裸夫が描きたい自称清楚系ヒロインはあらゆる手段で俺を脱がせようとしてくる

ちゃんきぃ

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裸夫が描きたい自称清楚系ヒロインはあらゆる手段で俺を脱がせようとしてくる

運命のS/話は聞いてない

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「わかっ…………は?」

 わけのわからないひと言だった。浮ついた心が数秒の間で更に塗り潰されるとは俺も思っていなかった。

「スタンドの正面辺りで。大股で3歩ほど離れた位置がいいかな。ああ、脱いだものはその辺に適当に……」
「ちょ、ちょっと待った! 俺の聞き間違いじゃなければ……脱いでと言った?」
「そう言ったけど?」

 美人ちゃんは何も間違っていないように言う。

「服を?」
「それ以外に脱ぐものある?」
「……ちなみにどこまで?」
「そ、そんなことアタシの口から言わせるだなんて……」

 美人の子は急に顔を赤らめて恥ずかしそうな素振りを見せる。だが、俺の心はすでにこの子の言動や態度を信用できなくなっていた。

「言って貰わないと困る。俺、何も聞かされずにここへ来たんだ」
「もう、しょうがないわね。全部よ。全裸。ヌード。すっぽんぽん」
「何でバリエーション豊かに言った!?」
「えっ、まさかフル〇ンの方が良かった?」

 その子から出ると思わなかった単語に俺は「ぶっ!?」と吹き出しながら驚く。

「そういう問題じゃないわ!? というか、何恥ずかし気もなくそんなことを……」
「アタシ、求められるとがんばっちゃうタイプだから……それはともかく、これで理解できたと思うから早く全部脱いで」

 謎の女は俺がその単語で焦っていることを全く気にせず催促してくる。

「いや、何も理解できてないが!? 名前も知らない女の子からわけもわからずいきなり裸になれって言われるなんて……」
「ドキドキする?」
「まぁ、ちょっとだけ……って違うわ! 仮にしてるとしても恐怖心によるドキドキだわ!」
「照れちゃって。でも、さすがに私も興奮して焦り過ぎちゃったみたいね。もう自己紹介を済ませたつもりでいたわ。」

 その興奮も別の意味に聞こえる……っていかんいかん。俺が冷静さを失ったらこの場がとんでもないことになる。

「アタシは中楚なかそ清莉奈せりな。テルクニと同じ2年生でご覧の通り美術部所属」

 中楚は髪をかき分けながら可憐な名乗りをあげる。それが数分前なら非常にポイントが高い仕草だったけど、今はそっちへ心が動かない。

「なぜ俺の名前を……?」
「アタシはある日思った……」
「さっきから全然こっちの話聞かないな!?」
「もう、それも込みで理由を話してあげるから。あっ、脱ぎながら聞いてくれてもいいけど?」

 それに対して俺が「何言ってんだこの女」という目で見たら中楚は「やれやれ」と言う感じで首を横に振る。

「アタシはある日思った……裸夫を描きたいと」
「ラフって……イラストの下書きとかの?」
「そんなわけないでしょ。すっぽんぽんの男のことよ。裸族の「裸」に、不倫夫の「夫」で裸夫」
「なんでその単語を例にしたんだ。でも、それで言うならイメージ的には婦警さんの「婦」で裸婦なのでは?」
「えっ、何で数ある単語の中で婦警なんて例に出したの? もしかしてそういう警察コスプレ系が好みなの? それはなかなか……」
「それはその、咄嗟に上手い単語が思い付かなかっただけで、決してそういう趣味があるわけでは……」
「だったらアタシも咄嗟に思い付いた単語が裸族と不倫夫で……」
「わかった。俺が悪かったよ。裸婦があるなら裸夫もあるって納得したから描きたくなった続きを話してくれ」

 話の喰い付き方が今まで会ってきた人のどのタイプにも当てはまらないから俺はどう会話していいかわからなくなっていた。正直、話だけ聞いたら早く帰りたい。
 だけど、そんな俺の気持ちに反するように、中楚は椅子に座って腰を落ちつけながら話し始める。

「それで裸夫を描きたいとなったらモデルが必要だと思ったアタシは候補を探し始めた。その中でふと目に留まったのが……三雲輝邦、あなただったの」
「待て待て。モデルが必要だからって何でどこからともなく俺が出てくるんだ。この世の中には他に何千何万と男がいるっていうのに」
「それはこの学校の生徒リストを見ていたからよ」
「学校から見つけようとしたのかよ!? それで俺が……いや、ますますわからん。」
「どうして? テルクニは選ばれし者だったのに……」
「こんなことでフォースの力に目覚めたくないわ。そうじゃなくて、百歩譲って学校のリストを見ていたのはいいとしてもその中で何故俺なんだ。裸夫に詳しいわけじゃないけど、モデルって言えばもっと肉体的に整った人とかの方がいいだろうから、帰宅部の俺よりも運動部とかモテてそうなイケメンのやつとかの方がいいだろうに」

 別に自分を卑下するわけじゃないけど、仮にもモデルと言われればそういう考えになる。身近な例で言えば秀吾辺りはそれに適していると思うが、俺はなんかこう……華があると言えない。
 しかし、その俺の言葉に対して中楚は笑みを見せながら言う。

「ふっ……その理由に対する回答は簡単なことよ。アタシがテルクニに一目惚れしたから」
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