嫌われ愛し子が本当に愛されるまで

米猫

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本編

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「はい!ルー染みるよ??」


そう言ってギルバードはルーカスの傷の手当を行う。

流石に王族に手当してもらうのはどうかと思い最初は断ったが「俺のこと嫌い?」と首をかしげ目を潤ませながら訴えられたら断ることが出来なかった。


「·····ギル、ごめんなさい。」

「もう!さっきから謝りすぎ。そんなこと言ったら·····元はと言えばこの騒動の元凶は·····」


傷の手当をしてもらうのが申し訳なくルーカスが謝罪するとギルバードも落ち込んだ表情を見せる。


「あぁ、もう!さっきから2人とも何回同じことすれば気が済むんすか!?」


この空気に耐えきれなくなったのかギルバードの後ろに控えていたダレンが口を開く。そして、ギルバードとルーカスが座っているソファーの前にしゃがみ込んだ。


「この件はおあいこです!それでいいでしょ?あと殿下·····包帯を巻くの下手くそすぎです。」


その言葉を聞いてギルバードは顔をヒクヒクさせながら笑った。


「ダーレーン?俺に生意気なことを言うのはこの口かな??」

「ちょっと殿下·····うわっ!?」


ギルバードはソファーの隅に置いてあったクッションを手に取りダレンの顔へと思い切り押し付けた。


「ダレンのそういう所は嫌いじゃないけど口の利き方をもう少し勉強したら?」

「ちょっと、俺のかっこいい顔になんてこと·····って·····殿下!?」


ギルバードは再びクッションを強く押し付ける。相変わらずな2人のやり取りにルーカスは、日常に戻ってこれたんだと安心した。

そしていつまで経っても終わらなさそうな2人の言い争いを聞きながらルーカスは自分で包帯を巻き始めた。


「ちょっとルー!俺がやる!」

「·····自分でも出来ますよ?」

「それでも·····」


ルーカスはギルバードに包帯を手渡した。受け取ったギルバードは綺麗に巻くために集中し始めた。

たかが包帯を巻くためにここまで真剣になれるのかと思いルーカスは心の中で少し笑った。そして、巻終わったあとの少し不格好なそれを見てまた笑ってしまったのであった。







「それじゃあ、俺は帰るね。」

「はい。また遊びに来てください!」

「·····っ、うん!明日にでも来よっかな?」

「いつでもお待ちしております。」


ギルバードは馬車の窓から遠ざかっていくルーカスをずっと眺めていた。


「いつまで見てるんすか?」

「·····うるさいなぁ」


窓の外を見続けるギルバードにダレンはそう言う。

しかし、時おりグズっと聞こえてくるその音を聞いて苦笑した。そしてギルバードの頭をわしゃわしゃと豪快に撫でた。


「ダレン!何すんだよ!」

「シケたツラしたら俺がコソッと告げ口しちゃいますよ?」

「·····お前·····ほんといい性格してるよね」


そう言いながらもギルバードの顔は笑っていた。

護衛なのにここまで気軽に話しかけてくるのはダレンくらいである。ブランドも親しい関係だが彼は仕事人間である。仕事人間のせいかなかなか融通が利かない。

その反面、ダレンはまるで兄のように接してくる。まぁ、そのせいでブランドに怒られることもあるのだが·····

そんなダレンだからこそギルバードが落ち込んだ時に元気づけることが出来る。


「·····まぁ、ありがとう。」

「なんのことすかね?」

「さぁね?」


2人はそう言って笑い合う。


「まぁ、殿下が仮にルーカス様に捨てられた時にはまた慰めてあげますよ!」

「·····ダレン?ここから落とそうか?」


そう言ってギルバードはドアを指さす。

ダレンは基本的に良い人間だが一言余計なことを言う人間だ。彼は全く悪気なく言うのだからタチが悪い。


「いや、あの?馬車走ってますけど?」
  
「てか、君護衛だよね?何呑気に一緒に馬車に乗ってるの?」

「いやぁ、別に他にも護衛してる人いるじゃないっすか??少しくらい·····ねぇ?」

「帰ったらブラントに報告ね。」
  
「そりゃひどくないっすか!?」


そんな2人の言い争いは城に着くまで行われたのであった。
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