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本編
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しおりを挟むそれから大きな事件もなくルーカスは成長し、7歳の誕生日を迎えた。
「ルーカス、誕生日おめでとう!」
「おめでとう」
テオドールとエルドは身支度をしているルーカスの部屋に押しかけるなり笑顔でそう言った。
「あっ、ありがとうございます。」
7歳の誕生日を迎えると教会で精霊との契約の儀式を行わなくてはいけない。そのせいか朝から公爵家は準備が忙しくバタバタとしている。
「お前は何の精霊と契約するんだろうな?」
「私と一緒の風の精霊だったらいいのにね。」
「俺なんかと契約してくれるなら属性は気にしません。」
あれから月日が流れてもルーカスは相変わらずだった。テオドールとエルドは仕方ないといった感じ笑った。
部屋で3人で話しているとコンコンとドアをノックする音が聞こえセバスが現れた。
「失礼します。·····おや、テオドール様とエルド様もこちらでしたか。ルーカス様、玄関でギルバード様がお待ちです。」
「わかりました!」
ルーカスはテオドールとエルドにペコッと頭を下げると部屋を後にした。
「なんさ、俺と兄さんが来た時より嬉しそうじゃね?」
「はは·····確かに。」
いくらギルバードが王族だとしても少し嫉妬してしまいそうになった2人は顔を見合わせてクスッと笑った。
「まぁ、それくらいルーカスにも大切な存在が出来たことはいい事じゃない?」
「まぁね。」
少しずつ成長していくルーカスを嬉しく思う反面2人にはまだ罪悪感が残っていた。今まで家族として最低な形でいたことに対しどのように罪滅ぼしをしていけばいいのかまだ明確にはなっていない。
だからこそ、今この時間をルーカスが幸せでいられるように支えていこうと2人は決意していた。
「さて、私達も追いかけようか。」
「儀式暇なんだよな·····」
「お祈りの時間に寝ないでね?」
「ドリョクシマス。」
「ルー!」
階段を駆け下りてくるルーカスにギルバードは手を振る。すると、ルーカスも嬉しそうに笑い手を振り返した。
「ギル、お待たせしました。」
「気にしないで?それよりも、ルー!お誕生日おめでとう!!」
そう言うと、ギルバードは後ろに隠していた花束をルーカスに手渡した。
「うわぁっ!·····貰ってしまって·····いいんですか?」
「もちろん!貰ってくれないと困るんだけど?他にも渡したいものはあるけどそれはまた後で!」
初めてもらう大きな花束にルーカスは目を輝かせた。受け取った花束を抱きしめると花の甘い香りが漂ってきた。
(いい匂いだな·····)
あまりの嬉しさにルーカスは笑みがこぼれた。その笑顔を見たギルバードも思わずつられて笑みをこぼした。
「そんなに喜んでくれるとは思わなかったよ。」
「えっ、と·····」
浮かれているのがバレたようでルーカスは恥ずかしくなり顔を赤くしながらそっぽを向いてしまった。
そんなルーカスを見ながらギルバードはまた笑った。そして、改めてこの1年でルーカスが様々な顔を見せてくれるようになったなと感じた。
「さて、時間も時間だし行こっか?」
「あれ、ギルも来てくれるんですか?」
「うん。でも、流石に堂々とは行けないから少し変装するけどね。」
「変装·····ですか?」
「カツラとメガネ!これさえあれば大丈夫でしょ?」
何を基準として大丈夫と言っているのかわからないが楽しそうにしているギルバードを見ていればそんな考えもどうでも良くなってしまう。
「少し緊張していたんですけどギルも来てくれるなら安心ですね。」
「でしょ?」
そう言ってギルバードは馬車に乗り込むとルーカスに向かって手を差し出した。
「あの·····1人でも乗れるんですけど?」
「いいのいいの!ほら!」
「··········失礼します。」
ルーカスはギルバードの手を取り馬車に乗った。御者が馬車のドアを閉めるとまもなく馬車が発車した。
「そう言えば公爵は??あと、テオドール達も?」
「あ、お父様は先に向かってます。兄様達は後ろの馬車に載ってるはずです。」
「そっか。あ~楽しみだね!ルーはどの精霊と契約するのかな??」
「俺なんかと契約してくれるのであればどんな精霊だって嬉しいですよ?」
1歩引いた感じのルーカスにギルバードは心の中でため息をついた。俺なんか·····と自分を卑下する所は未だに治っていなかった。しかし、それはすぐにどうにかなる問題ではなかった。
「ルー!また、俺なんかって言ってるよ?なんかって使っちゃダメって言ってるでしょ?」
「あっ·····ごめんなさい。」
ルーカスはやってしまった思い謝る。何故なら、自分を卑下するような事はなるべく言わないようにし自分に自信をつけていこうとギルバードと約束したからである。
「まって!謝らなくていいからね??別に悪いことをしてる訳でもないし。」
そう言って笑顔で居てくれるギルバードにルーカスはありがたいと思った。最初は、自分なんかが王族であるギルバードと仲良くしてもいいのかと思い悩んだ事がいくつもあった。
それでも、彼は持ち前の明るさで自身の不安や悩みを吹きどばしてくれた。だからこそ、ルーカス自身の性格も少しずつだが明るくなり、今はギルバードに釣り合えるように努力しようと思えるようになっていた。
「·····ありがとうございます。」
その一言には様々なことに対しての感謝が含まれていた。きっと全部は伝わらないだろうが少しでも伝わればいいなとルーカスは思った。
「こっちこそ、ありがとうだよ?」
そう言って微笑むギルバードは、まるで全てをわかってくれているような感じだった。全てを語らなくても自然と理解してくれる相手がいる子の空間はルーカスにとってとても幸せな空間だった。
(これからも、こんな時間が続けばいいな·····)
そう考えながらルーカスは馬車の外に視線をずらし、これから向かう教会がある方を見つめたのであった。
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