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本編
2 .始まる入学式
しおりを挟む「」は普通にキャラが喋っている部分です。
【】は、宙に浮いてる文字を表してます。アッシュは耳が聞こえないので魔法で宙に書かれた文字を見ながら人と会話しています。
急いで玄関に行くとそこには、同じ制服を着ている兄のシリルの姿があった。
久々に見るその姿にまた涙が零れそになるのをアッシュはグッと堪えた。
(なんだろう·····俺泣き虫になったのかな?)
シリルはアッシュを見つけると笑顔をほころばせる。前の時間と変わらないその笑顔にアッシュはどこかで安心する。
··········だが、困ったこともある。
「アッシュ~!おはよう。目が覚めて良かったよ!」
アッシュの兄であるシリルは重度のブラコンだ。それはどうやらこの世界でも健在らしい。むしろ、悪化したのでは?と思うほどだ。
「おはようシリル兄さん。あと、文字書いてくれないとわかんないんだけど·····」
アッシュがそう言うとシリルは絶望した顔になる。
【あぁ、アッシュすまない。そうだったね。】
正直この兄を鬱陶しいと思っていたところがある。だが、あのような事を体験したあとだとこの時間がどれだけ幸せなのか気づくことが出来た。
だから、この兄の鬱陶しさも少しは微笑ましく思う。
「大丈夫だよ。ほら、シリル兄さん。今日は一緒に言ってくれるんでしょ?」
そう言ってアッシュがシリルに手を差し出すと、シリルは感極まったのか涙を流しながらアッシュの手を取る。
【うっ、俺の弟がかわいい·····離したくない】
シリルはアッシュの手をぶんぶん振り回す。
··········前言撤回。幸せでもうざいものはうざい。
何故、この歳になっても兄に手を取られぶんぶん振り回されなきゃいけない!!
アッシュはシリルの手をバッと話すとそそくさと玄関出て馬車に乗ろうとする。
「アッシュ~置いてかないでよ!!」
そう言うがその声はアッシュには届いていない。先に行くアッシュをシリルは追いかける。アッシュは後ろから兄が追いかけてくる気配を感じながらも足早に馬車に向かう。
馬車を走らせ15分。2人が着いたのはルベント魔法学園。シリルが在籍しておりアッシュがこれから通う学園だ。
「変わらないな·····」
アッシュはここを1度卒業している。だがそれは前の時間での話だ。
アッシュのそのつぶやきをシリルがひろう。
【変わらないって、アッシュは来たことあったっけ?】
その言葉にアッシュは焦った。来た事あるどころか通っていたなんて言えるわけが無い。
「ううん。でも、この学園の話はよく聞くしその話と変わらないな~ってこと!」
苦しい言い訳かと思ったがシリルはあまり気にならなかったらしい。むしろ、ここは有名だから色んな所で話を聞くよなとアッシュの話に共感していた。
「そう言えば、シリル兄さんが前に言ってた魔道具ってどうなったの?」
耳が聞こえないアッシュが学園に通うにあたりどうしても不便が出る場面がある。
そこでシリルは様々な職人と力を合わせ声を可視化させる魔道具を作り上げた。つまり、今まで魔力を可視化させ宙に文字を書いていたのを魔道具がかわりにやってくれるようになったのだ。
だが、それを使うにあたりどうしても学園側に許可を得なくてはいけなかった。微調整を幾度も重ねてるうちに使用許可が出たのがこの入学式の日だった。
【そうだった!今から俺は教員室に向かうが·····あぁ、アッシュも一緒に行こう!】
「大丈夫。俺、学園を散策したいし!」
入学式が始まるまではあと40分程度。少しくらい散策しても大丈夫だろう。
だが、兄のシリルはどうも首を縦に振らない。
【なんかあったら大変だろ?なっ?】
この兄は自分を何歳だと思い込んでいるのか。アッシュはどうにかシリルを説得し散策時間を得ることが出来た。
「やっぱり全然変わんないや」
アッシュは1番お気に入りだった学園の裏庭にいた。そこはあまり人も来ず1人になりたい時にはもってこいの場所だった。そして、そこを好きなのは別の理由もある。
(フレッドとはここで出会ったんだよね)
前の時間のフレッドは人嫌いでいつもここにいた。フレッドと出会ったあとそれを知りアッシュはよくここを訪れるようになった。
(もしかしたら·····って思ったけどやっぱり居ないか)
淡い期待を持ちここに来たがそう上手くは行かない。もうそろそろ講堂に行かなくては行けない。
(中等部からの入学生は少ないのによく入学式を開くよな·····)
そんな事を思いながらアッシュは講堂へ向かった。
だが、その瞬間後ろから肩を叩かれた。
突然のことにびっくりした。アッシュは誰だろうと思い後ろを振り向く。
肩を叩いた人の正体を見てアッシュは固まった。
(··········なんでここにいるの?)
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