裸夫が描きたい自称清楚系ヒロインはあらゆる手段で俺を脱がせようとしてくる

ちゃんきぃ

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裸夫が描きたい自称清楚系ヒロインはあらゆる手段で俺を脱がせようとしてくる

信頼

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 語り終えた中楚はゆっくりと息を一回吐く。ここまでの話を聞けば今教室にいるという状態は中楚にとってそれほど良い気分ではないのかもしれない。

 そして、聞き終えた俺の方は……特に驚きはしなかった。予想通りとは言わないが、美術準備室にこもる理由としてはある程度想像できる話だ。
 俺はそれを苦手と思ったことはないけど、学校のクラスという空間には独特の空気があるのはわかる。それに馴染めない人も残念ながらいる。
 そうなってしまった中楚の現状は純粋に悲しいことだと思うし、色々苦労してきたのだろうとは思う。

 だけど、今の俺が最初に言うべき言葉は……たぶんこれだ。

「……それで? 中楚は俺に聞かせてどうしたいんだ」
「ど、どうしたいって……今の話をテルクニに判断して欲しくて話したんだけど」
「判断も何も中楚がそれで学校を辞めないで、部活も何とか続けられているならそれでいいじゃないか」
「……テルクニはアタシのこと変だと思ったりしないの?」
「いいや。十分変だと思う」
「うっ……」
「まぁ、それは初めて美術準備室に来て、中楚に脱げと言われた時から思ってたことだ。別に過去のエピソードを聞かされたところで俺が思うことが変わることはない」
「そ、そうなの……?」
「そもそも美術準備室にずっといることよりも普段の言動の方がよっぽど変だからな?」
「じゃ、じゃあ……今の話を聞いても……まだ美術準備室には来てくれる……の?」

 そういう心配をするくらいならわざわざ言わなければ良かったのに……と思ってしまう。
 だけど、たとえ裸夫のモデルを失うことになろうとも正々堂々と明らかにしておきたかったのだろう。それが中楚にとってどんな感情かまではわからないが……悪い気はしない。
 だったら、聞くつもりがなかった話を聞いて、意見を裏返すことはしない。中楚の呪縛から抜け出す絶好のチャンスなのに、そう考えてしまうくらいに俺は慣れてしまっていた。

「変わることはないって言ったろ。それより早く帰ろうぜ。帰宅部をこんな時間まで残させるんじゃないよ、全く……」
「……テルクニ!」

 完全に油断していた俺の胸に向かって中楚が飛び込んでくる。その瞬間、俺が17年間生きてきた中で一番いい匂いと柔らかい感触に包まれた。

「お、おまっ!? 何、考えて……」
「……この流れなら言っていいよね?」
「えっ!? いいい、言うって何を……?」

 抱き着きながら少し照れた顔の中楚が目に入ってくる。まずい。めっちゃ可愛く見える。いや、こいつ元々顔はいいから可愛く見えるのは当然だし、密着したあれやこれやのせいで俺の胸の鼓動は死ぬほど早くなっているから余計にそう思わされている。
 この状況で殺し文句を言われてしまったら……俺は堕ちてしまうかもしれない。だって、男の子だもん。

 いや、俺には涼花ちゃんという心のマドンナはいるが、こんなことしてくるなんて、もう中楚は俺のこと――

「ここで今すぐ脱いで」
「……は?」

 中楚は身体を密着させたまま俺の制服のボタンに手をかけ始めていた。

「今の流れで何で脱がせられると思ってんだよ!?」
「いや、普段過ごしている教室で脱ぐ方が興奮するかなと思って」
「俺はそんな変態じゃねぇわ!? それにここは俺のクラスじゃないし!」
「えっ!? 自分のクラスならいいの!? 今すぐ鍵取ってくる!」
「そういう意味じゃねぇ!!! あと、仮にここで脱いでも裸夫は描けないだろうが!?」
「じゃあ、このまま脱がして目に焼き付けるわ!」
「正々堂々はどこいった!?」
「何言ってるの。正々堂々じゃない」

 確かに物理的に脱がせに行っているのはある意味正々堂……んなわけあるかぁ! 抱き着いてから油断させて脱がそうとしているじゃないか!?

「おーい。もう完全下校時刻だぞー……あっ」

 俺がそうツッコミを入れる前に、三度最悪のタイミングで榎沢先生が俺と中楚を目撃する。俺に体を密着させながら制服を脱がそうとする中楚。過去二回に比べれば暴力的な感じはしないが、不健全さで言えば一番まずい状況だった。

「え、榎沢先生! 助け――」
「いや、これは……どうなんだ? 今回は同意の上で抱き合ってるように見えるんだけど……とりあえずもう少し続きを見せて貰っていい?」
「おい、教師! 風紀的な意味でも止めろー!」

 こうして、俺は中楚に対する疑問の一つを解消することができた。その代わり、中楚と過ごす放課後はまだまだ続きそうな予感がした。
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