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本編
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更新が大幅に遅れてしまい申し訳ありません。まだ、結果は出ておりませんが無事に試験を終えることが出来ましたので、本日から再開させて頂きます。今日は夜にもう1話更新予定です。
「ダメだ。」
テオドールは父であるメルヴィルに少年のことを説明し、その上でルーカスがどうしたいのかも伝えた。
しかし、その返答はわかりきっているものだった。
「それは、公爵家に泥を塗ることになるからですか?」
「それは違う。その少年を救ったとしても公爵家に大きな影響はない。」
「では·····」
「その少年を助けたとして本当にその少年のためになるのか?」
メルヴィルのその言葉にテオドールはすぐに答えられなかった。確かに、ここで少年を助けたとしても少年には「罪を犯した」という意識があるのだ。
例え罪を直接犯していなくても彼の中では自身も犯罪者なのである。ここで全てを何も無かったことにするよりも、然るべき場所で自身の潔白を証明した方が少年のためになる。
テオドールはメルヴィルの言いたいことを理解し1つため息をついた。
「承知しました。ルーカスには私から伝えておきます。」
「あぁ·····頼んだ。嫌な役回りをさせるようですまない。」
「別に気にしてませんよ。」
そう言うとテオドールは礼をし部屋から出ていった。テオドールが出ていったのを確認するとメルヴィルは、身体の力を抜き椅子に全身を預けた。
ルーカスのことを思えば、少年をこのまま見なかったことにしよう街に返すかこの屋敷で雇っても良かった。
しかし、それをしなかったのはこの国を担う者として民に正当であるべきだと考えたからだ。
少しの罪悪感を感じたメルヴィルは少し考えたあとペンを手に持ち手紙を書き始めた。そして書き上げた手紙を封筒に入れ封をした。
「セバスこれをハロルド様に」
「かしこまりました。」
この手紙が今後どんな影響を与えるかはわからないが少しでもルーカスや少年にいい影響を与えてくれるようにメルヴィルは祈ったのであった。
翌日、少年は騎士と一緒に公爵家を去った。テオドールはルーカスに対し事前に説明した。最初は納得していなかったルーカスだった。
「少年のためを思うなら少年の立場になって考えてみな?」
少し不満そうにしていたルーカスにテオドールはそう伝えた。すると、ルーカスは少し考え込んだ後に大人しく頷いた。
少年を救おうとするルーカスの気持ちも大切で尊重したいが、それでも優先すべきは少年の今後であった。それらを理解した後のルーカスは少し落ち込んでいた。
その理由を聞いてみると、自分勝手な考えで少年やテオドールに迷惑をかけたと思うと申し訳なくなるとルーカスは答えた。
どこか大人びたルーカスの返答にテオドールは驚いた。
「そっか。ルーカスはいい事を学べたんだね。」
そう言うとテオドールはルーカスの頭を撫でた。すると、ルーカスの目にうっすらと涙が溜まり始め次第には大きな粒となって落ちていった。
やるせない気持ちでいっぱいだった自分に対しテオドールのかけてくれた言葉はルーカスにとって救いであり、もっと人を救えるくらい強くなろうと決心させてくれた。
ルーカスは、涙で視界はぼやけていたが少年が見えなくなるまで彼の背中を見つめていた。
「ダメだ。」
テオドールは父であるメルヴィルに少年のことを説明し、その上でルーカスがどうしたいのかも伝えた。
しかし、その返答はわかりきっているものだった。
「それは、公爵家に泥を塗ることになるからですか?」
「それは違う。その少年を救ったとしても公爵家に大きな影響はない。」
「では·····」
「その少年を助けたとして本当にその少年のためになるのか?」
メルヴィルのその言葉にテオドールはすぐに答えられなかった。確かに、ここで少年を助けたとしても少年には「罪を犯した」という意識があるのだ。
例え罪を直接犯していなくても彼の中では自身も犯罪者なのである。ここで全てを何も無かったことにするよりも、然るべき場所で自身の潔白を証明した方が少年のためになる。
テオドールはメルヴィルの言いたいことを理解し1つため息をついた。
「承知しました。ルーカスには私から伝えておきます。」
「あぁ·····頼んだ。嫌な役回りをさせるようですまない。」
「別に気にしてませんよ。」
そう言うとテオドールは礼をし部屋から出ていった。テオドールが出ていったのを確認するとメルヴィルは、身体の力を抜き椅子に全身を預けた。
ルーカスのことを思えば、少年をこのまま見なかったことにしよう街に返すかこの屋敷で雇っても良かった。
しかし、それをしなかったのはこの国を担う者として民に正当であるべきだと考えたからだ。
少しの罪悪感を感じたメルヴィルは少し考えたあとペンを手に持ち手紙を書き始めた。そして書き上げた手紙を封筒に入れ封をした。
「セバスこれをハロルド様に」
「かしこまりました。」
この手紙が今後どんな影響を与えるかはわからないが少しでもルーカスや少年にいい影響を与えてくれるようにメルヴィルは祈ったのであった。
翌日、少年は騎士と一緒に公爵家を去った。テオドールはルーカスに対し事前に説明した。最初は納得していなかったルーカスだった。
「少年のためを思うなら少年の立場になって考えてみな?」
少し不満そうにしていたルーカスにテオドールはそう伝えた。すると、ルーカスは少し考え込んだ後に大人しく頷いた。
少年を救おうとするルーカスの気持ちも大切で尊重したいが、それでも優先すべきは少年の今後であった。それらを理解した後のルーカスは少し落ち込んでいた。
その理由を聞いてみると、自分勝手な考えで少年やテオドールに迷惑をかけたと思うと申し訳なくなるとルーカスは答えた。
どこか大人びたルーカスの返答にテオドールは驚いた。
「そっか。ルーカスはいい事を学べたんだね。」
そう言うとテオドールはルーカスの頭を撫でた。すると、ルーカスの目にうっすらと涙が溜まり始め次第には大きな粒となって落ちていった。
やるせない気持ちでいっぱいだった自分に対しテオドールのかけてくれた言葉はルーカスにとって救いであり、もっと人を救えるくらい強くなろうと決心させてくれた。
ルーカスは、涙で視界はぼやけていたが少年が見えなくなるまで彼の背中を見つめていた。
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