゃんとの仲の進展だ。今も脳内では涼花ちゃんなどと親しげに呼んでいるが、現実では未だに捻木さん呼びだし、一応教室内で話す機会も少し増えたけど、がっつり話せるタイミングと言えばこの美術室へ向かうまでと到着後の少しの時間しかない。
そのせいで涼花ちゃんとの話題はその日の授業の振り返りとか、明日の課題とか、学生らしいけど言うほど盛り上がらない内容になっていた。
「3時間の英語の時、三雲クンが発音良く読もうとしててちょっと笑っちゃった。ふふっ」
いや、涼花ちゃんはそういう話題でも十分可愛い反応をくれるし、何なら今日のこの話も実質俺のことを見ていてくれたということで以前なら満足できていたのだが……人間は欲深い生き物だ。もっと色んな話をしてみたいと思ってしまう。
そのためにまず必要なのは……連絡先を交換することだ。情けないことにこれだけ話していても未だにLINEもメールも電話番号も知らない。そこで繋がればこの時間以外でもスマホでコミュニケーションができて、何なら夜までやり取りしちゃって、たまに声が聴きたいなんて言われちゃって……
「三雲クン?」
「あっ、はい!」
涼花ちゃんが声をかけてくれたのはまだ廊下だった。ボーっとしているとすぐに美術室へ着いてしまうからチャンスはあるようでそんなにない。というか、これまで何度もタイミングを逃していた。この話題は俺が任意で発動しなければならないから、涼花ちゃんから別の話を振られると失敗してしまう。
だが、今日こそ何らかの連絡先を手に入れてみせる時だ。俺は意を決して言う。
「捻木さん……LINEやってる?」
「うん。やってるよ」
「じゃあ……交換しない?」
「えっ? どうして?」
純粋な笑顔のまま聞いてくる涼花ちゃんを見た俺は……心の中で同じ台詞を呟いた。唐突過ぎたのがいけなかったのかな?
「ほ、ほら、連絡取りやすくしておくと便利じゃない?」
「三雲クンとは毎日教室で会うし、こうやって美術室へ一緒に行ってるんだから用事があるならその時に言えばいいと思うよ?」
「……そ、その通りっすね」
俺の言葉に涼花ちゃんスマイルが返されるが、俺は全然納得していない。
いや、毎日こんなに近くで会えることには感謝だし、軽々しく連絡先を交換しないのは自衛的には素晴らしいことなんだけど……なんで笑顔で断られてるの!? めっちゃ仲良しまでは行ってないとわかってたけど、そこそこ知り合いになれてると思ったんだけど!?
あれか、俺の中の俺が邪念を放っているのか? 決してそんなつもりはないんだ涼花ちゃん。連絡取りやすくなるのは本当だって。別に夜もしつこくメッセ送ったりしないし、既読スルーされても全然構わないから……
「三雲クン、今日もいってらっしゃいっ」
「えっ……はい」
気が付くといつもの美術室へ送り出される場面までスキップされていた。
何だろう、この……嫌われているわけじゃないけど、一定の距離は保たれている感じは。でも、単なる同級生の男子と接する距離間はそれくらいが適正なのかもしれない。
敗北感を覚えつつもそのまま突っ立ているわけにもいかないので、俺は準備室の扉を開ける。
だが、今日は何をされてもそれほどいいリアクションを取れる気がしなかった。たまには俺にもそういう日が――
「ハッピーサマー!」
「…………」
俺の耳と目に入ってきたのは季節外れの台詞と季節外れ恰好だった。具体的に言えば今は冬で、目の前にいる中楚は……ブルーハワイ色の水着を着ていたのだ。しかも結構肌が見えるビキニタイプのやつを。
「さぁ、テルク――」
その光景を何とか頭の中で処理しようとがんばったけど、その前に腕が勝手に動いて扉を閉めてしまった。
そうして俺はそのまま固まって考え始める。
(いや、この寒い時期に水着になるなんてあり得ない……よな? ちょっと傷心してるから幻覚が見えただけ……だよな?)
自分に言い聞かせようとするけど、もう一度扉を開ける気になれない。このまま突入すると、色んな意味で大変なことになってしまうと思う。
「どうしたの、三雲クン? ずっと扉の前に立って……」
そんな俺の様子がおかしいと思った涼花ちゃんがこちらに近づいてくる。さすがにそれは不味いとようやく頭が回り始めた俺だったが、それと同時に内側から扉が激しく叩かれ始める。
『ちょっとテルクニ!? ノータイムで閉めるのはひどくない!? 水着よ!? 水着回よ!?』
「こら! おとなしくしろ……」
「三雲クン、清莉奈ちゃんに何か……」
「あー!? その……扉がちょっと開きづらくなってて、それを調べてるだけだから気にしないで!」
扉に背を向けて開かないように抑えながら言い訳するけど、その間にも中楚は扉を叩いてくる。
『何が駄目だったの!? 台詞? 色味? それとも違うタイプの水着が……もっとエグいやつの方が良かったの!?』
「いいから早く服着てくれ……! じゃないと入れな――」
「清莉奈ちゃん、すごく扉を叩いてるけど、そんなに開きが悪くなってるの? だったら、榎沢先生に相談して……」
「ううん! たぶん、あれだから! 叩けば直るタイプのやつだから!!!」
この流れで涼花ちゃんに水着姿の中楚を目撃されてしまうと、ただでさえ現状それほど信頼されて無さそうな俺の評価が更に下がってしまいそうな気がする。
というか、見られたらどう言い訳すればいいんだよ!? 普段二人きりの個室で女の子方が水着で待ってたなんて、どう考えても俺が悪いことしてるように見られるじゃないか!? 誰にも聞かれないから言うけど、エッチな漫画の展開だよそれは。
中楚に服を着て貰うのと、涼花ちゃんへの言い訳。両方やらなくちゃあいけないのはだいたい中楚のせいだけど、俺がその一味とされてしまいそうなのが辛いところだ。
「何だか今にも溢れ出しそうなゾンビを必死に止めているみたいに見えるけど……それだけ言うなら大丈夫かな。三雲クンに任せるねっ」
「はい!!! 任せといて!!!」
涼花ちゃんの例えほどドラマチックな状況ではないが、何とか危機を脱することができた。涼花ちゃんが部活動へ戻って行ったのを確認すると、三度俺は扉に向かって言う。
「中楚、ちゃんと制服着たか?」
『えっ。もう一回ちゃんと見て欲しいんだけど……』
「冗談はそれくらいにしろ! 着ないなら帰るぞ」
『……はーい』
中楚の声は扉越しでもわかるほど不服そうだった。
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