裸夫が描きたい自称清楚系ヒロインはあらゆる手段で俺を脱がせようとしてくる

ちゃんきぃ

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裸夫が描きたい自称清楚系ヒロインはあらゆる手段で俺を脱がせようとしてくる

真相

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 俺は中楚の言ったことをすぐには飲み込めなかった。1年と9ヶ月ぶりに教室へ来る。それが意味することが何かを想像すれば……決して良い話ではないことだけはわかる。

「教室に久しぶりって……で、でも、部活動というか、美術室には欠かさず来ていて……」
「アタシ、1日中美術準備室にいるの。みんなより早めに登校して準備室に入って、そのまま今みたいな時間に準備室から下校する。そういう学校生活を1年9ヶ月ほど繰り返してる」
「な、なんで――」

 俺はそう聞きかけて手で自分の口を塞ぐ。さっき余計なことを聞かない方がいいと思ったばかりなのに思わず口に出てしまった。
 すると、そんな俺を見て中楚は少し笑う。

「別にいいのよ、テルクニ。今日の部活が始まる前にリョウカから聞いたの。文化祭の時、テルクニがアタシがどうしていないのか聞いて来たって。それはもう心配し過ぎて泣き崩れそうになるくらいになってたって」
「……勝手に話を盛るな」
「だから、てっきり今日はそのことで色々聞かれて、言葉責めされて、あられもない姿にさせられると思っていたんだけど……」
「……俺のことどんなヤツだと思ってるんだ」
「もちろん、量産型主人公系男子よ。それはそれとして……アタシはどうしようか迷ってた。アタシ自身のことを話すかどうかを。別に言ったところでテルクニが得することは何もないし、むしろ聞かせることで嫌な気持ちにさせてしまうかもしれないって。でも……テルクニはこれまでも、そして、今日もアタシの詳しいことを聞こうとしなかった」

 そう言いながら中楚は俺が今までに見たことがない柔らかい表情を見せる。

「それはテルクニが……アタシのことを考えて避けてくれんだと勝手に思った。だから、アタシは……正々堂々と言うことに決めた。これでどう思われてもいいからテルクニには知る権利があるとアタシは思ってる。もちろん、聞きたいかどうかはテルクニ次第だけど……アタシの話、聞いてくれる?」

 ……やっぱり中楚のことはよくわからない。せっかく詳しいことは聞かないと決めたのに、それで話す決意が固まるなんて全く噛み合ってないじゃないか。そんなところまで普段の会話みたいにならなくてもいいのに。
 だけど……中楚は中楚なりに考えていて、その事を話してみたいと思ったのなら、本当は知りたいと思っていた俺にとって都合がいいのかもしれない。

「中楚が良ければ……聞かせてくれ」

 俺がそう言うと、中楚は頷いて喋り始める。

「……アタシは小さい頃から学校のクラスの空気が苦手だった。元々人が多いところが得意じゃないし、人見知りで話すのも苦手だったけれど、特に学校のクラスは独特の空気だと小学校に入った時点で思っていたの。苦手な理由を具体的に言うことはできないからアタシしか感じていなかったのかもしれないし、アタシの感性や考え方にも悪いところはあったと思う」

「でも、それがわかった上でも自分の感性や考え方はなかなか変えられなくて、絶対に行くべき学校という環境からは逃げられなくて、無理やり過ごしていくうちにどんどん周りからズレていっている気がしていたわ」

「そのズレは中学生までなら目に見える範囲では何とかなっていたけれど、高校生1年になって当時のクラスに割り振られた時に……爆発した。今考えてもやっぱりアタシにも悪いところがあったけど、それが文字通り悪目立ちして、アタシは入学早々に孤立したの」

「あ。今、普段の言動ならそうなっても仕方ないと思ったでしょ」
「……思ってない」
「嘘、絶対思ってる顔してた」
「してない」
「絶対ぜったい思ってた!!!」
「なんで急に食い下がるんだよ!? ちゃんとシリアスに話し続ければいいだろ!」
「だ、だって、こんなに脱線せず長く喋ることなんてあんまりないからちょっとくらいふざけた方がいいと思って……」
「……ああ、今わかった。確かにお前の言動で悪いところは多々ある」

 俺の指摘に中楚はしゅんとなってしまう。色々言いたいところだけど、ここで俺が喋りだしたら話が進まなさそうだからがんばって口を閉じた。

「……ただ、そんな中でもアタシは一つだけ楽しみがあったの。それは絵を描くことや何を描く考える時間だった。この高校でそれができるのは美術の授業か美術部しかない。アタシは美術の授業を取って、美術部にも入部した。美術部でも積極的に話すことはないけど、部員くらいの人数なら嫌な感覚や窮屈さを覚えることはなくて、最初のうちはみんなと混ざって活動できていた」

「それから2ヶ月ほどは頑張って教室に行ってみたけど、やっぱり馴染めることはなくて。むしろ入学直後よりも……気持ち悪さは増していった。そんな風に感じてる人って傍から見てもわかるみたいだから、クラスで一部のヤツには変に目を付けられて嫌な言葉もかけられたわ」

「そのせいでアタシは教室だけじゃなくて、何もされていないはずの美術室も居づらくなって、美術部も学校さえも辞めようと考えていたの。そんな時、アタシに声をかけたくれたのは……美術の授業担当で、美術の顧問でもあったエノサワ先生だった」

「エノサワ先生はアタシの気持ちが軽くなるまで美術準備室を貸してくれると言った。クラスに行かなくてもいい。部活の時間もここを使えばいいと。最初は悩んだわ。そんな特別措置を取って貰ってもアタシの根本的な部分は治らないと思ってたし、全部辞めてしまった方が楽になると思ってたから」

「でも……アタシはその言葉に甘えることにした。理由は二つある。一つは両親のためにも学校は辞めたくなかったから。この高校へ入学するのにも受験から色々お世話をして貰ったのに、2ヶ月も経たないうちに辞めるなんてさすがに申し訳ないから、形だけでも学校へ行ければいいと思った」

「そして、もう一つは……美術部のみんなが快く許可してくれたから。エノサワ先生も独断で準備室を貸すと言ったわけじゃない。部員のみんなもアタシの様子がおかしいことは察していた。その上で部活でも使うかもしれない部屋をアタシのために使っていいと言ってくれた。だから、まともに話すのはリョウカくらいだけど、今の部員にはとても感謝しているの」

「だけど……結局アタシの悪いところは治らなくて、エノサワ先生や部員の言葉に甘え過ぎて、何とか2年生に進級して今日までずっと準備室へ引きこもったままになっている。この2年1組の教室では嫌な思いをしたわけじゃないのに、どうしても馴染める気がしなくて。それが美術準備室にずっといる……アタシの現状」
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