63 / 64
本編
57
しおりを挟む
更新が大幅に遅れてしまい申し訳ありません。まだ、結果は出ておりませんが無事に試験を終えることが出来ましたので、本日から再開させて頂きます。今日は夜にもう1話更新予定です。
「ダメだ。」
テオドールは父であるメルヴィルに少年のことを説明し、その上でルーカスがどうしたいのかも伝えた。
しかし、その返答はわかりきっているものだった。
「それは、公爵家に泥を塗ることになるからですか?」
「それは違う。その少年を救ったとしても公爵家に大きな影響はない。」
「では·····」
「その少年を助けたとして本当にその少年のためになるのか?」
メルヴィルのその言葉にテオドールはすぐに答えられなかった。確かに、ここで少年を助けたとしても少年には「罪を犯した」という意識があるのだ。
例え罪を直接犯していなくても彼の中では自身も犯罪者なのである。ここで全てを何も無かったことにするよりも、然るべき場所で自身の潔白を証明した方が少年のためになる。
テオドールはメルヴィルの言いたいことを理解し1つため息をついた。
「承知しました。ルーカスには私から伝えておきます。」
「あぁ·····頼んだ。嫌な役回りをさせるようですまない。」
「別に気にしてませんよ。」
そう言うとテオドールは礼をし部屋から出ていった。テオドールが出ていったのを確認するとメルヴィルは、身体の力を抜き椅子に全身を預けた。
ルーカスのことを思えば、少年をこのまま見なかったことにしよう街に返すかこの屋敷で雇っても良かった。
しかし、それをしなかったのはこの国を担う者として民に正当であるべきだと考えたからだ。
少しの罪悪感を感じたメルヴィルは少し考えたあとペンを手に持ち手紙を書き始めた。そして書き上げた手紙を封筒に入れ封をした。
「セバスこれをハロルド様に」
「かしこまりました。」
この手紙が今後どんな影響を与えるかはわからないが少しでもルーカスや少年にいい影響を与えてくれるようにメルヴィルは祈ったのであった。
翌日、少年は騎士と一緒に公爵家を去った。テオドールはルーカスに対し事前に説明した。最初は納得していなかったルーカスだった。
「少年のためを思うなら少年の立場になって考えてみな?」
少し不満そうにしていたルーカスにテオドールはそう伝えた。すると、ルーカスは少し考え込んだ後に大人しく頷いた。
少年を救おうとするルーカスの気持ちも大切で尊重したいが、それでも優先すべきは少年の今後であった。それらを理解した後のルーカスは少し落ち込んでいた。
その理由を聞いてみると、自分勝手な考えで少年やテオドールに迷惑をかけたと思うと申し訳なくなるとルーカスは答えた。
どこか大人びたルーカスの返答にテオドールは驚いた。
「そっか。ルーカスはいい事を学べたんだね。」
そう言うとテオドールはルーカスの頭を撫でた。すると、ルーカスの目にうっすらと涙が溜まり始め次第には大きな粒となって落ちていった。
やるせない気持ちでいっぱいだった自分に対しテオドールのかけてくれた言葉はルーカスにとって救いであり、もっと人を救えるくらい強くなろうと決心させてくれた。
ルーカスは、涙で視界はぼやけていたが少年が見えなくなるまで彼の背中を見つめていた。
「ダメだ。」
テオドールは父であるメルヴィルに少年のことを説明し、その上でルーカスがどうしたいのかも伝えた。
しかし、その返答はわかりきっているものだった。
「それは、公爵家に泥を塗ることになるからですか?」
「それは違う。その少年を救ったとしても公爵家に大きな影響はない。」
「では·····」
「その少年を助けたとして本当にその少年のためになるのか?」
メルヴィルのその言葉にテオドールはすぐに答えられなかった。確かに、ここで少年を助けたとしても少年には「罪を犯した」という意識があるのだ。
例え罪を直接犯していなくても彼の中では自身も犯罪者なのである。ここで全てを何も無かったことにするよりも、然るべき場所で自身の潔白を証明した方が少年のためになる。
テオドールはメルヴィルの言いたいことを理解し1つため息をついた。
「承知しました。ルーカスには私から伝えておきます。」
「あぁ·····頼んだ。嫌な役回りをさせるようですまない。」
「別に気にしてませんよ。」
そう言うとテオドールは礼をし部屋から出ていった。テオドールが出ていったのを確認するとメルヴィルは、身体の力を抜き椅子に全身を預けた。
ルーカスのことを思えば、少年をこのまま見なかったことにしよう街に返すかこの屋敷で雇っても良かった。
しかし、それをしなかったのはこの国を担う者として民に正当であるべきだと考えたからだ。
少しの罪悪感を感じたメルヴィルは少し考えたあとペンを手に持ち手紙を書き始めた。そして書き上げた手紙を封筒に入れ封をした。
「セバスこれをハロルド様に」
「かしこまりました。」
この手紙が今後どんな影響を与えるかはわからないが少しでもルーカスや少年にいい影響を与えてくれるようにメルヴィルは祈ったのであった。
翌日、少年は騎士と一緒に公爵家を去った。テオドールはルーカスに対し事前に説明した。最初は納得していなかったルーカスだった。
「少年のためを思うなら少年の立場になって考えてみな?」
少し不満そうにしていたルーカスにテオドールはそう伝えた。すると、ルーカスは少し考え込んだ後に大人しく頷いた。
少年を救おうとするルーカスの気持ちも大切で尊重したいが、それでも優先すべきは少年の今後であった。それらを理解した後のルーカスは少し落ち込んでいた。
その理由を聞いてみると、自分勝手な考えで少年やテオドールに迷惑をかけたと思うと申し訳なくなるとルーカスは答えた。
どこか大人びたルーカスの返答にテオドールは驚いた。
「そっか。ルーカスはいい事を学べたんだね。」
そう言うとテオドールはルーカスの頭を撫でた。すると、ルーカスの目にうっすらと涙が溜まり始め次第には大きな粒となって落ちていった。
やるせない気持ちでいっぱいだった自分に対しテオドールのかけてくれた言葉はルーカスにとって救いであり、もっと人を救えるくらい強くなろうと決心させてくれた。
ルーカスは、涙で視界はぼやけていたが少年が見えなくなるまで彼の背中を見つめていた。
52
お気に入りに追加
5,968
あなたにおすすめの小説

傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。

俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。


主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

嫌われものの僕について…
相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。
だか、ある日事態は急変する
主人公が暗いです

兄たちが弟を可愛がりすぎです
クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!?
メイド、王子って、俺も王子!?
おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?!
涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。
1日の話しが長い物語です。
誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる